「核のゴミ地層処分問題の全国声明に取り組む会」世話人会声明文「南鳥島での核のゴミの地層処分の問題点について」

「核のゴミ地層処分問題の全国声明に取り組む会」世話人会が2026年5月1日付で発表した声明文「南鳥島での核のゴミの地層処分の問題点について」をご紹介します。

※この声明文は原子力資料情報室が連名で公表したものではありません。ご留意ください。

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はじめに

2026 年 3 月 3 日に経済産業省(経産省)は、東京都小笠原村に対して、南鳥島における高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分地選定にむけた文献調査の実施を同村に申し入れた。自治体からの発議を欠いた、国による「申し入れ方式」の採用は、初めてのことである。その後、小笠原村長の事実上の容認の結果、4 月 21 日に、経産省は、南鳥島での文献調査を行うことを正式に決定した。核のゴミの地層処分は、地下 300m 以深に埋めることを「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)として定めているが、核のゴミが安全なレベルになるまで 10万年程度を要するため、日本のような変動帯において、その間の安全性の保障は極めて困難である。

南鳥島は地層処分の適地なのか

2023 年 10 月 30 日に、300 名を超える地学の専門家の有志が、「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない-現在の地層処分計画を中止し、開かれた検討機関の設置を-」との声明を出した注1)。これは、表題にもある大変動帯の日本列島を念頭に置いたものであった。一方、 南鳥島は、変動帯の日本列島から約 2,000 km も離れ、太平洋プレート上に位置している。変動帯 特有の地震・火山活動などが少なく、地層処分地として日本で唯一の安定な場所との主張もある。 確かに南鳥島は、地震や火山は少ないと想定される。しかし、最近の研究では、南鳥島周辺でプ チスポット火山の存在が確認され、マグマ活動が考慮すべき今後の重要な研究課題として浮上している。 さらに、南鳥島における地層処分の根本的な問題として、地震・火山だけでなく、地層処分地 としての地質・岩盤特性に注目することが重要である。 以下に、上記の声明の趣旨を補足する意味で、地層処分地の適性を左右する地質・岩盤の特性 について解説し、南鳥島の地層処分地としての適性に重大な問題があることを示す。

南鳥島周辺の地形地質環境と地層処分地としての問題点

南鳥島は、面積約 1.9 km2、海抜 10m以下の三角形の形をした小島であり、主に離水したサンゴ 礁からなる。周辺は水深が 5,000~6,000m の平坦面が広がっており、南鳥島は高さ約 5,000m 以 上の巨大な海山の頂部に位置しているのである。周辺海域は急傾斜の海底地形でおおわれており、 なかでも三角形の東辺は、北北東-南南西方向に直線的に延びた海底の尾根部に連なり、その東 側は急傾斜面をなし、山体崩壊堆積物と思われる地形が認められる。 この巨大海山は、1億数千万年前(白亜紀)に活動した海山と考えられていたが、最近の研究 で、約 4000 万年前(古第三紀)の玄武岩が発見され、白亜紀の古い火山をおおって新たに成長し た火山体であることがわかってきた(Hirano et al. 2021 の論文による注2)。

南鳥島の火山活動は古第三紀に終了しているが、本島近海においてプチスポット火山と呼ばれる特異な海山が発見されており、古くても 300 万年前以降に火山活動があったことが分かってきた(Machida et al. 2025 の論文による*注 3))。この火山活動は海洋プレートのたわみ上で生じたと考えられており、南鳥島自体がこのたわみの上に位置している。この調査研究はまだ始まったばかりであり、今後の研究成果が待たれるが、第四紀(約 258 万年前以降)のプチスポット火山が存在する可能性がある南鳥島周辺は、地層処分地としての適性に重大な影響がおよぶことを考慮しなければならない。
最終処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)が想定する地層処分地は、地下300~500mでの計画であるが、南鳥島において、その深度では、地下最大 1000mに達するサンゴ起源の石灰岩が対象岩盤となる。石灰岩の特徴として、熱帯・亜熱帯に属する高温多湿の南鳥島においては、二酸化炭素を含む雨水や土壌による溶解で容易に空洞が作られ,それが水の通路となって漏水や湧水を引き起こすことがある。石灰岩の空洞は、数百m以上の深部でも地下カルストとして作られることが知られており、その場合、地表水だけでなく、過去の火山活動に伴う酸性熱水が原因となり、その空洞は崩壊する危険性もある。南鳥島が作る巨大海底海山が急峻な傾斜面をなし、山体崩壊が生じている可能性もあることを考慮すると、地下空間に埋設した核のゴミ(ガラス固化体)に接触した地下水や海水とともに放射性物質が漏れ出し、さらには周辺海域に流出して海洋汚染を引き起こし、漁業への影響や、太平洋の島嶼国への深刻な環境破壊がおよぶ可能性がきわめて高い。

なぜ南鳥島なのか-地層処分問題の解決に向けて

今回、経産省は小笠原村への申し入れについて、南鳥島が、「核のゴミ」の地層処分地として、「科学的特性マップ」で適地にされているとしか説明していない。国が、実現可能性の高い「科学的有望地」と判断したのか否かも含め、「なぜこの場所なのか」の詳細な説明が求められる。もし、南鳥島が変動帯に属していないことが選定理由であるとすれば、上述した南鳥島の地形・地質的な状況をほとんど考慮しないあまりにも安易な判断であり、文献調査をするまでもなく不適地であることは明白である。
日本における地層処分問題の解決の基本は、2012 年の日本学術会議の「回答」に立ち返り、核のゴミを地下 300m 以深に埋める地層処分を前提とした最終処分法の廃止と、暫定保管を基本とした政策枠組みの再構築を行うべきである。その際、議論に関しては、国の主導による委員会等の組織だけでなく、多くの地球科学に携わる専門家や市民の意見を交えた中立で開かれた第三者機関を設置し、ひろく国民の声を集めて結論を導く、熟議民主主義を基本とするやり方を進めるべきである。

*注 1) www.chichibu.ne.jp/~sekine-kz56/zenkokuseimei/index.html
*注 2) Hirano et al. Island Arc, 2021. doi.org/10.1111/iar.12386
*注 3) Machida et al. Scientific Reports, 2025. doi.org/10.1038/s41598-025-15806-y

連絡先

赤井純治(ja86311akai@gmail.com)
岡村 聡(okamura.satoshi@s.hokkyodai.ac.jp)
関根一昭(sekinegml68@gmail.com)

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