基本情報

編著 反原発出前のお店:編, 高木仁三郎:監修
発行 七つ森書館
発行日 2011年4月
定価 2,000円+税
会員価格
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概要

原発についての素人が、自分の言葉で周囲に伝えていくために始まった高木仁三郎の講義録。原子力発電の仕組み、放射能と放射線、原発事故の影響、核燃料サイクル、プルトニウム、使用済み核燃料の行方、廃炉の問題、原発に頼らないエネルギーなど、原発問題の基礎からわかる本。

追加情報

まえがきにかえて

「出前のお店」とは ― まえがきにかえて(三枝秀晴)

 一九八六年、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所4号炉が出力制御不能になって、“核暴走”事故を起こしました。ありえないとされていた原子炉の炉心溶融にまで至った一九七九年のアメリカ・スリーマイル島原発事故の規模を大きく超えるもので、壊滅した炉から大量の“死の灰”が放出し、「広く、長く、遠くへ」放射能汚染をもたらしたのです。そしてこの悲惨な事故の影響は、世界中の多くの人々に、「消せない火」(原子力)を扱うことは本来人類には許されざるべきではないこと、「原発は危険だけれど必要悪」といったエネルギー論議が誤りであることをはっきり示したのです。

 ところが、「核の平和利用として」三六基(八六年当時、九二年末現在四三基!)の原発をかかえる日本政府は「炉型の違い、技術の差」があるから「日本の原発は安全」と、事故への不安や高まる反原発世論を鎮めるのにやっきとなりました。しかし、国や電力会社が叫ぶ安全“保証”は、現実に起こる事故によって常に覆され続けています。東京電力福島第二原発3号炉、関西電力美浜原発2号炉の事故というように……。

 あいつぐ「ガケっぷち」の事故を、「環境にまったく影響はなく、多重防護が功を奏した“事象”」と片付けて、日本は核燃料サイクル施設建設、商業炉・高速(増殖)炉におけるプルトニウム利用につっ走ろうとしています。アメリカ・旧ソ連の核弾頭のプルトニウム専焼処分まで引き受けるといいだす政府の核エネルギー政策・原子力利用を、「やはり次は日本だった……」という事態に至る前に変更させなければならないと思います。

 その思いを非専門家、いわば原発についての素人が、自分の言葉で周囲に伝えていく― その活動を「反原発出前のお店」と名付けました。

(中略)

 この本は、一九九一年五月から六月に行われた第四期講師養成講座の高木校長の全講義録です。講義は、各章のテーマごとに毎週一回行われましたが、第6章は店員の議論を中村時久と三枝がまとめたものです。第7章はプルトニウム国際会議のための勉強会での高木校長の話を収録しました。また、本文にあるコラムは、出前の経験をふまえて店員それぞれが手分けして書いたものです。

 養成講座全記録は、いわば出前の店員のトラの巻。多くの人々が手にして、向こう三軒両隣り、あるいは学校や職場で、さりげなく、しかししつこく、ミニミニ反原発・脱原発の出前を始めてくれたらと思います。「読んだけど、ここのところ、よくわからない……」。そんな時は、そうっ! 反原発出前のお店に“出前の注文”をしていただければいいのです。

もくじ

「出前のお店」とは ―まえがきにかえて  三枝秀晴

1 原子力発電とは
  1 原子力発電の基本的な仕組み
  2 原子力発電の基本的な問題点
  3 加圧水型原発(PWR)の問題点
  4 沸騰水型原発(BWR)の問題点
  5 放射能と放射線

2 原発事故
  1 事故の基本タイプ
  2 TMI事故
  3 チェルノブイリ事故
  4 福島第二原発3号炉
  5 美浜原発2号炉事故
  6 国の事故評価

3 原発事故の影響
  1 放射線の人体への影響
  2 原発事故時の放射能放出
  3 チェルノブイリ事故の影響
  4 原発事故が起きたら

4 核燃料サイクル
  1 核燃料サイクルとは
  2 核燃料サイクルのひろがり
  3 プルトニウム
  4 放射性廃棄物

5 六ヶ所村計画
  1 六ヶ所村計画の概観
  2 ウラン濃縮工場
  3 低レベル放射性廃棄物貯蔵センター
  4 再処理工場
  5 廃炉の問題

6 エネルギー問題
  1 エネルギーのとらえ方
  2 エネルギーの利用
  3 わずか五〇年の間に急上昇
  4 廃棄物で決まるエネルギー利用の上限
  5 省エネルギー??高効率化と総量規制
  6 「原発はクリーン」というすりかえ論議のウソ
  7 エネルギーの大量消費は環境破壊をまねく

7 プルトニウム社会の入り口に立って

あとがき