大型電源新設への新融資制度 電事法改正案
経済産業省は昨年末も、恒例となった年末年始のパブリックコメントをおこなった。示された「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WGとりまとめ(案)」他2件(応募期間2025年12月25日~26年1月28日)によれば、同省は、原発や大型火力の新設・改修の補助制度を作る方針だ。
とりまとめ案によれば、電気事業者が一定の出力規模以上(たとえば50万kW以上)、投資時から回収までの期間が原則10年以上の電源に投資をする場合、経済産業省に事前相談を行ったうえで、電力広域的運営推進機関(OCCTO)に融資の申請を行う。OCCTOは複数の民間金融機関からの融資を前提に、総融資額の3割程度(巨額の融資の場合は柔軟な上限設定とする)までを融資する。融資の原資は政府が行うOCCTOへの財政融資、というものだった。また、事業者が返済できなくなった場合に備え、一般送配電事業者から拠出金等を回収する枠組を設けるとの方針も示されている。
なぜ、このような制度が必要になったのか。経産省の説明によれば、①建設期間中は収入がない、②短期間に大量の電源投資が必要、③民間融資では限界があるので、政府の信用力を活用する、という。
原子力資料情報室はパブリックコメント中だった1月、経済産業省の電気事業法改正案を入手した。これによれば、大規模発電事業者は経済産業省令に定める一定の出力以上の発電設備を整備や更新する場合、「発電等用電気工作物整備等計画」を作成し、経済産業大臣の認可を得ることができる。この計画の認可を得た場合、OCCTOから資金融資を得ることができる。そして、政府はこの資金融資の「財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を補助することができる」。パブリックコメントで描かれたスキームでは「財政融資」だったが、法改正案では「補助」、すなわち返済不要な資金となっている。また、補助に必要な金額自体も「全部又は一部」とあり、当初想定のスキームとは相当変わってきていることがうかがえる。
すでに原発を含む大規模電源には、既設電源に対しては容量市場メインオークション、大型の脱炭素電源(原発含む)の新設や改修、LNG火力の新設に対しては長期脱炭素電源オークションという支援制度がある。これらの費用はOCCTOが小売り電気事業者や送配電事業者から拠出金という形で徴収し、最終的には電力消費者が負担している。2025年度のメインオークションの場合、約定総額は2.2兆円、電力需要は8,610億kWhなので、kWhあたりの負担額は約2.6円、標準世帯(260kWh)の月額負担額は676円。まだ長期脱炭素電源オークションの負担は始まっていないと思われる。なお長期脱炭素電源オークションとOCCTOの新融資制度は併用を前提としている。
OCCTOによる電源融資制度には多くの問題がある。第一に、OCCTOには投資対象となる企業やプロジェクトの価値、リスク等を調査・評価する機能が存在しないこと。第二に事実上大企業しか使えない制度となっていること。第三に融資枠が事実上青天井だということ。第四に政府からの資金は貸付ですらなく補助となっている上、事業者が返済できない場合、一般送配電事業者に拠出金を求める点だ。政府の信用力とは、国民の税金、または電力消費者の負担であることをごまかす言葉でしかない。
大型電源への補助は、急激に進化する蓄電池や分散型エネルギーシステムへの転換を遅らせる。きわめて問題の多い制度だと言える。
(松久保 肇)
オンライン署名「原発新設で電気代が上がる?! 国民負担の新融資制度案に反対します」
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