原子力委員会は何と言おうとも、MOXは核不拡散性に優れていない

原子力委員会は何と言おうとも、MOXは核不拡散性に優れていない

2007年2月20日に原子力委員会の政策評価部会が「原子力政策大綱に示している原子力の平和利用の担保に関する基本的考え方の妥当性の評価について(案)」を議論した。気になるところがたくさんあるが、MOX(プルトニウムーウラニウムの混合酸化物)の核兵器転用の可能性を否定することに原子力委員会がいかに苦しんでいるかを証明する一カ所だけをここで取り上げたい。

2006年11月17日に新潟市で原子力委員会政策評価部会は「ご意見を聴く会」を開催した。参加者の何人かが、政府等の主張と違ってMOXは核不拡散性に優れていないと指摘した。つまり、IAEA(国際原子力機関)が採用している保障措置基準においては、保障措置上の査察業務量を決めるときの目安とされている「適時性目標」に関して、プルトニウムとMOXとは同じ転換時間(異なった形態の核物質を核爆発装置の金属構成要素に転換するのに必要な時間)のカテゴリーに分類されている。この事実は明らかにMOXが核不拡散性に優れていないことを証明するので、「ご意見を聴く会」でうまく答えられなかった。核物質管理センターの代表(内藤香氏)は正直に以上の事実を確認しただけである。

そのままに放っておいては駄目だということで、原子力委員会の事務局は「妥当性の評価(案)」にMOXを正当化しようとする文言を加えた。しかし、読んでみれば、MOXの核不拡散性をアピールすることにいかに無理があるかがよく分かる。2月20日に提出された「妥当性の評価(案)」にこう書いてある:
「なお、IAEAが採用している転換時間は、酸化プルトニウム及びMOXについては1?3週間となっていますが、MOXの場合はこの範囲の上端に、プルトニウム単体の場合は下端に位置する傾向にあるとされている。」
核爆発装置の金属構成要素に転換する時間が1週間から3週間まで増えたからと言って、いったいだれが安心するだろう。

もともと、日本のMOXに基づいている再処理計画の核不拡散性論には物理学的な根拠がないので、今まで原子力委員会は、アメリカをはじめとする国際社会の理解を得たから大丈夫だと言って来た。しかし、その理解の根拠は、日本の粘り強い外交のためにアメリカが妥協したということに過ぎない。そして、今まで物理的な矛盾が拭えなかったため、新しい言い訳を求めてまたアメリカに目を向けた。2月20日に提出された「妥当性の評価(案)」にこう書いてある:
「さらに、最近、米国が提案しているGNEP(グローバル原子力パートナーシップ)のトラック1で採用しようとしている再処理技術については、製品がMOXであることが用件とされています。これは、MOXがプルトニウム単体よりは核不拡散性に優れているという判断に基づくものです。」

実は、ブッシュ政権が2006年2月に提案したGNEPは核不拡散性に優れていないと多くの学者が指摘している。しかし、原子力委員会が言う「製品がMOXであること」は、最初に発表されたGNEP案にあったものではなく、原案はあまりにも非現実的であり、実現性があるとしても何十年も先になるので、もっと近い将来に採用できる技術から始めようという考えから出た案の一部である。結局、30年前に日本がどうしても再処理計画を進めたいからアメリカを説得したごとく、今ブッシュ政権はどうしてもGNEPを進めたいから核不拡散性の物理学的な根拠がなくても押し進めるという考え方から生まれた案である。

六ヶ所再処理工場で作るMOX製品であれ、GNEPのトラック1の中で提案されているMOX製品であれ、核不拡散性に優れていない。原子力委員会は正直にそのことを認めるべきである。

フィリップ・ワイト