原子力長計策定会議 意見と提案(第2回)

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長計策定会議第2回会議への意見と提案

2004年7月8日
原子力資料情報室
共同代表 伴英幸

1)暴露された直接処分コスト試算

 「私どものところ、日本におきましては再処理をしない場合のコストというのを試算したことがございません」(日下一正政府参考人答弁、2004年3月17日参議院予算委員会)との国会証言で否定されていた「再処理をしない場合のコスト」が実は94年に試算されていたことが暴露されました(7月3日各紙報道)。10年にわたって私たち市民はだまされ続けてきました。原子力政策への「国民の信頼」はいっそう失われたと言わざるを得ません。
 その内容の一部は7月6日の原子力委員会へ報告されました。また、国会での答弁当時の3名に対して訓告あるいは口頭による厳重注意処分が行われました。中川経済産業省大臣は閣議後の記者会見で「これをもってこの件が決着したとは思っておりません。したがって、引き続き内部で調査をつるつもりであります」と述べています。その調査内容は当然公開されると受け止めていますが、その際、政府からは独立した調査委員会を設立し、その委員会によって、誰がかかわり、どのような理由で公開されずに、また、どのような経緯で引き継がれていかなかったかなどについて厳重に調査して公表することが必要だとかんがえます。同時に本策定会議の場にも報告していただくことを求めます。国会での虚偽答弁は、それだけの重さをもつものです。
 次に、98年に原子力環境整備センターが行った試算(『将来の使用済燃料対策の検討報告書』)や94年長計策定時に第二分科会に提出された「OECD/NEAの評価を基礎にして」行われた「軽水炉によるプルトニウム利用のコスト比較のモデル計算」が明らかになりました。また、前回の本策定会議で藤委員が「電事連は直接処分のコストを試算したことすらありません」と述べられましたが、電気事業連合会でも96年に「核燃料サイクルコストのケーススタディ」が行われていたことが明らかになりました。
 「ロッカー」にはまだまだ情報があるのではないかと深い疑問にとらわれます。明らかになった上記以外にも直接処分を含む核燃料サイクルコストの試算その他、本長計改定の議論にかかわる諸論点について未公開の文書ないし情報があれば、すべて公表することを求めます。
 なお、経済産業省から原子力委員会(第26回定例会議)へ報告された内容は結論だけであり、誰によって、どのような審議が行われたのか、などが不明です。そこで、本策定委員および国民の知る権利として、結論を導き出す試算の過程に関する資料および1994年2月4日に行われた第4回総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題ワーキンググループの議事録の公開を求めます。議事概要については、私どもが入手したものを参考3に付します。私どもが入手していることと公開されていることは別であり、この議事概要についても公開を求めます。

2)再処理政策をめぐる議論の進め方

 上記WG会議では、「『核燃料サイクルの経済性について積極的に公開し、』とあるが、全体としてならともかく、個々のサイクル施設の試算まで公開することはいかがなものか」(太田宏次中部電力(株)取締役副社長(当時))「電力は、公益事業であり、核燃料サイクルコストについても試算を公開するべきだという意見には同感しているが、例えば再処理コストの場合、今まで発表されている発電所コストのように全発電所の平均値を公表するのと違い下北の工場のコストということになってしまう。もし、本当に発表され、それが非常に割高である場合サイクル事業が成り立たなくなるような数字が出てくる可能性がある。」(同)といった発言が見られます。このような発言から、自分たちにとって都合の悪い情報を意図的に隠蔽してきたことは明らかです。その上で、「電気料金が若干高くなろうと長期的判断から経営資金を割いても再処理事業に投入していく必要がある」(南直哉東京電力(株)常務取締役(当時))として再処理へ進んでいったと考えられます。
 電力自由化が進む中で、未回収コストの回収制度つくりが議論されました(総合エネルギー調査会電気事業分科会中間報告『バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について』)が、上記南常務(のち社長)の発言からすれば、その議論はいったん白紙に戻し、本策定会議における新長期計画の確定後に、改めて議論をやり直すべきだと考えます。
 また、六ヶ所再処理工場についても新長期計画が確定するまで工事を凍結することを求めます(日本原燃(株)があくまで試験を強行するのであれば、それは再処理工場の操業とその後始末を同社の責任と経営資金で行なうことになります)。原子力委員長が、凍結すべきとの判断を示してください。
 再処理と直接処分のコストの比較検討は、情報を隠蔽してきた事業者などにはとうてい任せられません。公募を含めたバランスのよい人選で、必ず公開で行なうべきだと考えます。その際、長計のご意見を聞く会で再処理への批判的な発言をされた方々や日弁連からの参加が望まれます。
 なお、再処理政策を重要事項として優先的に議論するといった声も聞かれますが、その理由として「バックエンド事業に対する制度・措置」の予算措置に間に合うようにとか、六ヶ所再処理工場の試運転に向けた県知事の同意を得るためのとかと取りざたされています。そのような思惑から長計の議論を進めることはきわめて不透明であり、辻褄あわせのそしりを免れません。コストの比較検討は、そのようなものでないことを明らかにするためにも、新長期計画が確定するまで、制度・措置の在り方を白紙に戻すことと、六ヶ所再処理工場の工事を凍結することを強く求めます。議論の進め方を歪めることのないように、真摯な意見発表、誠実な討論、審議をお願いいたします。

3)人選問題

 第1回の会議に提案させていただいた人選・事務局問題は、新たな長計が「国民」に信頼されるものとなるために、是非とも必要なことだと思います。このまま無視して進めないでください。現行のメンバーは原子力委員会で決定されたこともあり、困難なことだと思いますが、不可能ではないようにも思います。

4)2000年長計を官民の責任と役割分担という切り口で整理して説明してください。

 2000年長計は官民の責任と役割分担に従って書き分けられているといわれています。第1回の会合では2000年長計の内容の配慮事項の説明がありましたが、官民の責任と役割分担の切り口からすれば、必ずしも明瞭ではありません。そこで、この官民の責任と役割分担の切り口から、2000年長計を整理して資料を作成、説明してください。

5)エネルギー供給における原子力発電の位置づけ

 使用済み燃料の中間貯蔵施設や高レベル放射性廃棄物の処分場などの計画が各地で拒否されています(参考1)。この状況から、市民の願いは原発からの撤退であることを理解するべきです。その上で、その願いを政策として示すことが必要だと考えます。
 『市民のエネルギーシナリオ2050』は当原子力資料情報室でまとめたものです。このシナリオは、諸々の省エネ策の導入をベースとして、再生可能エネルギーを積極的に導入することを通して、原発からの撤退は可能であることを示したものです。また、これは同時に、二酸化炭素の削減にも大きく寄与します。脱原発へ向けた政策つくりの参考となるものと考えます(参考2)。
 第3回の長計策定会議では、市民エネルギー調査会が作成した「持続可能なエネルギー社会を目指してーエネルギー・環境・経済問題への未来シナリオー」について作成責任者を招いて説明を受ける機会を設けて下さい。
 資源エネルギー庁が1998年4月に行った原発ゼロの試算は、当時の原発の発電電力量を単純に化石燃料に置き換えただけのものです。残念ながら、試算と言い得るものではありません。
 原子力発電は二酸化炭素排出削減が強調されていますが、その実効性に疑問が残る上、放射性廃棄物による環境負荷こそが重視されるべきです。「環境負荷を最小限に抑える」ために、原子力を基幹電源という位置づけから外し、脱原発へと舵をとることを提案します。
 原子力発電所からは日常的にかつ計画的に放射能が放出されています。トリチウムは回収できずに全量が放出されています。また、再処理工場からは「原発1年分の放出放射能を1日で放出する」と言われるほどの多量な放射性物質が計画的に放出されます。六ヶ所再処理工場では放射性物質であるクリプトン85が当初計画から後退して全量放出されることになりました。また、ヨウ素129は人体への影響が懸念される放射性物質の一つですが、その半減期の長さから、環境中に蓄積されてきます。使用済み燃料あるいは高レベル放射性廃棄物などに含まれる放射性物質はいずれ環境へ出てきます。

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(参考1)

放射性廃棄物の持込みを拒否する条例を島根県隠岐郡西ノ島町議会が全会一致で可決(2004年7月1日)

放射性廃棄物等の持込み及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、放射能による被害から町民の生命と生活を守り、大山隠岐国立公園区域内にある西ノ島町の豊かな生態系を放射能による汚染から予防することによって、現在及び将来の町民の健康と文化的な暮らしを保障し、自然と調和した地域の発展に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「原子力関連施設」とは、原子力発電所並びに核燃料(使用済み核燃料を含む。)の加工施設、中間貯蔵施設、再処理施設及び濃縮施設並びに放射性廃棄物の最終処分場などの施設をいう。
2 この条例において「放射性物質」とは、原子力関連施設から発生する使用済み燃料又はさまざまなレベルの放射性廃棄物などの放射性物質をいう。
(基本施策)
第3条 西ノ島町は、放射性物質等の町内への持込みを拒否する。
2 西ノ島町は、原子力関連施設の町内への立地及び建設に反対する。
3 この条例は、医療用放射性物質の利用を妨げるものではない。
(権限)
第4条 西ノ島町は、第3条に定める事項に関する計画等があると疑われる場合には、関係機関及び関係施設に対して関連情報の提供を求めることができる。
2 西ノ島町は、放射性物質等の町内持込みについて疑いが生じた場合、疑いのある原子力関連施設に対して報告を求め、必要な限度において関係場所へ職員を立ち入らせて状況を調査させることができる。
3 前項の調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、これを提示しなければならない。
4 第2項の規定による立入調査の権限は、犯罪調査のために認められたものと解釈してはならない。
5 西ノ島町は、この条例に違反した原子力関連施設の責任者に対し、施設の供用及び操業の即時停止を求めることができる。
附則
この条例は、公布の日から施行する。

高知県佐賀町の高レベル放射性廃棄物の処理場誘致の動きに反対する周辺町村の議会決議

1)佐賀町の放射性廃棄物施設誘致に反対決議 窪川町 
窪川町議会(30日) 収入役事務兼掌条例の制定など16議案を可決。専決処分4件を承認。「高レベル放射性廃棄物の処理場建設に反対する決議」など3決議を全会一致で可決。「義務教育費国庫負担制度の堅持に関する意見書」など5意見書を可決し、閉会した。
決議は、幡多郡佐賀町の町民有志が高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を求める請願を同町議会に提出したことを受け、「かつて原子力発電所問題で町を2分する対立を経験した窪川町としては受け入れ難く、断固反対する」としている。同様の決議は大方町、中村市、土佐清水市の各6月定例会でも全会一致で可決されている。
また、大手企業が志和地区に産業廃棄物処分場の建設を計画しているとして、同施設建設に反対する決議、県窪川土木事務所統廃合に反対する決議も全会一致で可決した。 
(高知新聞2004年07月01日付)
2)高知県土佐清水市議会 2004年6月26日 全会一致で決議
3)高知県中村市議会 2004年6月23日 全会一致で決議
4)高知県大方町議会 2004年6月17日 全会一致で決議

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(参考2)

2004年7月8日

『市民のエネルギーシナリオ2050』概要

原子力資料情報室

概要
 エネルギーモデルを作成し、2010年のエネルギー需給構造を求めた。既得権益にとらわれない市民が積極的に関与する効果は大きく、省エネルギー行動やエネルギー効率化技術の導入によって、最終エネルギー消費量は2010年度で2%減少、一次エネルギー国内供給量は12%減少という結果が得られた(1998年比)。この結果は、無駄なエネルギー消費を減らして脱原発へ移行出来る可能性は十分にあり得ることを示す。さらに2050年のエネルギーシナリオを求め、持続可能な将来のエネルギー需給構造の在り方を提案した。

1. 序論
 エネルギー需給構造の長期的な見通しは、本来、エネルギーを消費している市民や消費者が関心を持って、積極的に関与していかねばならない問題である。しかし現状では、既得権益に絡む団体や業界が、将来の利益を確保するためにその作業の場を利用していると思われる。その場合、彼らの要望するエネルギー量と消費者にとって本来必要なエネルギー量との違いが混同し、その結果不必要にエネルギー供給量が増大する可能性がある。
 ここでは、ボトムアップ型に基づくエネルギーモデルを用いて、消費者、市民の視点からエネルギー需給構造を求める。従来の政府の想定(注)と違い、シナリオでは市民のエネルギー問題に関する取り組みを積極的に反映させている。また、原子力発電所がないと停電になる、温暖化問題に影響を与える、省エネによって不便な生活になる、と世間で言われる意見について、詳細に検討を行なった。
 ここでの試算は大きく二種類ある。一つは脱原発を考慮した2010年度におけるエネルギー需給構造であり、もう一つは思考実験として行なった2050年度の自然エネルギー積極的導入シナリオである。

(注) 本研究は2002年に行なわれた。ここで参照する「政府の想定」とは、2001年度の総合部会/需給部会報告書(経済産業省)、温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会報告書(環境省)を示す。

2. 試算条件
 試算の手順は次の通りである。(1):基礎指標量(国民総生産や人口、家電機器の保有台数や業務部門での床面積、産業構造等)を設定する。(2):エネルギーの効率化技術の導入や省エネルギー行動を設定する。(3):(1)から得られる最終エネルギー需要量を導出し、(2)によって削減出来る効果を求める。(4):(3)を満たす発電電力量を求める。(5):最終的に必要となる一次エネルギー国内供給量を導出する。
 なお、2010年における効率化技術や省エネ行動を考慮した場合を2010効率化ケース、また、これらを考慮しない場合を2010現状推移ケースとした。
 表Iに、想定した基礎指標量を示す。前提となるこれらの値は、基本的に政府の想定に従っている。表IIに示すエネルギー効率化技術も、政府が温暖化対策技術として導入を検討・促進しているものである。但し、市民による省エネルギー行動は独自に積極的導入を想定した。

3. 試算結果
3.1 最終エネルギー消費量
 最終エネルギー消費量の試算結果(部門別)を図1に示す。1990年度と1998年度は実績であり、2010年度が試算結果である。1998年比でみると、2010現状推移ケースでは12%増加であるが、表IIの省エネ行動やエネルギー効率化技術を導入した場合、2%減少するという結果が得られた。ここで重要なことは、この二つの前提条件が表Iで示したように同じ、つまりテレビや乗用車の普及台数などに違いはない、ということである。よって一般に聞かれる「省エネをすることは国民に我慢を強いる」という表現は必ずしも適切ではない。特に、この条件では、1998年の実績値よりも少ないエネルギー消費量で2010年度がまかなえるという結果になっている。
3.2 発電電力量
 図2に発電電力量の結果を示す。2010現状推移ケースは、その構成比を政府想定に合わせた結果、2010効率化ケースは図1の結果によって削減可能となった電力量を、特に原子力発電電力量の削減に割り当てた結果である。この場合の削減電力量は原子力発電所の40基以上の発電量に相当する。
 通常、各発電量の構成比は、コストや設備の特性によって電力会社によって決定されるが、市民や消費者が積極的に関与する一つの例として、原子力発電所を0基とした2010原発0ケースを示す。ここでは積極的に太陽光発電、風力発電を導入している。この量は一見極端な値のように見えるが、図3のように潜在量(但しここでは物理的、社会的な状況を現実的に加味した値)の数分の1であり、海外の動向も踏まえれば、その実現可能性は十分あり得ると考えている。

3.3 一次エネルギー国内供給量
 最終的に得られた一次エネルギー国内供給量の結果を図4に示す。必要な最終エネルギー消費量が削減され、さらにエネルギー転換時の効率向上を考慮した結果、1998年比で、2010現状推移ケースで14%増加するが、2010効率化ケースで12%減少するという効果になった。
 ここでCO2排出量を求めると、1990年比でみた場合、2010現状推移ケースで13%増加になったが、2010効率化ケースでは、電力量構成が2010原発0ケースの場合でさえ2.2%減少という結果になった(1990年比)。これは、従来一般に言われてきた、原子力発電を行なわないと温暖化問題に影響が出る、という考えが、まさに一方的で固定的な考えであり、そうならない方法が存在するという事実を示している。
 また、考慮したエネルギー効率化技術及び省エネルギー行動の各々の効果を比較すると、例えば家庭部門では、技術導入による効果よりも、市民の積極的な省エネ活動の方が効果が大きいことが分かった。例えば家庭用潜熱回収型給湯器の省エネルギー効果87ペタジュール(PJ=10^15J)に対し、省エネ活動(使わない場所の電気は消す、冷蔵庫にものを詰め込みすぎない等)の省エネルギー効果は207ペタジュールである。費用を必要とせず、即時に効果の得られる省エネルギー行動の方が効果が大きい、ということは非常に重要な事実である。
 政府の需給見通しにはこのような効果はなかなか算入されない。あまりライフスタイルに関することは政府として強要できないと思われるが、あくまでもシナリオとして算入することは問題ないはずである。それが出来ないということは、政府の現在の見通しの方法に限界があるということになる。

3.4 2050年の自然エネルギーシナリオ
 2050年の自然エネルギー100%自給シナリオを一つの試算例として示す。表IIIが試算条件、図5が結果である。この試算条件については、現在の技術開発の進展状況や、持続可能な社会を求める市民の力によって、達成に近づく可能性が十分あり得ると考える。また重要なことは、まず最初に無駄なエネルギー消費を削減し、そして次の段階として自然エネルギーの積極的な導入を考えることである。
 もちろんこれは一つの試算に過ぎないが、重要なことは、このような将来像を提示し、理想的なエネルギー需給構造は何なのかということを広く議論しあうことである。そして、将来はどうなるかという消極的な気持ちではなく、どうしたら良いのか、ということを市民や消費者に求めることだと思われる。

4. 結論
 今回の検討結果は、以下のことを示唆する。
(1) 将来の見通しについて;
・試算の前提条件に業界の意思が入りすぎている。また、エネルギー需要が増大することで利益を得る人々のみで議論することは、無駄なエネルギー量を減らす想定につながりにくい。
・省エネルギーの効果は、技術だけでなく行動による効果が非常に大きい。

(2) 原子力について;
・原子力発電が無い場合でも、必ずしも温暖化対策に影響を与えず、停電にもならない方
法は存在する。
・「原子力発電は絶対に必要」という固定化した政策でなく、柔軟な視点で脱原発のシナリオを示す必要があると考えられる。その際、政府の審議会だけでなく広く一般の市民や消費者を含めた議論が必要である。

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(参考3)

第4回総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題WG
議事概要

平成6年2月17日
原子力産業課

1.日時:平成6年2月4日(金)14:00~16:00

2.場所:通産省 資源エネルギー庁第一会議室

3.出席者:委員:生田(主査、エネ研)、池亀(東電)、石渡(動燃)、太田(中電)、鈴木(東大)、鷲見(関電)、武田(東海大)、野澤(原燃)、真野(原燃工)、南(関電)、南(東電)、村田(原文振)、森(原産会議)、
STA:木阪(動開課長)、森口(核燃課長)
事務局:並木(審議官)、藤島(総務課長)、松井(原産課長)、稲葉(原電課長)、藤富(原管課長)、他

4.議事内容
(1)配布資料確認及び事前説明(資料1)

(2)資料2~資料5について、松井原産課長より説明

(3)資料2「ウラン需給見通し」、資料3「軽水炉使用済燃料発生量見通し」、資料4「核燃料サイクルの経済性試算について」の議論
鈴木)<1>資料4参考2について、加重平均はどういった前提の基に試算されたか。<2>再処理リサイクルを行うことによりウラン節約量をどの程度見込んでいるのか。
事務局)<1>について、2030年9200万kWという設備容量のマクロフレームを設定し、そこで発生したSFについて、六ヶ所再処理工場で再処理を行い、同プラントを上回る分は、国際的な価格で海外再処理するものと考え、各々のコストを処理量で加重平均した。<2>について、試算の仕方はOECDとは違って、SFを再処理して生じる約0.6%のPuを濃縮度約4%のMOX燃料に加工して装荷する。これを燃焼した後、再びSFを再処理し、Puを抽出する。これを何回も繰り返すという設定で計算している。
鈴木)再処理リサイクルによるウラン節約量は、資源論的な観点を重視して、炉心装荷量で評価すべきでないか。
太田)資料4P1で「核燃料サイクルの経済性について積極的に公開し、」とあるが、全体としてならともかく、個々のサイクル施設の試算まで積極的に公開することはいかがなものか。また、資料2について、2030年のウランの需給を楽観視していないか。この資料では、2030年頃にFBR商業炉を開発する必要性について説得力のある説明ができない。
松井)本資料は、客観的にウラン需給を評価した結果でありこのようなウラン需給見通しの基でFBR開発をどのように説明するかについて問題提起しているところ。このデータを根拠にFBRを不必要というつもりはない。また、経済性の公開について、詳細な計算はさておき発電原価ぐらいは出さなければならないと思う。いずれにしても、詳細な数値については、電事連と協議するつもりでいる。
南(賢))資料4の再処理について、為替レートが変れば海外再処理の単価が変化すると考えてよいか。
松井)おっしゃる通りである。ちなみに、1$=124円は、昨年度の平均レートである。
池亀)経済性を論じるに当たって、為替レートの変動は大きな要因であるが、評価が難しい。また、現在だけではなく将来的な経済性も評価する必要があり、本資料がこの点をしっかり評価しているか疑問である。また、直接処分コストは、処分場の立地状況、それに係る許認可等の事情で大きく左右されると思われるが、どのように試算したのか。
事務局)直接処分コストの試算は、OECDがスウェーデンの例を用いて試算を行っているが、かなり幅がある。今回の試算については、最も割高な数字を用いている。また、直接処分の実績を持つ国がない以上、許認可等の影響に係る事情は、OECD試算でも同様と考える。
武田)ウラン需給の試算について、この資料では、OECDの試算を用いているが、米国の科学アカデミィー【ママ】の試算では、もう少し余裕のある結果が出ている。他のレポートについても検討して頂きたい。コスト試算について、公開するかどうかは別にしても電力内で計算してほしい。また、データの事実に基づいて政策を柔軟にしてもいいのではないか。
真野)為替レートの影響について、他のエネルギーの影響度合いとの比較も考えて評価すべき。また、経済性は、ファイナルコストのみを見て議論するのでなく、電気料金全体のバランスを考えて論じる必要がある。この際、事業者がもっている資金をどのように使うのかという問題が別途あり、そこは、経営判断に委ねられている。
松井)結局、輸入エネルギーと国産エネルギーとの比較に帰着し、レートの影響で経済性が成立しなくなるとセキュリティー論がクローズアップされてくるのだと思う。これらの諸要素をすべてこの資料中で評価するのは難しい。
太田)電力は、公益事業であり、核燃料サイクルコストについても試算を公開すべきだという意見には同感しているが、例えば再処理コストの場合、今まで発表されている発電所コストのように全発電所の平均値を公表するのと違い下北の工場のコストということになってしまう。もし、本当に発表され、それが非常に割高である場合サイクル事業が成り立たなくなるような数字が出てくる可能性がある。
池亀)経済性というのは、LNGの例にもあるように現時点の価格だけでなく将来どうなるかが問題である。また、輸送、用地、規制等でやむを得ず高くなる要因もあり、現時点での数字だけを比べるのはよくない。
石渡)長計では、2030年がFBR実用化を目指すとの方向で議論を進めているところでもあり、この報告書の公表の仕方には配慮願いたい。また、日本では直接処分について議論されたことはなく話が混乱してしまうのでこの点についても配慮願いたい。
森口)STAにおいてもコスト試算はしているが、直接処分については、データがないことからかなり幅が広くなる。また、OECDの資料についてもかなり幅があるものであり、資料の作り方次第では、意図的にも作れる。したがって、我々は、このような資料を作る場合でもかなり慎重にしている。
主査)経済性については大変難しい問題ではあるが、現時点での経済性を論じるよりも、超長期の展望を踏まえた上で核燃料サイクルの確立を図るべきである。これを実現するに当たり、必要なことを現在から取り組んでいくという議論とすべき。

(4)資料5「核燃料サイクル事業の進め方に関するポイント」についての議論
村田)日本では、直接処分という選択肢はなく、また、立地事情等日本の特殊性を考えるとOECDや米国の計算は適用できない。
 日本のリサイクル政策を進めるに当たってのアイデンティティーをはっきりすべき。
南(直))多少コストがあがるかもしれないが、核拡散抵抗性を高めた方がいい。また、電気料金が若干高くなろうと長期的判断から経営資金を割いても再処理事業に投入していくいく【ママ】必要がある。
鈴木)SFについて、長期的にみてこれをどうするかを国際的にも議論されるべき。再処理は、SFの管理の一環としてやっているということの方が分かり易いと思う。アクチナイドリサイクルも廃棄物の処分をし易くするためにやるとした方がいい。
 全体に、まだ現状に引きずられて思い切った議論ができずに主旨が曖昧になっている気がする。
森)SFの中に含まれているPuをプルサーマルをしてどれくらい燃やせるのかの計算もした方がいい。また、ワンススルーについても、もう少し突っ込んで議論してもいいのでは。
武田)再処理事業の商業化を図るのであれば、コスト評価は非常に重要。割高であればコスト低減に努め、なおかつ割高であれば計画の放棄もやむを得ない。政策決定とは路線の選択であり、選択肢としてワンススルーを考えないのは奇妙。また、国際的なエネルギー安定化を図る上で日本が原子力を増やすとした方が分かりやすい。将来、各国は孤立するのではなく協力し合う時代がくると思うので、エネルギーを国産にする必用【ママ】はない。
池亀)円レート等を鑑みると、今までのようにすべてを国産化することは適切ではないとの考え方には同感。また、短期的にはP2の(経済性の重要性)にあるように投資の妥当性は重要。
野澤)六ヶ所再処理工場での再処理に係るコスト試算については、今少し時間を頂きたい。

(5)資料5「FBR実証炉に関する議論の整理(案)」について、松井原産課長より説明及びこれについての審議
木阪)P4にある協議機関の必要性については、我々も認識している。
 「2000年頃までに」とあるが、2000年までに結論を下すのは、現実的には難しいと考えており、また、日々チェックしていくことが重要であるため時期を明確に記載すべきでない。見方を変えれば、2000年頃まで何も決まらない可能性もある。また、2020~2030年頃におけるFBRの技術体系の確立に向けての明確なステップが必要であるとともに、動燃と事業者の協同作業体制を明確に打ち出すことが重要。
池亀)P3「実証炉の開発を国際的に開かれたものとする…」とあるが、いろいろ関連する問題があるので、実施主体である原電と検討する必要がある。また、協議機関については、実証炉1号だけでなく、核拡散抵抗性に優れた技術やFBRの経済性について検討する必要がある。
武田)協議機関については、中立でありC&Rの効果があるようなものでないと、世界情勢が変化した場合に対応できる政策を決定できない。また、FBRが環境にいいかどうかや核拡散抵抗性があるかどうかの議論も必要。
太田)諸外国の参加については、具体的な参加方法等を検討した上で書く必要がある。2030年頃の実用化をねらったものを作る場合、軽水炉に勝るものを目標にすべき。
森口)資料5について、ディスカッションペーパーであり今までの議論を踏まえたものでないと認識している。次回もこのペーパーをこのまま利用して議論される旨確認したい。
松井)基本的には、これを出して議論する。
鷲見)協議機関について、2000年頃までには検討するが、それ以降は、検討しないように読めるが。
 また、P4「具体的建設スケジュール等を検討する」とあるが、具体的建設スケジュールは、実施主体の原電が決めるべきであり、建設スケジュールだけでいいのではないか。
松井)2000年頃に現在の漠然としたものを具体的にするというものであり、当事者が行う詳細なスケジュールまで決めるつもりはない。

次回:2月16日(水)15:00~17:00
資源エネルギー庁第1会議室
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