原子力資料情報室声明:九州電力川内原発、再稼働は許されない

九州電力川内原発、再稼働は許されない

 

2014年11月12日

NPO法人 原子力資料情報室

 

 2014年11月7日、鹿児島県議会は九州電力川内原発の再稼働を求める陳情を賛成多数で可決し、伊藤知事も再稼働に同意を表明した。10月28日には川内原発が立地されている薩摩川内市議会と市長とが再稼働に同意しており、これで形式的には「地元了解の手続き」は完了した、とされるようだ。今後、原子力規制委員会による工事計画認可を得て改修工事を行ない使用前検査に合格すること、保安規定の認可を受けることなど、いくつかの手続きが残されているが、政府と九州電力は、ほぼ再稼働に対する障害はなくなったものと考えているだろう。しかし、川内原発の再稼働は決して許されるものではない。

 川内原発の再稼働を巡っては、周辺地域の多くから抗議の声が上がっている。たとえば、NHKが行った世論調査によれば、薩摩川内市において「賛成」「どちらかといえば賛成」が49%、「反対」「どちらかといえば反対」が44%、一方、いちき串木野市や出水市など周辺地域では、「賛成」「どちらかといえば賛成」が34%、「反対」「どちらかといえば反対」が58%に上っている[1]。これは、川内原発の再稼働に対して、地元からも周辺地域からも大きな反対の声が巻き起こっていることを示している。にもかかわらず、薩摩川内市議会と鹿児島県議会および両首長のみで再稼働を容認してしまった。大きな誤りである。少なくとも、「地域防災計画(原子力災害対策編)」を策定する必要がある原発から30km圏内にある自治体の同意が求められるべきであった。

 鹿児島県の伊藤知事は川内原発再稼働を容認する理由として、事故発生時の国の責任の明確化、原子力規制委員会の審査による安全性の確認、エネルギー政策上の原発再稼働の必要性などを挙げたが、いずれも説得力が無い。

1)事故発生時に国が責任を取るというが、すでに安倍首相は2014年3月20日の参院予算委員会で「安全確保の一義的な責任は事業者が負うのが世界共通の考え方だ」とのべている。さらに、事故から3年8ヶ月を経ても福島第一原発のプラントは未だ収束されず、その見通しも立てられない。そして、誰も責任を取っていない。そもそも、誰も責任を取りようがないのだ。福島第一原発事故の現状を見て、いったい国にどのような責任を期待しているのか。「法律に基づき」というが、国が責任をとれる法律ができているわけでもない。

2)原子力規制委員会の審査は安全性を審査したものではない。規制委員会がおこなった適合性審査そのものについても大きな問題がある。たとえば、九州電力は巨大噴火の予測が可能であることを前提に、巨大噴火の発生を予測してから対応して問題ない旨を説明し、原子力規制委員会も鹿児島県もそれを容認した。だが、日本火山学会は11月3日、現在の科学の知見では巨大噴火発生予知は困難であるとして、原子力規制委員会の火山影響評価ガイドの見直しを提言した。そのうえ、避難計画についても、実効性がなく住民被ばくを避けることができない状態のままである。

3)さらに、エネルギー政策上の原発再稼働の必要性についても、その方針を定めたエネルギー基本計画は、脱原発への市民の圧倒的な世論を無視して、閣議で一方的に決められたものであって、極めて問題が大きい。

 このように数多くの問題が未解決のまま残されているにもかかわらず、伊藤知事は再稼働にあたって、「もう、いのちの問題なんか発生しない」と明言した。まさに過去の原発事故後なんども繰り返されてきた「安全神話の復活」をまた繰り返すものである。

 過去の事実に眼を閉ざし、再稼働を強行しようとするこのような決定は断じて容認することができない。

以上