長計策定委員日誌(1)

伴の長計策定委員日誌(1)
 台風の雨がちょうど降り出し、会場は人と熱気も加わって、蒸し暑かった。
 発音順に座ったので、右隣には橋本茨城県知事、左隣には藤洋作電事連会長。橋本知事から早速面白いことを伺った。福島県知事はこの土俵に乗っても十分な議論にならないと判断して断ったそうだ。福井県知事はなりたがっていたようだが、結局、茨城県が引き受けたとのこと。このあたりは立地県協議会でのこと。
 近藤駿介座長から、審議に関する趣旨説明のあと、事務局から20分程度、2000年長計の概要の説明があった。一般から寄せられた意見は予想通り完全に無視されていた。
 その後、総勢32名の委員のうち、今回出席している27名の、自己紹介をかねての発言が席順に行なわれた。印象に残ったのは、まず自分の見解を開陳するひと、長計に反映して欲しいことを要求する人などが多かったことだ。ある意味では、それぞれの考えが出て、分かりやすいともいえる。脱原発を言ったのは、僕だけだったので、原子力村で孤軍奮闘するのかと実感が沸いてきた。要請文を発表したからには、議論を回避はできないと事務局も判断しているようだ。だが、脱原発の議論がどこまで出来るのか。原子力村の中で脱原発議論が始まったという形にしたい。
 今回の長計改定議論の焦点はなんと言っても核燃料サイクルの扱いだろう。再処理の中止を主張して核燃料サイクル政策の転換を確実なものにしたい。六ヶ所再処理工場の運転に対する批判派は3、4名ほどか。
 東電の勝俣社長と藤電事連会長らは一致して再処理は必要と強調していた。電力からは多くて1名でいいと思うが、二人が声を揃えて、規定路線を強調! 僕には2階に上げられて梯子を下ろされる危機感があるのかなと感じた。とはいえ、藤会長はこれから計画するものには柔軟に対応して欲しいと釘をさすことを忘れなかった。聞きようによっては、六ヶ所再処理工場ともんじゅは運転することにして、第二再処理工場は止める仕掛けを作って欲しいと聞こえる。そして、これが今回の長計の落としどころと噂されている。
 そこで、六ヶ所再処理工場を止めるためにどこまで頑張れるかが「批判派」の勝負どころとなるだろう。
 順番が来て発言した内容は、これまで長計策定会議や円卓会議に要求してきた人選問題、再処理政策についての議論のあり方の要求、脱原発政策に関して議論をすることの3点だった。これらを2000年長計に対して一般から寄せられた意見を集約する形で発表した。
 人選問題では、委員の公募とその中から事務局を選任することを求めた。原子力村の解体である。残念なことに、後者は提出文の校正を重ねるうちに漏れてしまったので口頭での発言となってしまった。ウラン試験を止めてまずは十分な議論をせよ、が2点目。ちょうど、策定会議当日、日本経済新聞社が朝刊で9月までに長計策定会議で核燃料サイクルの議論を済ませる方針と伝えていた。そこで、拙速に議論を進めるべきでない近藤座長に釈明を求めたところ、彼からは「方針とかかれる場合は、例によって、何も決まっていない」との発言。ウラン試験は現在の状況からしてそれくらいになりそうで、彼は私たちとの交渉の席上(6月7日)は、長計とウラン試験とは関係がないと言い張っていたが、関係者らはもちろん長計の議論を意識しているようだ。
 そこで、9月までに議論を終えるために、再処理するも直接処分するもそれほどコストは変わらないという、いい加減な計算を出して議論を済まそうとしていると考えられる。これに反論することはもとより、安全問題や他国との比較などを求めて、十分な議論をさせること、そもそも政治的に議論の優先順位をつけたり、それにあわせて会合の頻度を増やしたりさせないことが、よりいっそう重要になってきた。
 反省として、いちいちの細かいことに反論してもつまらないと思っていたが、やはり反論しておくことは必要かと考え直した。

第一回配布資料
aec.jst.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei2004/sakutei01/sakutei_si01.htm
第一回議事録
aec.jst.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei2004/sakutei01/01gijiroku.pdf