第5回技術検討小委員会への意見書

第5回技術検討小委員会への意見書

2004年9月22日
原子力資料情報室 伴英幸

1. 「核燃料サイクルコストの討議方法について」(第4回技術検討小委員会資料第2号)に関して

1.1. 直接処分事業以外の事業については、電気事業分科会コスト等検討小委員会の「核燃料サイクルの各要素のトン当たり単価データ」を基とするとされています。原則はそれでよしとして(たとえば、TRU廃棄物処分など、個々のデータに疑問が生じる場合に、別に扱うべきことがありうるかもしれませんが)HLW処分については別途「割引率毎の処分単価」を明示すべきです。これは、すでに終了したコスト等検討小委員会のデータを書き換えるよう求めているのではなく、「拠出金単価」は別に提示するべきだということです。本策定会議における基本シナリオのコスト評価の要素のうち、HLW処分のコスト計算は最も重要なものであり、また、直接処分事業のコスト試算でもHLW処分コストのコスト計算を横において行なうわけですから、そのHLW処分の単価データが数値なしでブラックボックスのようにしか示されないとすれば、世間一般の人の目にはシナリオ評価全体がまったく説得力を欠くものとうつると思います。事情を分かっている人たちが納得していればよいということでは、とても信頼は得られないでしょう。

1.2. 第2再処理工場の「単価を50%にした場合のコストへの影響度について確認する」としていますが、現実的にはむしろ六ヶ所再処理工場の「単価を200%にした場合のコストへの影響度について確認する」ことのほうが意義のあることではないでしょうか。原発のコスト試算においては設備利用率70~85%と3段階での解析がされていますが、シナリオ1および2においては、再処理工場の設備利用率を東海再処理工場の実績に照らして50%とした場合のコストへの影響を確認するよう求めます。なお、核燃料サイクル開発機構の設備利用率の実績は、年間210トンの処理能力として約18%です。

1.3. 劣化ウランを処分する場合の費用算定については、シナリオ評価のコストには加えずに別記することを提案します。その際、対象となる劣化ウランは日本原燃㈱のウラン濃縮工場から排出されるものに限定して、総量を確定するべきです。その理由は、a)高速増殖炉が実用化されることを前提としていますが、その見込みはないと考えています。それは、燃料倍増時間が50年~90年という評価があり、そこからすれば高速増殖炉の実用化はない*と言えるからです。また、高速増殖炉懇談会では高速増殖炉は選択肢の一つとの位置づけがなされており、高速増殖炉の実用化の明確な見通しが出されていません。したがって、劣化ウランが将来処分するべき対象となる可能性が高く、すべてのシナリオに共通となります。b)仮に高速増殖炉で劣化ウランを使うとしても使い切ることは出来ないと考えます。可能だとの意見があるのなら、定量的に示してください。c)本来はフロントエンドで処分までを含めて費用設定するべきものです。海外から濃縮ウランを調達する場合は劣化ウラン処分に対する責任は発生していません。

*  小林圭二著「高速増殖炉もんじゅ」(七つ森書館、1994年)P.303
もんじゅ事故総合評価会議「もんじゅ事故と日本のプルトニウム利用政策」(七つ森書館、1997年)p.217

1.4. 他方、回収ウランの処分費用については、再処理する場合にコストに加えるべきだと考えます。その理由は、回収ウランの濃縮計画がなく、再処理の場合にのみ発生するものだからです。

1.5. 「政策変更に伴う項目(2)今後の対応策」では、六ヶ所再処理工場の廃止措置について「ウラン試験開始後の状態で必要となるコストを試算」とありますが、前日に提示された暫定版の資料では「ウラン試験開始前も可」とカッコ書きがありました。暫定版の変更はあり得ることと了解していますが、その場合は説明の際にきちんと言及してください。「ウラン試験開始前の状態で必要となるコスト」も計算してください。

1.6. 六ヶ所再処理工場への既投資額などについては、発電単価を計算する必要はありません。これは、各シナリオのコストに加えられるべきものではないからです。その理由として、第4回の技術検討小委員会の発言メモを再掲します。
「実際にどれだけのコストが発生しうるかを検討することの意味はありますが、これをシナリオのコストに加算するのは不適当だと思います。仮に、現状維持のAシナリオと現状変更のBシナリオがあるとして、両者を比較する際、変更に伴うコストをBシナリオに加えるべきではありません。両者を比較してBシナリオがベターとなった後で、変更コストの回収方法が検討されるべきです(Aシナリオがベターならそもそも検討の必要はありません)。この場合、ベターでないAシナリオを選択肢固執してきた責任が問われることになりますが、Bシナリオに変更コストを加えて比較することはこの責任を見えなくしてしまいます。」

2. 技術検討小委員会(4)の諸量に関する意見

総発電量を25兆kWhとして計算するとしていますが、設備利用率が85%で計算されているようです。しかし、老朽化が進む中、これを維持することは困難であることは容易に想像できます。従って、設備利用率を75%と保守的に考え、総発電量を22兆kWhとして試算することを提案します。