声明: 福島原発事故から1年、脱原発こそ進む道
声明:
福島原発事故から1年
脱原発こそ進む道
2012.3.11
原子力資料情報室
福島原発事故が問いかけるもの
東北地方太平洋沖地震とこれに続く津波の直撃を受けた太平洋岸の15の原発はことごとく深刻なダメージを受けた。中でも福島第一原発では、運転中だった1?3号機がすべてメルトダウンに至った。1号機と3号機は冷却材喪失事故から水素爆発へと至り、広範囲に放射能災害をもたらした。圧力抑制室が破壊された2号機からも大量の放射能が放出され、4号機も壊滅的な被害を受けた。最近の報道によれば、4号機の使用済み燃料プールでメルトダウンが起きなかったのは、「シュラウド交換工事の設計ミスによる遅れ」という偶然による。もしメルトダウンが起きていれば、他号機の対策は不可能となり、最悪で半径170kmが避難区域となる恐れがあった。運よくメルトダウンを免れた他の原発も、炉心溶融から爆発事故に至る崖っぷちにあった。
巨大津波は人々の生活を一瞬にして破壊し、放出放射能は広範囲な人々に避難を強いた。中部から東北地方に及ぶ放射能による土壌汚染、農畜産物の汚染、そして住環境の汚染は長期にわたる被曝環境を人々に強いることになった。将来の健康影響が心配である。
この事故は、原発に依存する形で作られてきた暮らしを、さらに現代文明そのものを根底から問い直せと私たちに迫っている。
まだまだ不安定な原発、廃炉への長いロードマップ
度重なる余震が福島第一原発の近辺で起こっている。とりわけ4号機の使用済み燃料プールの破損、メルトダウンの恐れが懸念される。また、循環冷却システムが大規模に破損する場合にも各号機の燃料溶融が進む恐れが残る。薄氷の上を歩いているような不安定な状態である。
溶融燃料の取り出し開始まで10年と言われるが、放射能汚染環境は1979年のスリーマイル島原発事故のケースよりもはるかに厳しい。廃炉への道のりは40年とされているが、それを超えるだろう。膨大な放射性廃棄物の行く先はなく、東京電力も政府もこの負の遺産が再び環境を汚染することのないように、長期にわたって管理し続けなくてはならない。
いまだ究明されない事故原因
政府が設置した東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会は2011年12月に中間報告をまとめ、最終報告へ向けた調査を継続している。また、その12月、国会に東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が設置された。これらによって、事故原因とその背景、今後の提案などを含めた十分な調査報告がなされることを期待したい。
安全が保証されないまま運転再開を急ぐべきでない
事故原因が十分に究明されず、従って福島原発事故を受けた新たな安全対策が定まらないにもかかわらず、ストレステストによって再開への道筋が作られようとしている。しかし、机上の計算で行われているストレステストが原発の安全を保証しないことはだれの目にも明らかだ。加えてテスト結果の判断基準が示されていない。現在54基の原発のうち52基が運転を停止している。各自治体や住民が運転再開に納得できないのは当然である。
パラダイムシフト
原発に依存した、これまでのエネルギー基本計画は完全に破綻した。政府は省エネ・再生可能エネルギーの最大限の活用と原発のできる限りの低減を掲げて、新しい計画に取り組んでいる。にもかかわらず、原子力産業界はまるで事故などなかったかのように原発の継続を主張して、新しい計画策定の障害となっている。
いま私たちが必要としているのは、原発に代わり省エネルギーと再生可能エネルギーを主役とする社会経済体制への転換である。東日本大震災の復興もこのパラダイムシフトの中で行なわれるべきであると考える。