原子力資料情報室声明 高浜原発3号炉の再稼働に強く抗議する

高浜原発3号炉の再稼働に強く抗議する

2016年1月29日

NPO法人 原子力資料情報室

 

 関西電力は29日に高浜原発3号炉を起動させる予定だが、以下の理由からとても再稼働は認められない。東京電力福島第一原発の爆発事故の重大性と責任性を受け止めるなら、関電は高浜を再稼働せずに脱原発へと経営方針を改めるべきだ。

 高浜原発は免震重要棟による事故対処設備がなく、事故時の対応が十分に可能であるとは言えない。原子力規制庁に猶予期間の延長を働きかけるのではなく、積極的に免震重要棟の設置をすべきだし、すくなくとも、それが完成するまで再稼働しない姿勢を示すべきだ。

 さらに、敷地のスペースが狭く、重大事故が起きた時に放射能汚染水の垂れ流し状態になることは避けられず、また、避難計画の実効性のなさから、住民の大量被ばくが避けられない。

高浜原発3,4号機(撮影 片岡遼平)

 その結果として起こる事態に対応できる能力が関電にあるとは考えられない。例えば、福島原発事故が示すように住民に長期にわたる避難生活を強いることは必至であり、損害賠償責任を十分に果たす能力が関電にあるとは考えられない。

 高浜原発はプルサーマル燃料(MOX燃料)を装荷しているし、その燃料数を今後とも増やしていく計画だ(3分の1炉心まで)。しかし、これまでの議論で明らかなように、MOX燃料は溶融温度が低下する上に、制御棒の効きも低下する。このことを重大事故と重ね合わせて評価すべきところ、関電も原子力規制委員会も評価対象としていない。このことは重大な欠陥である。さらに、フランスのメロックス工場での製造法が、日本が求めるMOX燃料の品質を満たしている保証はない。関電はデータを公開してこの点の説明を行い、住民らの疑問に積極的に答えるべきだ。

 1月25日に住民527名が原子力規制委員会に異議申し立てを行ったが、それは蒸気発生器の耐震安全性評価に求められる安全余裕を削って、高浜3号機が廃止にならないような数値設定を行ったことへの異議であった。

 水素再結合装置(イグナイター)への疑問も出されている。装置の数を増やしたものの、格納容器内の複雑な構造の中で装置が機能せずに局所的な水素爆発から放射能漏えいにつながる恐れがある。

 再稼働の結果、新たに発生する使用済み燃料、使用済みMOX燃料への根本的な対応を決めていない。バックエンドを棚に上げたままの再稼働は無責任である。

 こうしたさまざまな事項を考えれば、とても再稼働できる状況にはなく、関電はむしろ脱原発へ経営方針の転換を進めるべきだ。

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