東京電力福島第一原子力発電所事故処理状況(2025年9月から2026年1月まで)

『原子力資料情報室通信』第621号(2026/3/1)より

●プラントの状況


表1 使用済み燃料プール処理状況

格納容器や使用済み燃料プールの水温は季節変動があるものの、大きな変動は見られていない。また、ウラン燃料の核分裂時に生じるキセノン-135(半減期:約9時間)の発生状況にもおおむね変化はみられておらず、原子炉の状況は安定していると推定できる。なお建屋から毎時最大約1.5万Bqの放射性物質が放出されている(東電評価、2025年8月時点、図1)。


図1 福島第一原子力発電所1~4号機の大気への放射性物質放出量(ベクレル/時)

時間の経過とともに、崩壊熱は大幅に減少している。そのため、原子炉への冷却水注水量は減らされている(2011年5月時点7~10m3/h→2026年1月時点1.3~2.5m3/h)。ただ汚染水中のトリチウム濃度は上昇傾向にある(図2参考)。1号機原子炉格納容器下部のサプレッションチェンバー(S/C)内の水位低下作業に伴い原子炉建屋側に漏洩した比較的濃度の高い汚染水の影響、汚染水対策により建屋内に流入する雨水や地下水が減少して汚染水の希釈度が減ったこと等が原因として考えられる。実施計画上、希釈前のトリチウム濃度が100万Bq/Lを超えた場合、処理水は放出できないが、この値にかなり迫っている。注視が必要だ。
使用済み燃料プールからの燃料取り出し状況は表1にまとめた。3・4号機では取り出しが完了した。1・2号機は準備中だ。なお6号機の使用済燃料の共用プールへの移送が4月16日に完了、5号機使用済燃料の共用プール移送を7月23日から着手した。
一日当たりの作業員の推移は図3に示した。2025年12月現在4,910人となっている。不適合案件報告数は減少傾向にある(図4)。

図2 汚染水のトリチウム濃度推移

図3 平日1日あたりの平均作業員数(実績値)の推移

図4 パフォーマンス向上会議で審議された不適合件数推移

●汚染水の状況
福島第一原発における汚染水対策は大きく分けて①建屋に流入する地下水の減少、②海に流出する汚染水の減少、③汚染水の有害度低減、に分けることができる。建屋流入量の減少は、上流側から(A)地下水バイパスで地下水を汲み上げて海に放水(26年2月5日現在1,020,696m3)、(B)福島第一原発1~4号機を囲う凍土壁(陸側遮水壁、全長約1,500m)を設置、(C)サブドレンで地下水を汲み上げて海に放水(2月4日現在1,982,752m3)、(D)舗装による雨水の土壌浸透抑制、を実施。海洋への汚染水流出対策については(A)海側遮水壁(鋼製)による地下水漏る海側遮水壁でせき止められた地下水の汲み上げ、などで対策している。こうした対策により、2014年5月に540m3/日だった汚染水発生量は、2024年度には70m3/日(平均的な降雨量の場合80m3/日)まで減少した。なお陸側遮水壁の設計寿命は6~7年で、2013年に設置した当初は、設計寿命までに建屋への地下水流入箇所の止水工事を行い、凍土は解凍する予定だった。設置から13年経つ今も止水はできず、撤去の見込みは立たないままだ。設備の老朽化も懸念される。
汚染水の有害度低減では、セシウムやストロンチウムを除去し、RO膜で不純物を取り除いた後、多核種除去設備(ALPS)で62の放射性核種を除去して、タンクに保管(1月22日現在1,253,996m3、ただし過去の設備不具合や運用方針等により告示濃度以上のものが64%)。2023年8月24日からALPS処理済みの汚染水海洋放出が始まり、2025年12月までに17回、計133,321m3が放出された。図5に放出回毎のトリチウム放出総量と発電所から3km以内の海水トリチウム濃度の最大値を示した。
それ以外に建屋内滞留水約14,790m3、Sr処理水等11,460m3、RO処理水5,637m3、濃縮廃液9,382m3などが存在する(1月15日現在)。表2にALPS処理水海洋放出に伴う主な放射性物質の放出量(トリチウム除く)をまとめた。炭素14で26.33億Bq、ヨウ素129で1.15億Bqなど、きわめて多くの放射性物質が放出されたことがわかる。
なおALPS処理水やSr処理水などが貯蔵されている1~4号機用貯蔵タンクの基数は1月15日時点で1,061基存在する。

図5 ALPS処理水放出実績

表2 ALPS処理水海洋放出に伴う主な放射性物質放出量(25年第6回放出まで)

福島第一原子力発電所 2025年8月~2026年1月までの事故一覧

(松久保肇)

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