朝鮮民主主義人民共和国の「水爆実験」に対する抗議(声明)
朝鮮民主主義人民共和国の「水爆実験」に対する抗議(声明)
2016年1月7日
原子力資料情報室
1月6日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、「水爆実験」と称する核実験を強行した。2006年10月9日、2009年5月25日、2013年2月12日に次いで4回目になる。金正恩第1書記は、「水素爆弾の爆音を響かせることができる強大な核保有国になった」と語り、国内外に威信を誇示する姿勢をしめした。核実験の自粛や核放棄を求める国際社会に反するこの暴挙は、とうてい許されるものではない。北朝鮮はさらに国際的孤立を深めることになるだろう。
国連安全保障理事会は緊急会合を開き、この核実験への対応を協議した。しかし、国連安全保障理事会の常任理事国であるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国は、いずれも核兵器を保有している。これらの国々による北朝鮮批判に大きな期待を寄せることはできない。日本は2016年から2年間、国連安全保障理事会の非常任理事国である。ヒロシマ・ナガサキを経験した被爆国として国連で積極的な核放棄への役割を果たすべきではないか。また、2008年12月以来開かれていない6ヵ国協議(北朝鮮、韓国、日本、アメリカ、中国、ロシア)を再開して、北朝鮮の核問題について協議するべきである。
一方、安倍首相は声明で、「日本の安全に対する重大な脅威であり、北東アジアや国際社会の平和と安全を著しく損なうもので、断じて容認できない」として、北朝鮮政府を強く非難した。
昨年の安全保障関連法で集団的自衛権の行使が可能となり、日米同盟に基づく自衛隊と米軍との連携が強化された。朝鮮半島有事など、「重要影響事態」での自衛隊の後方支援が定められ、弾道ミサイル警戒中の米艦防護も可能となった。今回の核実験は、集団的自衛権の名の下に行われようとしている武力行使のために格好の材料を安倍政権に与えることになる。北朝鮮の脅威を口実にした安全保障や軍事力の増強は許されない。安倍政権は核の抑止力や武力による安全保障政策ではなく、アジアの非核化に向けた行動を起こすことに力を注ぐべきである。
世界各地で広範な人々が戦後70年にわたって、核廃絶のために営々と努力をかさねてきた。核の「平和利用」と「核兵器」とは表裏一体であり、核兵器および核利用への道を否定しない限り、地球上に恒久的な平和は実現できない。北朝鮮の核実験は、ヒロシマ・ナガサキ以来の核兵器廃絶の取り組みに水をさす行為である。
原子力資料情報室は、北朝鮮の核実験に抗議するとともに、北朝鮮政府に対して直ちに核兵器開発を放棄するよう強く求めるものである。
以上