関西電力高浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書について

関西電力高浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書について

2015年1月13日

NPO法人 原子力資料情報室

 当室は、原子力規制委員会による関西電力高浜発電所の適合性審査結果に関するパブリックコメントに、以下の意見を応募いたします。ほかにも原子力規制を監視する市民の会原子力市民委員会美浜の会でも応募した意見を公開されています。ぜひみなさまも意見をご応募ください。

 パブリックコメント募集については、こちらをご覧ください。

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2.発電用原子炉の設置及び運転のための技術的能力

・「規制委員会は、(中略)申請者における技術者の確保については適切なものであることを確認した」とあるが、東京電力福島第一原子力発電所においても同様に技術者の確保は基準にそったものであった。福島事故の際の対応はそれではカバーできなかった。よって、原子力発電所の運転経験が43年間あるとか、各種資格を持っているからといって、技術的能力が確保されているとは言えず、より本質的な審査を行うべきである。

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2.発電用原子炉の設置及び運転のための技術的能力
2-4 品質保証活動体制

・原子炉の設計、工事、運転、保守に関する品質マニュアルを定め、実施部門とは独立した監査部門を設置し監査を実施するとある。しかし、東電福島原発事故が安全性よりも経済性を優先した経営が引き起こしたという反省にたつと、品質が担保されるには社内の組織に任せるには不十分で、社外機関や市民が監視できる仕組みの構築が必要である。
たとえば、ドイツにおいては連邦環境・自然保護・原子力安全局が策定した基準をもとに州の規制官庁が審査を行い、州規制官庁は公認専門家や専門機関、また原子力分野以外の専門家に諮問を行うなどして、審査をおこなっている。

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3.設計基準対象施設
3-1.1 基準地震動

・全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来している(大飯判決より)ことを考慮すれば、これまでの基準地震動の設定法や考え方に誤りがあったことは明白である。今回の高浜の基準地震動の設定に関しても、不十分な見積もりだという指摘がされている。
具体的には、入倉式が世界中の地震データの最適値として導かれたのに対し、武村式は日本国内だけの地震データの最適値として導かれている。いくつかの議論があるが、より厳しい条件で保守的な評価をするべきであるため、断層モデルによる地震規模評価は後者で評価するべきである。
震源を想定しない地震について、新潟県中越沖地震や岩手・宮城内陸地震をはじめ、これまでに観測されたM7.3以下の地震の解放基盤表面相当位置での地震動(はぎとり波)をすべて、震源を特定せずに策定する地震動に加えるべき。また、推本の想定最大地震マップの当該地域最大M7.3を反映させるべきである。
より精度よく基準地震動を見積もるロジックの構築(再検討)が必要である。 

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(2)検討用地震の選定

・プレート間地震、海洋プレート内地震について検討除外にしているが、「スラブ内地震の発生条件や頻度(確率)などは地震学的によくわかっておらず、震源を特定して地震動を策定するのは難しい面がある。逆にいえば、規制の上では十分に安全側の検討を要求するべき(中略)規則5号はこのような検討を要求」(石橋克彦、川内原発の審査書案は規則第5号に違反して違法だ、科学、84、945(2014))とあるように、除外するべきではない。

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3-1.3 耐震設計方針 
3-1.3.4 荷重の組合せと許容限界の設定方針  

・Sクラスの建物・建築物については、運転時の異常な過渡変化に生じる荷重や事故時に生じる荷重も許容できる方針とある。ここで、原子炉構造物の弾性は中性子照射によって脆化すること、また、その劣化予測式に不備があることが指摘されている中で、この方針を叶える具体策が見えない。

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3-3.2 対津波設計方針
c 地下水の流入

・地下水(湧水)量の実績値に対してポンプ排出量が大きく上回ることと、ポンプが耐震性をもつことから、外部の支援を期待せずに排水可能とあるが、福島原発事故収束作業が流入地下水によって困難になっていることを考慮すれば、耐震性があるから問題なしとするのでなく、多重のバックアップが必要である。

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②津波の二次的な影響に対する原子炉補機冷却海水系の機能保持確認

・海水ポンプの機能について、付近の海の砂のサイズとポンプ内異物逃がし溝のサイズを比較し、後者が大きいため、砂がポンプに混ざって機能保持できるとあるが、取水口フェンスを超えた場合に、津波によって流入するものは砂以外にも海中の生物やごみなどもあり、繰り返し寄せる波には地上から混在するものも含まれる。砂のサイズだけで機能保持できると判断するのは不適当である。

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(6)津波監視

・津波監視の潮位計はTP±4mだが、東京電力福島第一原子力発電所の津波についても結局、どの高さの津波が襲来したのかは潮位計の測定範囲を超えたため不明だ。データは採取する必要があり、潮位計は測定範囲の大きいもの少なくとも想定最大津波以上とするべきだ。

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②漂流物による波及的影響の検討

漂流物として衝突する可能性のある最大のものは小型漁船(30トン)とするがその根拠はなにか。高浜町漁港管理条例によれば、50トンまでは利用料が設定されており、将来、50トンの小型漁船が近海を操業しないとも限らない。

51p,56p

津波の二次的な影響に対する原子炉補機冷却海水系の機能保持確認

・津波による漂流物に関して、発電所構内の物揚岸壁に停泊する燃料等輸送船は、津波警報等発令時は緊急避難するため漂流物とはならない、とある。しかし、避難に失敗する可能性もあるため、燃料輸送船が原発施設に流されてきた場合にも対応しうる対策が必要である。

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3-4.1 外部事象の抽出 
2.人為事象の抽出

・テロ(航空機衝突、船舶衝突)やサイバーテロについても検討するべきである。また、人為事象について、高圧送電線の破壊はありうる。

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3-4.2.1 竜巻に対する設計方針

・竜巻と津波は発生原因が異なり同時に発生するとは考えられないので組み合わせは考慮しないとあるが、発生原因が異なれば、同時に発生しないと言い切れないはずだ。この組み合わせも考慮するべきである。

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(2)基準竜巻の最大風速の設定

・竜巻の最大風速の設定を、頻度と最大風速のハザード曲線を元に算出しているが、今後、地球温暖化の進展とともに、日本における台風や竜巻の規模の拡大、発生頻度の上昇が予測されている。これに応じた予測である必要がある。よって日本または検討地域における過去に発生した竜巻を前提条件とすることは妥当ではなく、より保守的に、世界で発生した竜巻のハザード曲線をもとに算出するべきである。

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3-4.2.2 火山の影響に対する設計方針

・階段ダイヤグラムで将来予測できると主張しているが、階段ダイヤグラムから直接に発生確率を説明する知見は得られていない。

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降下火砕物の直接的影響に対する設計方針
7.降下火砕物の直接的影響に対する設計方針

・②水循環系の閉塞に関して、降下物の粒径と施設の流水部を比較したり、粘土質でないために性状変化して閉塞しないとあるが、火山灰に少量の水がふくまれて固化して排水溝を塞ぐ例はしばしばみられるため、対策が必要である。

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・現状、屋内の対策が行われているが、野外での作業もあるため、降下火砕物のガスの中で、作業員の健康と作業性を守る対策が必要である。

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3-4.2.3 外部火災に対する設計方針

・近隣の産業施設の火災・爆発について、現状は発電所半径10km以内に石油コンビナート等に相当する施設はないとしているが、今後も状況が変わらないことを担保する根拠はない。

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3-4.2.1 竜巻に対する設計方針
(2)近隣の産業施設の火災・爆発

・航空機落下に関して、敷地内落下は想定するが、重要施設そのものに直接落下することを想定していない。航路から導いた確率論で否定されているからだ。しかし、航空機に異常があって落下するのであって、正常な航路をもとに確率論で落下を語るのは正しくない。他の項目は、「保守的に」「不確かさを考慮」しているにもかかわらず、この項目ははなはだ楽観的だ。

76p
(3)発電所敷地内における航空機落下等による火災

・人為事象であるのに航空機落下等の落下確率が低いから検討対象外とするのは無意味だ。そもそもミサイル等の可能性を検討しないこと自体、機微物質を取り扱う原子力発電所において、非常識だ。

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3-6 火災による損傷の防止

・(1)火災感知設備 発火源がなく可燃物を置かない運用とすることで火災を発生させない火災区域は火災感知器を設置しないとあるが、悪意のある行為を完全に排除することはできないので、火災感知器は設置すべきである。

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(2)消火設備

・消火設備は単一故障を仮定しても同時に消化機能を喪失しないとあるが、消火設備は重要な役割をもつので、単一故障の仮定では不十分であり、一つの原因で同時に多数の故障が起きる共通要因故障も想定すべきである。

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(3)原子炉制御室における火災の影響軽減対策

・1つの制御室の、中央制御盤の一つの区画内で火災が発生して安全機能がすべで喪失した場合であっても、他の区画の制御盤による運転操作等により原子炉を停止することができる、とあるが、火災が起きた部屋の居住性は著しく低下することから、もう一つ別の制御室が必要である。    

・①操作スイッチ及びケーブルにおいて火災が発生した場合でも近接する他の構成部品に影響がないことを実証実験で確認するとあるが、どの程度の実証実験で確認するのか。

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6. 特定の火災区域又は火災区画における設計方針

・蓄電池室には、蓄電池のみを設置し直流開閉装置やインバータは設置しない設計とあるが、蓄電池はそれ自体が発火源と燃焼材料になりうるので、それだけであっても火災対策が必要である。航空機に積んだ蓄電池が発熱・発火する例もあるので、蓄電池の規格には充分な注意が必要である。

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3-7 溢水による損傷の防止等
(1)没水の影響に対する設計方針

・消火水の放水による溢水、被水の影響に対する設計方針において、この他、消火水の放水による被水の影響については、防護対象設備に対して不用意な放水を行わないことで、安全機能を損なわない運用を行う設計としているが、人間の判断にたよって安全機能を保持するのは不確実なので、対策が必要である。

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3-8 誤操作の防止

・操作盤の配列や形状や色で誤操作を防止するとしているが、福島原発事故では判断ミスによる操作ミスがおこなわれたと考えられている。
また、事故シナリオに基づいて、手順書を作成し、訓練を実施しているが、事故は事故シナリオ通りに進展するものでもない。
よって、操作盤の機器的な対応のみでミスの防止ができるものではない。

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3-10.2 安全施設 
2.共用又は相互接続

・中央制御室を3及び4号炉で共用することについて、共用することによって運転員の融通が可能となり、総合的な運転管理ができるために、安全性が向上するとしている。だが、中央制御室にトラブルが生じた場合、両方の炉が危険にさらされることになるため、安全性が向上するとは言えない面もあり、炉ごとに制御室を設けるべきである。

134p
4-1.2 有効性評価の結果

・有効性評価の結果では、たとえば、「2次冷却系からの除熱機能喪失」では必要な要員及び燃料等において、必要な要員は18名に対し、重大事故対策要員は118名いるので対応が可能であるとし、「原子炉停止機能喪失」や「ECCS注水機能喪失」でも重大事故対策要員は118名いるとの記載があるが、夜間の初動対応要員は56名であり、短時間に対処を完了しなければならない作業において、召集要員は考慮すべきではない。

・複数の作業手順において、運転員は1名で作業を実施しているが、オペレーションミス等を防ぐ対策は、機器の配置のみか。最低でも作業時は2名でのダブルチェックが必要である。

・各シナリオはそれぞれ独立事象として検討されているようだが、こうした事象が同時並行的に進展することを検討するべきである。

・複数のシナリオにおいて、1,2号機の運転員を融通しているが、同時に事故が起こるリスクを考え、このような対応は行なうべきではない。

・各シナリオにおいて、作業時間等の記載があるが、これにはオペレーションミス時の手戻りは考慮されていない。緊急時において完全なオペレーションを要求することは不可能であるから、オペレーションミス時の手戻りを考慮したシナリオを検討するべきである。

137p
4-1.2.1.1 2次冷却系からの除熱機能喪失
③不確かさの影響調査

・この作業シナリオでは、主給水流量喪失後24分ですべての蒸気発生器の広域水域が0%になり、29分にフィードアンドブリード運転を開始するとしている。これは5分で実施可能な作業か。
また解析条件の不確かさの影響について、フィードアンドブリード操作を5分遅らせた場合でも影響は小さいとしているが、どこまでフィードアンドブリード操作を遅らせることが可能かを確認するべきである。

162p
4-1.2.1.6 ECCS注水機能喪失
(2)解析手法及び結果、不確かさの影響評価

・代替再循環切り替え操作について、訓練実績から12分で対応可能としているが、訓練と実際はことなる。どこまで切り替え作業遅延が可能かを確認するべきだ。また操作余裕時間を3分としているが、手戻りがないという保障はどう取っているのか審査するべきである。

166p
4-1.2.1.7 ECCS再循環機能喪失
(1)2次系強制冷却の操作余裕時間

・61回適合審査会合資料3-7の128pにおいて、格納容器スプレイによる代替再循環操作は訓練実績時間が35分であり要求時間の49分に対して十分余裕があると主張するが、一方で、代替再循環開始前に原子炉容器水位は低下が進んでおり、炉心露出までの余裕は大きくないとしている。代替策を検討するべきである。

203p
4-1.2.2.4 原子炉圧力容器外の溶融燃料ー冷却材相互作用
(1)水蒸気爆発が実機において発生する可能性

・川内原発新規制基準審査書のパブリックコメントにおいて、規制委員会は【規制委員会の考え方】として「TROI 装置による実験のうち、自発的な水蒸気爆発が生じた実験においては、溶融物に対して融点を大きく上回る加熱を実施するなどの条件で実施しており、この条件は実機の条件とは異なっています。国際協力の下で実施されたOECD SERENA 計画では、TROI 装置を用いて溶融物の温度を現実的な条件とした実験も行われ、その結果、本実験においては自発的な水蒸気爆発は生じていないことを確認しています。」との回答を示した。しかし、事故時には大量の核燃料と被覆材などが不均一な状態で溶け合って存在することになる。よって、成分と温度の不均一性は当然考慮すべきであるから、TROI実験を除外することは、都合のよい実験結果のみを選択しており、非科学的であるとの誹りを免れない。また、HongらはOECD-SERENA計画の結果を”The test results confirmed the low explosivity of corium in comparison to simulant alumina, although triggered steam explosions were observed. “(“Brief Results of the OECD-SERENA Project“) とまとめており、生じないとは主張していない。

203p
4-1.2.2.5 水素燃焼  

・基準では水素濃度13%以下では爆轟は発生しないとあるが、TMI-2では水素濃度約8%の状態で、水素爆発が生じている( E. Studer et al., Kurchatov Institute, “Assessment of Hydrogen Risk in
PWR,” [undated], p. 1)。 さらに、水素燃焼シーケンスに関する説明資料では、再循環サンプ区画において爆轟領域に入っていることがわかる。爆轟領域に入っている時間帯が短く、気相部が小さいとは言え、発生した場合の影響評価は必要である。

・事故状況の中では水素の偏在が考えられ、そこでの爆発が考えられる。関西電力はGOTHICでの解析結果から水素は偏在しないとしているが、偏在することを前提に水素燃焼にどう対応するのか検討するべきである。

・PARやイグナイタが必ず機能するとは言えない。また、高濃度水素条件下でのPARを使用した場合、着火による爆轟の可能性が指摘されており、この点も検討するべきである。

・全炉心のジルコニウム反応を解析コードをもとに75%+6%としているが、九州電力は川内原発の審査において解析コードに依存せず100%で提出している。より保守側で審査するべきだ。すくなくとも100%でどのように変化するのかを確認させるべきである。

・圧力容器内のジルコニウム・水反応が終了後、鉄・水反応による水素発生ポテンシャルが上昇する。鉄・水反応による水素発生評価も行うべきである。

・MCCIにより、水素だけでなく一酸化炭素も発生するが、これに対する評価を行なうべきである。

213p
4-1.2.2.6 溶融炉心・コンクリート相互作用
(1)原子炉下部キャビティへの注水開始遅れの影響について

・操作開始が10分遅れても1mの水位を維持できるとあるが、これ以上遅れた場合の解析を行わせるべきである。

243p
4-1.2.4.4 反応度の誤投入
臨界ほう素濃度の設定根拠

・冷却水のほう素濃度は2800ppmだが、純水で薄められることで中性子の吸収が減少し、中性子束高を示す警報がシナリオでは51分に鳴動することになっている。シナリオではその後、純水の流入が停止作業が開始するのが61分、作業完了は62分、一方、臨界ほう素濃度1850ppmに到達するのは。流入が止められなかった場合は63分である。
また、ほう素濃度は余裕をもった設定としていることから、濃度の不均一は検討していないようだが、巨大な一次冷却系においては、ほう素濃度は不均一であることは当然であり、余裕を持った設定にしているから臨界になることはないとするべきではない。

・MOX燃料とウラン燃料はそれぞれ特性がことなるが、現状。MOX燃料を前提とする基準は存在しない。事故の進展を早め、外部に放射性物質が放出された場合、被害が拡大するMOX燃料については、別途の基準および審査が必要である。

293p,314p
4-4重大事故対処設備および手順と4-5大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムへの対応についてー

・4-4および4-5で、規制委員会が実施したことは「適切に整備する方針であるか」「確実に実施する方針であるか」の審査である。方針に沿って適切に実施されるかは、後続の設計工事認可や保安規定認可に関わり、最終的には使用前検査によってしか確認できない。
 設計工事認可申請書および保安規定認可申請書は公開されているが、審議内容は非公開であり、結果のみが規制委員会で知りうるだけとなっている。
 従って、設計工事認可や保安規定認可についてもパブコメが必要である。福島原発事故の背景的要因として「規制の虜」が指摘されているが、規制当局が電力の言いなりに二度と陥らないためにも、後段の認可に関するパブリックコメントが必要である。とりわけ、規制庁が発足したが、骨格は虜になっていた保安院の職員が中心となっていることから、これに対する不信を払拭するためにも、パブコメが必要である。かつ、ヒアリングに関する議事録の公開を求める。

・個々の要求事項への対処が審査されているが、事故は将棋倒し的に起きていくものであるから、対策は連続的になることもある。その場合の対応については審査されていない。
 また、可搬型の設備の配備時間などが評価されているが、事故が大地震など大規模な自然災害により発生した場合には可搬型の機器での対応が評価時間通りに進むとは考えられない。
 事故の重なりは法に基づく要求事項ではないので、それでよしとしている。これは単一故障(+全交流電源喪失)に基づく炉規法の欠陥である。

335p
4-4.8 格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備及び手順等

・重大事故(一次冷却材配管破損、ECCS停止、外部電源無効、格納容器スプレイ停止)においては代替注水機構をもちいて注水することになるが、炉心が溶融し始めると、直ちに炉心冷却を諦め、格納容器を守るため格納容器スプレイへの注水に切り替える方針を事業者は取っている。
これは「溶融炉心の原子炉格納容器下部への落下を遅延又は防止するため、原子炉圧力容器へ注水する手順等」を要求する「技術的能力に関する審査基準1.8」の解釈1(2)に違反している。また「設置許可基準規則」51条では「発電用原子炉施設には、炉心の著しい損傷が発生した場合において原子炉格納容器の破損を防止するため、溶融し、原子炉格納容器の下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備を設けなければならない」とされている。
よって、炉心へ注水とは別に、格納容器下部キャピティに注水する設備を設置する必要がある。

338p
4-4.8 格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備及び手順等
②重大事故等対処設備の設計方針

・法は、格納容器下部に落下した炉心を冷却するために必要な設備を整備と手順を要求している。これに対し申請者は重大事故対処設備の設計方針の中で「溶融炉心が落下するまでに原子炉下部キャビティに十分な水量を蓄水できる設計とする」としている。しかし、溶融炉心を冷却するに十分な水量があれば、かえって水蒸気爆発が起き、これによる原子炉容器の破壊があり得る。
そうなれば、後続の対応(IV-12)の効果も期待できず、100テラベクレルを超える放射能放出は必至となる。
このような対応を承認するべきではない。

365p
4-4.12放射能拡散の抑制

・法は原子炉建屋に放水できる設備を求め、申請者は「屋外から格納容器等又は原子炉補助建屋への放水」のための設備をあらたに整備するとし、規制委員会はこの方針を承認している。しかし、ここでは炉心の激しい損傷、格納容器の破損、貯蔵槽内燃料体の著しい損傷を前提とした対策を要求している。
炉心の著しい損傷により格納容器が破損する事態に至れば、容易に人が近づけず、可搬型のポンプ類で対応できるとは考えにくい。移動しての対応も必要だが、固定した放水設備を格納容器の周囲に配備することを求めるべきである。

371p
4-4.13水の供給

・法は複数の代替淡水源の確保を求めているのに対して、申請者は既存のタンクを使用する、あるいは格納容器再循環サンプを水源とするとしているが、事故の進展に対応してこれらの水源が使用されていることも考えられる、また、格納容器再循環サンプは溶融炉心の貫通への対応として必要なものであり、使用に制限があろう。他との取り合いのない確実な代替淡水源の確保のためにダムまたは貯水池の設置を求めるべきである。

425p
4-5故意による大型航空機の衝突(重大事故防止技術的能力2.1)

・申請者は「被害範囲は不確定性が大きく、あらかじめシナリオを設定した対応操作は困難である」と考え、「環境への放射能放出の低減を最優先に考えた対応を行う」としている。規制委員会は対応手順書の整備方針を確認したとこれを承認しているが、故意によるものであるから大型航空機が原子炉を直撃する可能性が高く、その場合、格納容器は破壊され、手順書に想定されていない事態が起こりうる(なお、航空機落下に関しては確率が小さい(10−7)として原子炉建屋の直撃を想定していないが、想定するべき)。このような状況では、可搬型の放水設備が放射能放出の抑制に機能するとは考えにくく、放射性物質の拡散を抑制できないと考えられる。
このような放射能放出が起きれば、人による対応が不能となり、炉内内蔵放射能のみならず、使用済み燃料の破損・溶融も起きることになると考えられる。さらに、1発電所には複数の原子炉が設置されており、1基の攻撃により放射能放出が始まれば、隣接する他の原子炉への対応も不可能となり、複数の原子炉からの放出が避けられなくなる。
集団的自衛権の行使によりアメリカの戦争へ加担していくことになれば、テロ攻撃を受ける恐れが格段に高まるだろう。
従って、そのような放射能放出の恐れがある原子炉を法に適合しているとはいえず許可をするべきでない。

◯その他
・集中立地

原発集中立地においては、ひとつの原子炉の事故がもうひとつの正常運転をさまたげる。対策が必要である。

・避難計画

実効性のある避難計画が定まるまで稼働させるべきでない。

・周辺自治体同意

放射能放出の最悪ケースを想定して、広範囲の周辺自治体の合意をとらなければ原発稼働するべきでない。

・パブリックコメント

提出されたパブリックコメントは、全文公開するべきである。