原子力資料情報室声明:MOX燃料は装荷せず、そのまま廃棄物とするべき
NPO法人原子力資料情報室はMOX燃料を積んだ輸送船が関西電力高浜原発へ近く到着することを受けて、下記の声明を発表しました。
MOX燃料は装荷せず、そのまま廃棄物とするべき
2013.6.26
NPO法人 原子力資料情報室
共同代表 山口幸夫、西尾漠、伴英幸
関西電力のMOX燃料輸送に抗議する。関電は、国内での再処理-プルトニウム利用から撤退し、すでに抽出されたプルトニウムについてはプルサーマル以外の処分策、すなわち廃棄物としての処理・処分策を追求するべきである。
今回のMOX燃料輸送は「東北地方太平洋沖地震後の状況を踏まえ、延期」(関電プレスリリース)されていたものである。それを、この時期に実施することは、原子力規制委員会による新規制基準が7月から発効するのを睨んでのもので、高浜原発の運転再開を強引に迫る意味合いではないか。しかし、高浜原発の運転再開へ向けた合意は全くない。大飯原発の断層問題に示されたように、なりふり構わぬ強引さで運転再開を強行することは言語道断で、とうてい認められない。
過去のプルサーマルの安全審査や地元合意は、福島第一原発事故によって、とうに吹き飛んでしまっている。私たちは原発の再稼働を行うべきではなく、ましてやプルサーマルを行うべきでもないと考える。しかし、それでも関電が実施を推し進めようとするのであれば、まずは、改めて審査のやり直しを求め、その結果に基づく地元合意を取り直さなくてはならない。福島原発事故を受けての安全対策強化の中にプルサーマルをきちんと位置づけ、プルサーマル燃料を考慮した過酷事故対策を明らかにすべきである。
関電はこうした対応すら行おうとせず、従来通りの対応で終始するのは、福島原発事故を対岸の火事にしかとらえておらず、なんら反省していない証左であり、蛮行と言わざるを得ない。
加えて、プルサーマル後の使用済みMOX燃料をどう処理・処分するのか、六ヶ所再処理工場に続く第二再処理工場の建設などは到底考えられず、結局、直接処分をするしかない。使用済みMOX燃料は使用済みウラン燃料よりもはるかに長い期間管理し続けなければならないし、処分するにしてもさらに厄介である。関西電力は発生者として、責任をもってこの厄介な使用済みMOX燃料に対応しなければならないが、そのような姿勢を全く示さないばかりか、国へ押し付けようとさえしている。実に無責任な対応の繰り返しである。
2011年3月の未曾有の原発事故を真摯に捉え、プルサーマル炉心の過酷事故時の対応と責任を冷静に推し量るなら、明らかにMOX利用に合理性がないと理解するはずだ。燃料使用などあり得ないはずである。