福島原発刑事訴訟の指定弁護士による東京高裁不当判決に対するコメント

判決に対する指定弁護士のコメント

2023/01/18

長期評価の信頼性を全面的に否定した本日の判決は到底容認できません。

 最高裁判決(令和4年6月17日第二小法廷判決)は、長期評価の信頼性について明言はしていませんが、東京電力が行った試算は「安全性に配慮して十分に余裕を持たせ、当時考えられる最悪の事態に対応したものとして合理性を有する試算であったといえる。」と判示して、長期評価の信頼性や試算結果について一定の評価をしていると解釈できます。

 ところが本日の判決は、第1審と同様、長期評価の信頼性を全面的に否定し、試算結果をないがしろにするもので、最高裁判決の趣旨にも反します。

 判決は繰り返し「現実的な可能性を認識させるような性質を備えた情報」ではなかったとして、発生の確実性の情報の必要性を求めていますが、とりわけ津波のような自然災害に基づく原子力発電所事故というシビアアクシデントにまで、このような見解をとれば、およそ過失責任を問えないことになり、不合理と言うほかありません。

 本日の判決は、国の原子力政策に呼応し、長期評価の意義を軽視するもので、厳しく批判されなければなりません。

 我々としては、この判決内容を詳細に分析して、上告の可否等について改めて検討していきたいと考えています。