再処理・プルトニウム利用の虚妄性(講演資料)
再処理・プルトニウム利用の虚妄性
原子力資料情報室 西尾漠
◎なぜ再処理・プルトニウム利用なのか?
使用済燃料を再処理し核燃料をリサイクル利用する活動は、供給安定性に優れている等の原子力発電の特性を一層向上させ、原子力が長期にわたってエネルギー供給を行うことを可能とするので、我が国では使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用する核燃料サイクルの確立を基本方針としてきた。(原子力政策大綱)
◎原子力利用の長期的見通しは?
原子力発電がエネルギー安定供給及び地球温暖化対策に引き続き有意に貢献していくことを期待するためには、2030年以後も総発電電力量の30?40%程度という現在の水準程度か、それ以上の供給割合を原子力発電が担うことを目指すことが適切である。(原子力政策大綱)
2030年以降の20年間で、1970年以降の20年間に建設された約3000万kW分を建て替えるとすると、150万kWクラスの場合で20基相当の敷地が必要。(資源エネルギー庁「新・増設、リプレースの実現に向けた主要課題の状況分析」2006.1.10)
◎高速増殖炉の実用化は?
高速増殖炉については、軽水炉核燃料サイクル事業の進捗や「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究」、「もんじゅ」等の成果に基づいた実用化への取組を踏まえつつ、ウラン需給の動向等を勘案し、経済性の諸条件が整うことを前提に、2050年頃から商業ベースでの導入を目指す。(原子力政策大綱)
高速増殖炉サイクルが実用化された場合には、ウランの利用効率が飛躍的に高められ、電気事業者としても、長期的に軽水炉にかわる将来の重要な電源の一つと認識しています。一方、高速増殖炉サイクルの実用化までには、信頼性や経済性を含めて解決すべき技術的課題が多いと理解しており、国が主体となって開発を進めていくことを期待いたします。(藤洋作電気事業連合会会長=当時、新計画策定会議2005.1.13)
六ヶ所村の再処理工場の運転期間が40年とすると、2050年ごろには設備の更新期を迎える。このときにどういう再処理工場を建設することにするのか。これは大きな選択ですが、建設するならFBRの使用済み燃料も再処理できるものとするのが常識的でしょう。FBRは、核燃料サイクルの資源の有効活用と、廃棄物の最小化を実現することができることに利点があるといわれていますが、これは再処理工場とセットではじめて実現できることです。(近藤駿介原子力委員長インタビュー、『日本原子力学会誌』2006年1月号)
◎再処理が主か、プルトニウム利用が主か?
我が国の所有するプルトニウム量がどんどんふえていってしまうんじゃないかということに関する懸念をどう払拭できるかという問題があって、いろいろ考えてきたところ、原子力委員会は2000年長計で今後は海外で再処理はしないこと、つまり、できたものは全部即時プルトニウムに変えてしまうということはしないで、国内の再処理施設に限定して再処理し、残りは中間貯蔵することを決めた。……東海再処理工場も2005年ぐらいからは研究開発のための再処理に限定し、いわゆるプルトニウムを回収することを第一義的目的とする活動をしないとした。……国内の再処理能力の範囲でプルトニウムを生産し、それを主としては当面プルサーマルで使っていくこととした。さらに、当然のことながら、プルトニウム貯蔵量には限界があるわけですから、そういう意味で全体として事業として適切な在庫の上限というものが見えてきたのではないか。(近藤駿介原子力委員長、原子力委員会2006.1.24)
◎どこまで再処理に固執するのか?
我が国においては、核燃料資源を合理的に達成できる限りにおいて有効に利用することを目指して、安全性、核不拡散性、環境適合性を確保するとともに、経済性にも留意しつつ、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本的方針とする。(原子力政策大綱)
六ヶ所再処理工場は国の事業としてではなく、民間の事業として進められているのですから、堅持という表現はおかしいですよ。政府が民間事業者にこんな車を売る事業を続けろということはないのと同じです。……ポイントは、再処理をやめなさいとかやりなさいとか決めたわけではないということです。……政策大綱は、再処理事業者には倒産、破産のリスクを抱えていることを片時も忘れず、企業家精神を発揮し、効果的な事業リスク管理のもとで効率的な事業を行うことを期待している。(近藤駿介原子力委員長インタビュー、『日本原子力学会誌』2006年1月号)