『原子力資料情報室通信』375号(2005.9.1)「短信」
『原子力資料情報室通信』375号「短信」
東海第二・シュラウドサポートのひび割れを放置したまま運転へ
7月13日、日本原子力発電の東海第二原発(沸騰水型炉、110万キロワット)のシュラウドサポートの外面側の縦方向の溶接部近傍にみつかっていた3つのひび割れについて、構造強度やひび割れの進展を計算し、ひび割れを残したまま運転することに問題がないとする評価書を日本原子力発電が原子力安全・保安院に提出した。保安院は8月2日に、報告書の内容を了承した。
ひび割れがみつかっている場所は、地震の揺れによる荷重の影響が大きいところで、早い段階で貫通する恐れもある。貫通しても大丈夫、というのが評価の内容だが本当にそうだろうか。
福島第二3号炉・燃料取り替え機の動作不良
定期検査中で燃料交換中の福島第二原発3号炉(沸騰水型炉、110万キロワット)で、7月26日の作業中に1体の燃料集合体が装荷途中で何かに接触して装荷できない状態になったため、燃料装荷作業を中断したと東京電力は発表した。燃料集合体とそれを取り囲むチャンネルボックスとを固定するための金具(チャンネルファスナー)の板バネが、曲がって制御棒の転倒防止用治具の吊り上げ用ハンドル部に引っかかっているのが7月28日までにわかった。
その後、板バネがこわれた燃料集合体を使用済燃料プールに移動させて、燃料取り替え機主マストの先端に取り付けられている器具のネジが切れているのが、7月30日までに確認された。
東京電力は燃料集合体が装荷できなかった原因について次のように説明している。以前の燃料集合体装荷作業時に今回こわれた燃料集合体のチャンネルボックスが何かと接触しチャンネルファスナーの板バネがせり出していたところへ、今回の装荷作業で板バネがダブルブレードガイドのハンドル部に接触して曲がり、ひっかかった。
東京電力は8月8日、チャンネルファスナーおよび主マストの部品などを交換すると発表した。燃料集合体は再使用する。
大飯3号炉・配管図にない配管の構造発見
7月29日、定期検査中の大飯原発3号炉(加圧水型炉、118万キロワット)で、配管図に記載されていない構造変更箇所が32箇所あることが明らかになった。
関西電力は、6月24日からはじめた定期検査期間中に、2次系配管の肉厚検査を実施した。検査では、1372箇所について超音波による肉厚測定をし、20箇所については目視点検を行なった。その際、配管図と現場との照合の結果、「その他点検部位」として予定していた部位のうち32箇所が、実際には存在しないことが判明し、点検対象計画から削除したことを、7月29日に定期検査の概要報告として公表した。
減肉傾向があった箇所や外径2インチ以下の小口径配管、あわせて290箇所の配管を炭素鋼からステンレス鋼ないしは低合金鋼へと材質変更の上、取り替えを行なった。
また、敦賀2号炉などで高サイクル熱疲労により再生熱交換器の配管が破損した事故に関連して、余熱除去クーラバイパスライン接続部を超音波で検査したところ、B系の1箇所で溶接の溶け込み不足がみつかったため、この溶接部を含む範囲の配管を交換している。
東海第二・給水ポンプ出口弁の弁棒破断で原子炉手動停止
4月23日から定期検査入りしていた東海第二原発で、8月7日に調整運転のために原子炉を起動したところ、主蒸気トンネル入口付近で蒸気の漏えいがみつかったため、原子炉を手動で停止した。
8月8日、主蒸気ドレン配管内の残留水を排出する配管の先端から蒸気漏れがみつかったため、この系統のドレン弁を閉めなおしたところ、漏えいは停止した。
その後、8月9日に原子炉を起動し、原子炉の圧力を上昇する操作中に、電動駆動給水ポンプB出口弁が正常に動かないトラブルが起きた。8月14日にB系出口弁の内部を点検したところ、弁棒の下部が破断しているのがみつかった。さらに、A系出口弁についても点検した結果、B系破断箇所と同じような箇所でひび割れが起きているのがみつかった。
美浜3号事故1年 未検査を知っていた関電
昨年8月9日の関西電力美浜3号事故から1年が経過した。8月10日の読売新聞は福井県警の捜査情報として、関電が事故のほぼ1ヶ月前から、破断箇所が未検査であることを知っていたと報じた。それによると美浜発電所の「機械保修課の複数職員が遅くても7月中旬には」破断箇所の未検査を認識していたという。
関電は大飯1号の定期検査で昨年7月1?5日、2次系主給水配管が必要肉厚未満に減肉しているのを発見。今年3月1日に関電が保安院に提出した報告書では「平成16年7月の大飯1号機のその他部位(主給水管)減肉トラブルを受け、若狭支社は、その他部位も含めて次回定期検査で追加点検すべき箇所を抽出するよう各発電所に指示した。美浜発電所は、この指示を受け、点検リストのチェック作業を進める中で、未点検箇所の一部として当該部位を抽出したが、既に次回定期検査において点検する計画であったことを確認した」としており、具体的には7月30日に若狭支社から指示文書が出て、未点検に気づいたとしていた。
ところが読売記事によると、大飯1号で減肉を確認した「直後に」美浜サイトでも未点検箇所の調査を開始し、7月中旬には破断箇所の未点検を認識したという。理由もなく27年間未点検であるはずはなく、それがリスト漏れによる未点検であることも分かったはずである。もとより事故直後の報道では、大飯1号減肉をまつまでもなく、日本アームは2003年4月にはリスト漏れに気づき、同年11月には美浜発電所(機械保修課)に知らせたことになっていた。同じ美浜発電所の1号機ではリスト漏れだった箇所を2002年に点検している。大飯1号減肉以前の経緯も捜査対象となるべきであるが、未点検の経緯についてそもそも調査を放棄していたに等しい保安院・事故調のあり方も問われねばならない。