新潟県知事宛て要請文

新潟県知事泉田裕彦 様

柏崎刈羽原発の営業運転入りは国民の不安をいっそう高めます
営業運転入りを認めず、原因究明と燃料交換を求めてください

中越沖地震の影響を受けた柏崎刈羽原発の健全性をめぐって貴小委員会において精力的に議論されていることに敬意を表します。
同原発の健全性には新潟県民のみならず多くの市民が関心を寄せ、この行方を見守っていることと存じます。小委員会での議論をうかがっておりますと、未解決の問題が尚あると言わざるを得ません。そのひとつは、委員から提案されています佐渡海盆東縁断層の存在です。起きるかも知れない最大の地震への対応が求められていることを考えれば、東京電力はこれを想定した耐震性を確立する必要があるはずです。ところが、国も東京電力もこの存在を否定しています。いまひとつは、7号機の再循環ポンプに関するものです。安全性を考えればどうして1%の減衰率で評価し、耐震性を確立しないのでしょうか? 
 このような原発の耐震安全性への疑問がある中で、今度は、試験運転中の7号機で希ガスの漏えいが起こりました。
 試験運転中に放射性希ガスのモニタ指示値の上昇に端を発して、東電は原因究明を行ない、7月30日に燃料棒の微小な穴あきが原因だとする調査結果を公表しました。これによれば、異物の混入により燃料棒被覆管を傷つけたことが原因でピンホールが空いたとしています。
 しかし、この原因は東京電力の報告書にあるように、あくまでも消去法に基づく「推定」であり確定したものではありません。また、地震の揺れに対しては計算と外観検査による排除であり、十分に信頼できるものでもありません。代表的な集合体の目視検査で微小な傷が分かると断言できないのではないでしょうか。
 仮に異物の混入が原因であるとしたら、異物混入防止の対策がとられた集合体になぜ起きたのか? デブリフィルターの目をくぐる微小な異物が原因となりうるのか? 地震の揺れで上部から異物が混入した可能性はあるのか? こうした状況では、異物の発見こそ優先されなければならないはずです。どのような異物がなぜ混入したのかの原因こそ運転に先立って究明されなければなりません。燃料集合体内に留まっていれば傷の拡大の恐れが残ります。流れ去ったのであれば、他の集合体に傷をつける恐れがあります。
 このような燃料棒破損の拡大要因を残したまま、営業運転入りすることは県民のみならず、国民の不安をいっそう高めると言わざるを得ず、とうてい認められません。東京電力は原子炉を止め原因究明と破損燃料集合体の交換を行なうべきです。
 夏場の電力需要の増加時期を迎えて、貴職が置かれた状況は決して容易ではないと推察いたしますが、県民の安全・安心のため、営業運転入りを認めず、徹底した原因究明と燃料交換を求めてくださいますようお願いいたします。

2009年8月3日
NPO法人原子力資料情報室 共同代表 西尾漠、山口幸夫、伴英幸
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