伴英幸『原子力政策大綱批判 策定会議の現場から』

原子力政策大綱批判
策定会議の現場から

伴英幸(原子力資料情報室共同代表)

七つ森書館
2500円+税

原子力資料情報室からもお求めいただけます。ご一報ください。

→AMAZONで購入する
www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822806189/

 二○○五年一○月、日本の原子力政策の基本的考え方がまとまった。この新しい考え方は原子力政策大綱と呼ぶこととなった。政策の審議は原子力委員会が設置した新計画策定会議で行なわれた。その会議に一員として参加して議論に加わってきた。

 委員として、三三回の策定会議と六回の小委員会に委員として出席したが、初体験でもあり、緊張の連続で、気の休まることのない時間であった。渦中にあるときにはずいぶんと長く感じられた委員活動だが、振り返ってみると、あっという間のできごとだったような感覚だ。脱原発の立場から十分に主張できたかどうか、精一杯やったつもりだが、思い返せばあれもこれもと言い尽くせなかったことが頭の中を駆け巡る。

 なお、毎回の審議に事務局から提出された資料、委員の意見書、議事録などは、原子力委員会が開催したご意見を聞く会の記録などとともに、同委員会のホームページで公開されている。また、筆者が月ごとに会議の様子を記した策定会議月誌は原子力資料情報室のホームページで見ることができる。

 原子力政策を決定する場に委員として参加することになるとは夢にも思わなかったが、偶然のいたずらか、体験することなった。これを個人の中に留めておくのはもったいない、筆者が垣間見た現場や体験をまとめることを通して、少しでも多くの人が日本の原子力政策について考えるきっかけになればと思い、本書をまとめることにした。(伴)

もくじ

はじめに―新計画策定委員になって

第1章 原子力委員会の任務

    公平な人選を求める

第2章 「原子力長期計画」から「原子力政策大綱」へ

    改名はなぜ行なわれたか
    閣議決定の必要性
    少数意見を提出

第3章 原子力政策大綱の構成

    基本目標と共通理念
    強調された安全確保の重要性
    少数意見の概要

第4章 3割から4割を原子力発電に依存し続ける

    結論にあわせる条件設定
    将来の予測はあたったためしがない
    2030年のエネルギー需給展望
    原発は温暖化防止に役立たない
    放射性廃棄物も二酸化炭素も削減しよう
    老朽原発を苛酷に利用するための危険な諸施策
    欠陥原発の運転を許す維持基準
    高経年化対策の危険性
    見直すたびに下方修正の原子力発電計画

第5章 「夢」の高速増殖炉

    かつても今も「夢」の原子炉
    一周遅れのトップランナー
    机上の空論、二○五○年の実用化
    組織維持のための「実用化戦略調査研究」
    高速増殖炉が有利になる条件とは
    高速増殖炉の時代に燃料プルトニウムが不足する
    プルトニウムの倍増時間
    高速増殖炉か高速炉か
    もんじゅ運転再開の空疎な目的
    「もんじゅ」改良工事で安全は確保できるか

第6章 焦点の核燃料サイクル

    抽出された四つの選択肢
    六ヶ所再処理工場の稼働の是非が焦点
    プルトニウムはプルサーマルで消費
    総合評価とその結果
    安全規制に従うのだから選択肢に大差はない?
    地層処分技術はどちらも未熟
    査察を受けるのだから選択肢に差はない?
    ニューヨークで六ヶ所再処理工場の無期延期を求める
    プルトニウムの多国間管理構想
    「余剰プルトニウム」を持たない国際公約が崩れる
    放射性廃棄物による被ばく評価
    放射性廃棄物に関する新たな提案
    直接処分コスト
    隠していた過去のコスト試算
    技術検討小委員会の設置
    直接処分コスト
    シナリオ間のコスト比較
    スティーブ・フェター氏を招いて
    政策変更コスト
    再処理は既得権
    再処理積立金制度の導入

第7章 斜陽化すすむ原子力産業

    斜陽化すすむ原子力産業
    立地地域との共生
    「国民の信頼」と「国民参画」

あとがき
参考資料