日韓原子力協力協定について

2010年12月24日
日韓原子力協力協定について

12月20日、東京において「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の協定」への署名が、前原誠司外務大臣と権哲賢駐日韓国大使との間で行われました。この協定に先立って9月10日にはアンマンで、ヨルダン・ハシュミット王国政府との間の協定に両国政府が署名しています。両協定を比べてみると、残念ながら日韓原子力協力協定は、平和利用の担保に関して日本ヨルダン協定より後退していることを否めません。
 日本ヨルダン協定では、第二条3項で「ウランの濃縮、使用済核燃料の再処理、プルトニウムの転換及び資材の生産のための技術及び設備並びにプルトニウムは、この協定の下では移転されない」と明記しています。これに対し日韓協定では協定本文には記述がなく、「合意された議事録」で、「移転されないことが確認される」と前原大臣と権大使との間で了解されたことを記録する形にとどめています。
 また、日本ヨルダン協定の第九条では「この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質は、ヨルダン・ハシュミット王国の管轄内において、濃縮され、又は再処理されない」と、無条件で明記しています。ところが、日韓協定の第九条では「供給締約国政府の書面による事前の同意を得ることなく」と条件をつけ、書面による事前の同意があれば濃縮も再処理も可能となっていることは、核拡散防止の上で大いに問題があります。
 さらに施設の安全性について、日本ヨルダン協定の第六条2項では「両締約国政府は、この協定の適用を受ける核物質、資材、設備又は技術が置かれ又は用いられる施設について、当該施設の安全性を確保するための措置の実施に関する相互に満足する取極を行うことができる」とされています。日韓協定には、この項はありません。
 このように先に署名された協定より後退した協定となっていることに、私たちは失望し、今後締結されようとしている同様の協定がいっそう後退することに強い懸念を表明します。私たちは、核拡散と放射能災害の危険を拡大するものとして、原子力協力自体に反対の考えを持っていますが、それでも協力協定が結ばれるのであれば、日本ヨルダン協定を最低限の基準とし、同協定になくて米とUAEとの協定にある再処理・濃縮の全面禁止のような、より核拡散防止につながる記述を盛り込むことを求めます。

認定特定非営利活動法人 原子力資料情報室
共同代表 西尾漠
国際担当 フィリップ・ワイト
TEL.03-3357-380