英国からガラス固化体の輸送開始
報道によりますと、イギリスから日本へのガラス固化体の輸送が、日本時間1月22日(金)開始されました。
イギリスのTHORP(ソープ)再処理工場で製造されたガラス固化体28本が、専用船パシフィック・サンドパイパー号(約5000トン)で輸送されています。同船はイギリスのバロー港を出港し、パナマ運河経由で日本に向かう模様です。六ヶ所村のむつ小川原港到着は、3月上旬の予定と報道されています。
■輸送されている28本のガラス固化体は、それぞれ東京電力(7本)、関西電力(7本)、四国電力(7本)、九州電力(7本)、の所有物です。
この28本が、輸送容器(TN28VT)1基に収納されています。
■日本で原子力発電所を運転している電力会社(9社)と日本原子力発電は、所有する原発から発生する使用済み燃料について、フランスのAREVA NC社(元COGEMA)、イギリスのNDA(元BNFL)と再処理の契約を結んでいます。契約量は、全体で使用済み燃料約7100トン分です。この再処理によって、使用済み燃料は燃え残りのウラン、プルトニウム、そして高レベル放射性廃棄物(死の灰)に分離されます。高レベル放射性廃棄物(死の灰)の部分は、ガラスと混ぜられてステンレスの容器(キャニスター)に詰められ、ガラス固化体と呼ばれています。人間が近づくことなど決して許されないような、死の灰の”塊”です。
*日本の各電力会社とフランス、イギリスとの再処理の契約量の詳細については、下記を参照ください。
「原子力資料情報室通信No.426」
cnic.jp/files/426_p10-13.pdf
■フランスからのガラス固化体の輸送は、1995年4月~2007年3月まで12回行われました。12回の輸送全体で1310本のガラス固化体が、フランスから青森県六ヶ所村に輸送され、現在は六ヶ所再処理工場の敷地内にある「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」に貯蔵されています。これらガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場はいまだに未定であり、今後も処分場確保についての先行きは全く不明です。
*高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(日本原燃)
www.jnfl.co.jp/business-cycle/4_haikibutsu/haikibutsu_03/_03_02.html
*高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの操業状況(日本原燃)
dailydb.jnfl.jp/daily-stat/cgi/pub_preview.cgi?d&3&20100122
■今回は初めてのイギリスからの輸送なので、輸送容器が1基となっていますが、フランスからの輸送では、順次~2基、~3基、と回を追うごとに輸送量が増え、最大時には12基の輸送容器、164本のガラス固化体が一度に運ばれたことがあります。イギリスからは、今後10年間で約850本の固化体が運ばれる予定になっている。
*返還ガラス固化体の輸送量の推移(原燃輸送)
www.nft.co.jp/record/hlw.html
■輸送されるガラス固化体の概要(仕様等)は各電力会社のURLに掲載されています。関西電力の例をご紹介いたします。
( 下記「 1.5×10^14 ~ 2.0×10^14 Bq/本 」は、
ガラス固化体1本あたり、1.5×10の14乗から2.0×10の14乗ベクレルの放射能が含まれているという意です。)
下記のようにガラス固化体には、膨大な放射能(死の灰)が含まれていますので、ガラス固化体1本あたり、1.1 kW/本 ~ 1.4 kW/本 という発熱量があります。
*返還ガラス固化体に係る事業所外廃棄確認申請について
(関西電力)
www.kepco.co.jp/pressre/2010/0106-1_1j.html
3.申請書記載事項の概要
(1) 申請日 : 平成22年1月6日
(2) 申請者及び数量
東京電力株式会社 7本
関西電力株式会社 7本
四国電力株式会社 7本
九州電力株式会社 7本
(3) 輸入廃棄物に係る封入又は固型化を行った者: Sellafield Ltd
(4) 製造時期 : 2002年 ~ 2006年
(5) 輸入廃棄物の内容等
○輸入廃棄物の内容 : 使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性液体
廃棄物をステンレス鋼製容器にほうけい酸ガラスを固化材として固化したもの
・外観 : 良
・閉じ込め : 良
・容器材質 : 英国規格 BS1501Pt3 309S16 (JIS SUH 309相当)
・容器肉厚 : 約5mm
・高レベル放射性液体廃棄物の起源
: 軽水炉用ウラン燃料及び軽水炉用ウラン燃料以外の燃料
○輸入廃棄物に係る封入又は固型化の方法
: AVM(Atelier Vitrification de Marcoule)法
○輸入廃棄物の寸法 : 外径;約430 mm、高さ;約1,340 mm
○輸入廃棄物の重量 : 465 kg ~ 489 kg
○輸入廃棄物の強度 : 良
○輸入廃棄物の発熱量(申請時点) : 1.1 kW/本 ~ 1.4 kW/本
○輸入廃棄物に含まれる放射性物質の種類毎の放射能濃度(申請時点)
・アルファ線を放出する放射性物質 : 1.5×10^14 ~ 2.0×10^14 Bq/本
(放射性核種濃度) 238Pu : 2.0×10^11 ~ 2.2×10^11 Bq/本
239Pu : 1.2×10^10 ~ 1.5×10^10 Bq/本
240Pu : 3.2×10^10 ~ 4.4×10^10 Bq/本
241Am : 9.9×10^13 ~ 1.3×10^14 Bq/本
242Cm : 5.6×10^6 ~ 5.0×10^9 Bq/本
243Cm : 1.9×10^12 ~ 4.0×10^12 Bq/本
244Cm : 2.9×10^13 ~ 6.3×10^13 Bq/本
・アルファ線を放出しない放射性物質 : 1.3×10^16 ~ 1.7×10^16 Bq/本
(放射性核種濃度) 90Sr : 2.2×10^15 ~ 2.9×10^15 Bq/本
90Y : 2.2×10^15 ~ 2.9×10^15 Bq/本
106Ru : 7.7×10^10 ~ 8.3×10^12 Bq/本
106Rh : 7.7×10^10 ~ 8.3×10^12 Bq/本
125Sb : 0.0×10^0 ~ 4.7×10^12 Bq/本
134Cs : 4.4×10^12 ~ 3.0×10^13 Bq/本
137Cs : 3.7×10^15 ~ 4.8×10^15 Bq/本
137mBa : 3.5×10^15 ~ 4.6×10^15 Bq/本
144Ce : 7.7×10^9 ~ 3.9×10^12 Bq/本
144Pr : 7.7×10^9 ~ 3.9×10^12 Bq/本
154Eu : 3.3×10^13 ~ 6.0×10^13 Bq/本
155Eu : 6.5×10^12 ~ 1.7×10^13 Bq/本
○整理番号の表示法 : 容器胴部側面に刻印
【参考資料】
*返還ガラス固化体(原燃輸送)
www.nft.co.jp/outline/outline3.html
*返還ガラス固化体の輸送に係る核燃料物質等運搬物確認証の受領について
www.jnfl.co.jp/press/pressj2009/100115bessi.pdf
(澤井正子)