書籍『毒砂』につきまして

原子力資料情報室通信537号で紹介いたしました書籍『毒砂』が有償にてお求めいただけるようになりました。

当方にて頒布いたしました際にお届けが叶わなかった皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。

以下のリンクよりお求めいただけます。

 

・原子力資料情報室の発行販売物ではございません。

Amazon.jpでのみお求めいただけます。

 

(またはAmazon.jpにて「毒砂 安西宏之」で検索)

 

 

【原子力資料情報室通信537号(2019年3月号)資料紹介より】

『毒砂』(安西宏之)

 東京電力福島第一原発の事故によって郡山市はどれほど放射能で汚染されたのだろうか。阿武隈高地を越えて、原発から西に約60㎞ 離れた郡山市に住む元県職員だった一市民が意を決する。国、県、市の対応はどれも信用できないと感じている。長期低線量被ばくする住民や廃炉作業員の過剰被ばくが将来、深刻な問題になるのではないか、と心配する。「史実はできる限り正確に記録されねばならない」と考えて、ロシア製のRADEX1503 を手に、地上80~100㎝で0.40μSv/h以上の地点、約480か所の空間線量率を、東西20㎞、南北20㎞の地域をのべ500~600㎞歩いて測定した。克明なデータは畳半畳大の市街地地図にびっしり書き込まれ、同時に、別表として掲載されている。

 著者がマイクロスポットと呼ぶ高線量の場所はいたるところにある。「苔か砂か判然としない物質を「毒砂」と呼ぶことにした」とあるが、地表1~3㎝の放射線量が2μSv/hを超える場所もある。モニタリングポストでの値が著者の測定値より高いケースは皆無だった。そこにも、著者は国による作為を感じるのである。

 マイクロスポットが何処にどれほどあるのだろう、と著者は嘆く。雨が降り、強風が吹けば粉じんと交じり空気中を漂い、所在を変えて新たなマイクロスポットをつくるだろうと懸念する。

 著者は自分の人生をふりかえりながら、現代社会への本質的な疑義を吐露しつつ、いのちの限りを尽くして放射線量を測定して、2017年7月、人知れず、世を去った。遺書「堂々と死なん」が遺された。

(文/山口幸夫)