新刊 『プルトニウム発電の恐怖2』

新刊『プルトニウム発電の恐怖2』プルトニウム発電の恐怖2
小林圭二・西尾漠 編著
発行:創史社
発売:八月書館
1600円+税

《もくじ》
まえがき
1部 プルサーマルの不要性と危険性
プルサーマルのなぜ 西尾 漠
プルサーマルは何が問題か 小林圭二

2部 プルサーマル計画で狙われる現地
[福島]福島第一原発で進められていたプルサーマル 斉藤春光
[新潟県柏崎刈羽]一刻も早くすべての原発を廃止せねばならない 武本和幸
[島根]プルサーマル計画を止めなければならない 芦原康江
[佐賀県玄海]「やらせ」でゴマカシ続ける九州電力 満岡 聡
[静岡県浜岡]廃炉は浜岡から 安楽知子
[福井県高浜]やがて消え行く高浜3、4号機プルサーマル計画 小木曽美和子
[愛媛県伊方]伊方原発3号炉でプルサーマルは中止を 近藤 誠
[青森県六ヶ所]超危険地帯の青森でプルサーマル 山田清彦
[北海道泊]未来への「うねり」を 斉藤武一
[宮城県女川]撤回すべきプルサーマル計画 篠原弘典
[青森県大間]大間原発で超危険なフルMOX計画 竹田とし子
[茨城県東海]東海第二原発におけるプルサーマル導入の動き 相沢一正
[志賀]プルサーマルの前に志賀原発の廃炉を目指して 中垣たか子
あとがき

《まえがき》

 一九九七年の一月、突然、新聞紙上に全電力会社のプルサーマル導入計画が公表されました。それからわずか三カ月の間に、通商産業省(現・経済産業省)と科学技術庁(現・文部科学省)が福井、福島、新潟三県へ協力申し入れ、沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の各盟主東京電力と関西電力が県と立地町村へ申し入れ、はては橋本首相みずから三県知事と会談し申し入れるなど、プルサーマル導入へ向けてめまぐるしい動きが起こりました。それまで三十数年間、事実上放置されてきた国策の突然の異常な動きを怪しんだ人は少なくなかったでしょう。

 しかし、その後関西電力のプルサーマル用MOX燃料データねつ造、過半数が反対した刈羽村住民投票、東京電力の原発欠陥隠し、関西電力美浜3号炉死傷事故など事故や不祥事が相次いで起こり、先陣を切るはずだった東京電力、関西電力の動きは一〇年近く中断を余儀なくされました。その間、国の強力なてこ入れによって他社の準備が進み、二〇〇九年一二月の九州電力玄海3号炉を皮切りに、翌年、四国電力伊方3号炉、東京電力福島第一3号炉、関西電力高浜3号炉がプルサーマル運転を開始しています。

 プルサーマルとは、プルトニウムで燃料を作り、今の原発(軽水炉)で燃料の一部として使うことです。その計画については、主に危険性に注目が集まっています。プルサーマルによって原発の危険性は確実に増大します。しかし、問題は危険性だけにとどまりません。国際道義上の問題はより基本的です。

 プルトニウムはもともと地球にありませんでした。それが最初に人の手で作られたのは原爆を作るためです。人類初のプルトニウム利用は、第二次大戦中、アメリカが長崎に落とした原爆でした。一瞬にして数万の住民が殺害され、最終的に約十万人が犠牲になります。しかし、戦後の世界はその未曾有の犠牲よりも破壊力の巨大さに注目しました。大国は熾烈な核兵器開発競争を繰り広げ、アメリカ以外にソ連、イギリス、フランス、中国が相次いで核を保有するに至ったのです。

 核保有国の増加は保有国自身の恐怖を増大させました。核保有五カ国は、「平和利用」技術と物資の供与を見返りに未保有国に核開発を断念させ、新たな保有国の誕生を阻止しようとしました(核不拡散条約(NPT))。

 プルトニウムは原子炉と再処理工場によって製造されます。原子炉と再処理は原爆を作るために開発された技術で、のちに原子炉が原発の熱源に、再処理施設が高速増殖炉用燃料製造に転用されました。しかし、核放棄の見返りであったはずの「平和利用」が、皮肉にも核兵器の拡散をもたらしました。軍事利用と「平和利用」との間に技術的な違いがないからです。インドとパキスタンは、「平和利用」によって原爆保有に成功したのです。

 核拡散の動きは国際的な「核の闇市場」に発展し、逆にイラクは偽の情報によって核開発の濡れ衣を着せられ、アメリカに武力征服されてしまいました。そのアメリカに「ならず者国家」と名指しされた北朝鮮とイランは、対抗するため核開発を急ぎ始めました。激しい攻防は、連日新聞、テレビを賑わせ、核疑惑をめぐり世界の緊張が非常に高まったことは記憶にあると思います。高速増殖炉では、日本に先行していたアメリカ、イギリス、フランス、ドイツのすべてが開発から撤廃しています。

 プルサーマルからの撤退も相次いでいます。詳しくは本書をご覧下さい。今や世界のすべての国がプルトニウム商業利用の中止や縮小へと向かっています。近年、アメリカが「プルサーマル」を始めたと言われています。これは核兵器から解体されたプルトニウム焼却が目的ですから、軍事利用の縮小であって商業利用につながるものではありません。資源を理由とする日本のプルサーマルとは同一視できません。

 日本だけが世界の流れに逆らい、プルトニウムの大量利用、大量流通に踏み出そうとしています。プルサーマルが始まると、事故や核拡散の恐れが格段に高まります。日本がそんな時代に入ることをどの国も望んでいません。イランの主張に見られるように、日本のプルサーマルが他国に核開発の口実を与えることは明らかです。プルサーマルは、必要性や安全性以前に国際道義上許されない行為です。

 プルサーマルは全体を見なければ、問題の本質が見えてこないでしょう。本書では必要性と危険性の問題が扱われます。必要性がなければ、危険性を論ずる以前にプルサーマルの意味はなくなりますから、まず必要性の問題をキチンと考えましょう。そのうえでプルサーマルの危険性とはいかなる性格のものか考えたいと思います。忘れないでほしいことは、プルサーマルをやろうがやるまいが、今の原発が抱える巨大な危険性はいささかも変わらないということです。

 二〇一一年三月一一日、東日本大震災を引き金に、東京電力福島第一原発1号炉から4号炉で爆発を伴う未曾有の大事故が発生しました。折しもプルサーマルの3号炉は運転中でした。

 外から見て、3号炉の爆発の様相が際立っていたことと、重くて遠くに飛ばないと言われてきたプルトニウムが、四五キロ離れた飯舘村で検出されたことから、プルサーマルとの関係を疑う話も聞かれます。また、その組成から原子炉起源のプルトニウムと見られますが、今のところそれ以上の情報がなく、解明は今後の課題です。

 本書は、各地でプルサーマル反対運動を必死で闘っている皆さんに支えられています。各地からの熱いメッセージを聞いて下さい。プルサーマルの知識だけでなく、きっと、何をしたらいいか突き動かされるものを感じ取られることでしょう。なお、本書は『プルトニウム発電の恐怖』の続編、増補改訂版です。冒頭の小林、西尾原稿は前回の原稿に多少の手を加えただけであることをお断りしておきます。

二〇一一年一一月四日 小林圭二

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