女川原発で耐震設計を超える地震動!

宮城県牡鹿半島沖地震で設計を超える地震動が女川原発を襲ったことが明らかになった.
東北電力「女川原子力発電所の点検状況について」(8月17日)
www.tohoku-epco.co.jp/whats/news/2005/50817d1.htm

原発の耐震設計用の地震動(揺れの大きさ)には2種類ある.1つは「設計用最強地震」とよばれるもので,歴史的見地からみて起こると考えられる地震,または活動度の高い活断層(過去1万年以内に動いたもの)よって近い将来引き起こされると考えられる地震のうちで,原発にあたえる影響の最も大きい地震である.もう1つは「設計用限界地震」とよばれ,設計用最強地震を超える地震で,地震学的見地から起こる可能性があると考えられるもののうち,「工学的」に適当な範囲で考えて(過去5万年以内に活動した活断層とM6.5の直下地震),最も影響が大きいと考えられる地震である.

わかりやすくいえば,設計用最強地震は起こりそうな最も大きな地震,設計用限界地震は起こりそうもないが万一を考えて想定する地震,と原発を運転する側やつくる側が考えているということになるだろうか.

女川原発での設計用地震による地震動の大きさは次のようになっている(設置許可申請書より).

設計用最強地震(S1)
1号炉 :250ガル
2・3号炉 :250ガル程度,20.1cm/s(カイン)

設計用限界地震(S2)
1号炉 :375ガル
2・3号炉 :350ガル以下,26.6cm/s(カイン)
:400ガル以下,13.5cm/s(カイン)・・・直下地震

東北電力の記者発表「女川原子力発電所の点検状況について」によると,今度の地震で観測された最大加速度は251.2ガルであり,設計用最強地震による想定地震動を超えていたことが明らかになった(東北電力の広報によると女川1号炉原子炉建屋地下2階で測定とのこと).起こりそうな最も大きな地震を超える地震が現実に起きてしまったのだ.これは,電力会社およびメーカーの設計上の想定の不備,さらには国の安全審査に重大な欠陥があったことになる.

非常用炉心冷却系のポンプ・弁・配管,残留熱除去系のポンプ・弁・配管(格納容器スプレイモード),炉心シュラウド,炉心支持板,ホウ酸水注入設備のポンプ・弁・配管,冷却水源としてのサプレッションプール,中央制御室,主要設備としての原子炉建屋などは,安全上非常の大事な施設・機器・配管でありながら,安全基準の上では設計用最強地震に耐えることが求められているのみであって,それ以上ではない.今回の地震による揺れの大きさは,これらの施設・機器に対する想定範囲を超えていたことになる.また,主蒸気系のポンプ・弁・配管,タービン系のポンプ・弁・配管,給水系のポンプ・弁・配管などは,設計用最強地震に耐えることすら要求されていない.

今回の地震で原子炉施設全体でどのようなことが起きていたのか明らかにするとともに,すべての施設に対して,機能テストなどだけではなく詳細な点検を実施することが必要である.

原発の耐震設計に対する重大な欠陥が明らかになったのだから,東北電力が原子炉設置許可を返上するか,経済産業省・原子力安全・保安院が設置許可を取り消すかすべきである.