プルサーマル燃料輸送の安全性に疑問

プルサーマル燃料輸送の安全性に疑問

伴 英幸

 プルサーマル計画の導入を進めている九州電力、四国電力、中部電力はフランスのメロックス社に燃料製造を委託していました。すでに製造は終了したようで、福井新聞は、08年12月29日付で、「来年前半に海上輸送し、4-6月の間に日本に到着する計画」だと伝えています。
 各社が製造した燃料の数は、各社が国土交通省へ行なった輸入燃料体検査申請によれば、九州電力16体、四国電力21体、中部電力48体。これらが同じ船で運ばれてくると推察されます。
 この輸送の安全性に疑問が生じましたので、2008年12月24日に国土交通省が近藤正道議員へ、この疑問に対する説明を行ないました。原子力資料情報室も同席させていただきました。
 輸送の安全性への疑問とは、プルサーマル燃料輸送物に規則で求められている条件がクリアされていないというものです。
 国土交通省が所管する法令、「危険物船舶輸送及び貯蔵規則」と「船舶による放射性物質の運送基準の細目を定める告示」によれば、プルサーマル燃料輸送物(輸送容器+燃料)には、一般の試験条件のほかに、特別の試験条件が課せられ、輸送物が健全であることが求められています。特別の試験条件とは、9m落下試験⇒1mの高さから棒状に落下⇒800℃30分の耐火試験⇒水深15mに8時間の耐水試験等の一連の試験並びに水深200mに1時間の耐圧性が求められています。さらに、上記の告示では「告示で定める場合に臨界に達しないものであること」(同規則第81条2号)を求めています。この意味は、輸送容器内部が水で満たされている、中性子倍増率が最大となる配置および減速状態にあること、密封装置の周囲に厚さ20センチの水による中性子の反射があるといった条件の上でも臨界に達しないことを求めているわけです。
 さて、輸送物の臨界解析では容器内が水で満たされていることを条件として行なっていますが、燃料集合体は健全で燃料棒の間隔は等しい条件で計算しています。
 果たしてこの条件が、中性子倍増率が最大となる配置および減速状態かに疑問がありました。9メートルの高さから輸送物(重量は96トン程度)を落下させて燃料が破損することはないにしても変形することはないのでしょうか?
 2007年10月に核燃料輸送事業者の国際団体WNTI(World Nuclear Transport Institute)が主催したPATRAM2007の会議に提出された論文「An Industry Initiative to Facilitate the Criticality Assessment and Subsequent Licensing of Transport Packages」(Lyn.M.Farrington)によれば、PWR燃料集合体が9m落下試験で変形する可能性が示唆されています。そして変形により燃料棒の間隔が3mmより拡大することになれば臨界に達する可能性が示唆されています。
 国土交通省によれば、臨界解析は燃料棒が健全で変形がなく、この間隔が一様な条件で行なわれているが、これでよいと考えている。その理由は、事業者は2007年の会議で提起された問題を受けて自主的に燃料集合体の落下試験を行なって変形量が1mm以下であることを確認している、この程度の変形なら臨界には達しないので条件を変更する必要がないというものでした。
 ところで、プルサーマル燃料はプルトニウムなどによるα線の影響でウラン燃料に比べて発熱量が相当高いのです。輸送物安全解析書の熱解析によれば、8体の燃料集合体を入れた場合8kWで計算しています。輸送中には278℃、特別の試験条件化では298℃に達します。となるとプルサーマル燃料集合体は強度が弱くなっていて、この分、変形を起こしやすいといえます。
 この条件が燃料集合体の落下試験で反映されているのか? 反映されていないとすれば、告示が求める中性子倍増率が最大となる配置および減速状態という条件に合致しないことになります。
 国土交通省からは明確な回答が得られませんでした。やり取りからすると、反映されていないとの印象を強くしました。引き続き、第2回目の話し合いを計画しています。