原子力規制委員会の原子力災害対策指針(素案)に要注意

 10月24日の第7回会合で「原子力災害対策指針(素案)」が公表された。また、報道ではその際に提出された拡散シミュレーション試算結果で、避難の際の基準を超える被ばくを受ける範囲が30kmを超える原発(福島第二、浜岡、大飯)や40kmを超える原発(柏崎刈羽)があることに焦点が当てられた。だが、規制が厳しくなると喜べない問題がありそうだ。

注意点1)このシミュレーションは福島原発事故で放出された放射能(1~3号炉の合計)が一度に放出されたと仮定しているが、事故想定でこれが最大とは言えない。

福島原発事故は水素爆発だった。最悪の事故を想定するのなら、水蒸気爆発による放射能の拡散を想定するべきではないか。

注意点2)シミュレーションの被ばく線量は7日間で100ミリシーベルトを想定しているが、これは規制緩和である。

 原子力規制委員会はIAEA基準に合わせようとしているので、素案では、防災対策の範囲として半径30kmが導入される。正確には「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ: Urgent Protective action Zone)のことで、避難および屋内退避を必要とする範囲である。これまで半径10kmだったので、規制強化には違いないが、単純に強化と言えないからくりがありそうだ。

 素案では避難の際の基準は「検討し、本指針に記載する」として、示していないが、シミュレーションでは7日間で100ミリシーベルトを想定している。これがこのまま基準になってしまう恐れが高い。また、これはIAEAの推奨する避難基準である(素案では、避難の際の基準について「運用介入レベル(OIL: Operation Intervention Level)」という用語を使っている)。

 現行の防災指針では、全身50ミリシーベルトなので、この点では規制緩和となる。さらに言えば、100ミリシーベルトを基準にするのはとうてい容認できない高い線量基準だ。これでは健康への悪影響は必至となってしまう。また、素案に従えば、例えば、飯舘村の村民のような高い線量の被爆後の避難が繰り返されることになる。

注意点3)飲食物の摂取基準・出荷基準、セシウム以外は元のまま

 4月からセシウムに関しては新しい基準が導入された。飲用水(お茶含む)10ベクレル、乳幼児の食品50ベクレル、その他の食品100ベクレル(いずれも1キログラムあたり)だ。そして政府の説明では一般人の被ばく限度である年間1ミリシーベルトを超えない基準だ。

 ところが、ヨウ素は飲用水、牛乳、乳製品が300ベクレル/kg、野菜類は2000ベクレル/kgで、古いままだ。古い基準は5ミリシーベルトを基に出しているので、明らかに矛盾している。

 原子力規制委員会が設立されて、福島原発事故を踏まえた新しい基準作りが進められているが、実態はそうなっていないようだ。防災指針はまだ素案段階なので、市民による分析と、これに基づく批判や要請をぶつけていく必要を痛感する。

(伴 英幸)

素案:www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0007_03.pdf

シミュレーション説明:www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0007_04.pdf

同結果:www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0007_05.pdf