原子力長計策定会議意見書(第6回)
長計策定会議(6)意見書
2004年8月24日
原子力資料情報室 伴英幸
1)使用済みMOX燃料の扱いを明確に
総合エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会が明らかにしたバックエンド費用の見積もりの中では、使用済みMOX燃料は中間貯蔵へまわされています。使用済みMOX燃料を再び再処理する事業計画は発表されていませんが、はたして再処理が行なわれるのでしょうか? 使用済みMOX燃料は発熱量が高く、その貯蔵や処分は使用済みウラン燃料よりも相当に厄介になると考えられます。また、回収されるプルトニウムの品質および費用対効果(最初の使用済みウラン燃料からすれば再々処理ではプルトニウムの回収量は1万分の1程度になる)の点から、使用済みMOX燃料の再処理は決して有効な事業手段ではないと考えられます。各シナリオの総合評価では、使用済みMOX燃料の現実的な扱いを明確にして議論・評価することが必要だと考えます。
シナリオの経済性評価では、4つのシナリオのうちシナリオ<1>とシナリオ<2>では、使用済みMOX燃料が発生します。これらのシナリオの経済性比較においては、コスト等検討小委員会のバックエンドコストそのままは使えません。シナリオ<1>(全量再処理)の場合には、使用済みMOX燃料の再処理およびガラス固化処理が必要ですが、再処理、ガラス固化体処分が使用済みウラン燃料のそれらと同様に扱えるのかは疑問です。また、シナリオ<2>では使用済みMOX燃料は直接処分されることになります。
シナリオ毎のコスト積み上げにおいては、使用済みMOX燃料の再処理・ガラス固化およびその処分あるいは使用済みMOX燃料の直接処分などのコストの試算が必要になると考えられます。そこで、現在行なっている使用済みウラン燃料の直接処分のコスト試算が終了した後に、使用済みMOX燃料の直接処分に関するコスト試算を行なうことを提案します。
2)資料5-2では長期エネルギー需給見通しのさまざまな評価についての説明がありました。その中で、市民エネルギー調査会のシナリオについても簡単に紹介していただきましたが、同会のシナリオと他の需給シナリオとの根本的な考えの違いが十分に説明されていませんでした(発想のドラスティックな転換との表現のみでした)。それゆえ、是非ともシナリオ作りに関わった調査会メンバーを直接に招いて意見を聞く機会を作ってくださるよう、重ねてお願いします。
3)高速炉もんじゅの必要性が主張されていますが、1999年5月の総務庁行政監察局(当時)の報告書では、「研究開発に要する費用とその成果を明らかにし、その妥当性を論議していくことが必要であり、そのような議論を広く巻き起こしつつ事業を幅広く見直していくことが求められる」としています。今後どれだけ税金をつぎ込むのか、そして得られる成果は何かを明らかにして議論してくださることを求めます。