原子力委員会で意見表明(2012年 第45回・第46回)

 原子力政策大綱の改定を中止した原子力委員会は、それでもいくつかの項目については提言をまとめたいと、委員会が選んだ「有識者」と「意見交換」をしている。

 原子力委員会の全委員の任期が満了するのが来年1月6日という。実質的には今年中なので、提言のまとめを急いでいるようだ。

 政策大綱の改定を中止したのは、9月にまとまった「革新的エネルギー・環境戦略」において「政府は、以下の内容を盛り込んだ新たな原子力政策を、エネルギー・環境会議の場を中心として、確立する。」と明記されたからだ。秘密会議が社会的問題となり信頼を失った原子力委員会がまとめた政策を内閣として決定できないと判断したからだと考えられる。

 これまで、「原子力人材の確保・育成に向けた取組」(第45回定例会議、10月16日)と「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組」(第46回臨時会議、10月24日)について意見交換された。当原子力資料情報室から伴が招かれて意見を表明した(第45回定例会議提出意見書第46回定例会議提出意見書)。

 人材の確保・育成では、若者が原子力学科を選ばなくなるだろうことから、大学などの苦労や業界の立場からの意見が述べられたのだ。彼らに共通する主張は、事故の影響で若者が減ることが確実に予想され、必要としている人材が確保・育成にいっそう努力する必要がある、というものだ。そして、日本電機工業会や電気事業連合会は、国の支援が不可欠と、陳情の場としていた。まるで事故など無かったかのようだ。

 余談だが、隣に電事連の豊松秀己氏が、そのまた隣に日本電機工業会の羽生政治氏が座っていたが、彼らのひそひそ話は近々行われる総選挙による政権交代だった。福島原発事故もそれを契機に作られた革新的エネルギー環境戦略も葬り去ろうとしているわけだ。

 高レベル放射性廃棄物に関しては、日本学術会議が提出した「回答」(原子力委員会が諮問していた)をベースに意見交換した。原子力委員会の問題意識は、いつまでも処分場の候補地が決まらないから、国民から理解を得るよい方策はないものか、だ。北村正晴氏と筆者を除いて、同会議が回答の中で示している総量管理に言及しなかった。原発が国民生活に役に立ち、代替しがたいものであるとの前提に立っているため、これまで通り、原子力を進めることと出てくる廃棄物を処分することは別ものと考えているのだ。

 総量管理は廃棄物の上限を決めること、あるいは発生を抑制することの両方の意味が含まれているが、上限の確定を筆者は画期的と評価したい。上限の確定は原発が終わる時期を確定することでもあるからだ。

(伴 英幸)