「政権交代」で原子力は?
「政権交代」で原子力は?
衆議院議員選挙で民主党が圧勝し、「政権交代」が実現することとなった。原子力政策にも変化がもたらされるはずだが、その姿は必ずしも定かではない。民主党内には(自民党内もそうだが)原子力についてさまざまな考えがある。どう変わるかは、私たちの側からの、真剣で世論を味方にしうる理にかなった訴えかた次第だろう。
さしあたって問題となるのは、来年度予算の各省概算要求だ。運転を再開したところで成果の望めない「もんじゅ」に200億円もの予算をつけるのは、泥棒に追い銭と誰にでもわかる。まっさきに削られてよい、むだな予算である。夢物語の高速増殖炉実用化のための予算なども、見直されてしかるべきだ。当然ながら原子力政策大綱の抜本的な改定が日程に上ることとなろう。
民主党の政策集「INDEX2009」を見ると、「原子力利用については、安全を第一としつつ、エネルギー安定供給の視点もふまえ、国民の理解と信頼を得ながら着実に取り組みます」とあった。安全第一も安定供給も国民の理解と信頼も、すべて現在の原子力利用には欠落しているものだから、字義通りに取り組むなら、それだけでずいぶんと様変わりすることになる。
安全第一に関連しては「国家行政組織法第3条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設する」という。現在の原子力安全委員会は「原子力の研究、開発および利用を推進する」と目的に定めた原子力基本法により設立されている。その根本からの変革が必要となる。経済産業省のもとで推進行政の風下に立たされている原子力安全・保安院は、どうするのか。同院と委員会のダブルチェックは維持するのか。原子力委員会の存在は現行のままでよいのか。慎重かつ大胆な議論を期待したい。
やはり慎重かつ大胆な議論が期待されるのは、国と事業者の責任のあり方についてだ。「INDEX2009」には「原子力発電所の使用済み燃料の再処理や放射性廃棄物処分は、事業が長期にわたること等から、国が技術の確立と事業の最終責任を負うこととし」と書かれている。これは一歩誤ると事業者の無責任体質を助長しかねない。
事業の責任は、もとより安全確保をふくめて事業者にある。事業の失敗が原子力災害として、あるいは経済的負担として顕現しないよう規制するとともに、万一の事態にも危険を回避するのが、国の責任となる。
その意味では「最終責任」と呼べるが、事業者を免責するものでないのは言うまでもない。
具体的には、安全第一と相容れない運転管理、定期検査の期間短縮と間隔延長、経年化炉の寿命延長、経年化炉での出力アップなどを改め、厳正であり真に合理的な規制がめざされることを、これも期待したい。
(西尾漠)
民主党政策集 INDEX 2009_エネルギー
www.dpj.or.jp/policy/manifesto/seisaku2009/17.html#