原子力長期計画改定にあたっての提案(第1回)

原子力長期計画改定にあたっての提案

2004年6月18日

伴英幸
原子力資料情報室共同代表

1)策定会議委員の構成の問題と委員構成修正の提案

本策定会議委員の構成を見ると、「地方自治体、有識者、市民/NGO等、事業者、研究機関から、専門分野、性別、地域のバランス、原子力を巡る意見の多様性の確保に配慮して選んだもの」と言いながら、人選に偏りがあるように思えます。一部は、私自身を含めて核燃料サイクルに批判的な委員も含まれているものの、

・ 前回、原子力委員は構成員になっていなかったが、今回は原子力委員が全員メンバーであり、原子力委員5名中4名が原子力に直接利害を持つ人で占められていること
・ マスコミ関係では、核燃料サイクル推進の論調を明確にしている読売と産経だけであること
・ 原子力政策に積極的な意見を表明している佐藤栄佐久福島県知事が含まれていないこと
・ ご意見を聞く会などで招へいされた有識者のうち、核燃料サイクル(六ヶ所再処理工場)に批判的な意見を述べた招へい者が山地委員だけに限られていること

など、核燃料サイクルを巡る意見から見ても、明らかに人選に偏りがあります。これを受けて、佐藤栄佐久福島県知事も次のように発言しておられます。

 「原子力委員長には、原子力ムラの代表や原子力科学者の代表としてじゃなく、まさに全人格賭けて意思決定して動けば、動かせる問題ではないですかと問題提起をしましたが、あまり分かっていないようです。役所の一組織の感じでやってもらっては困りますと申し上げました。」(04年6月16日、地元での記者会見)

したがって、策定会議委員の構成を、現行計画を修正すればよしとする立場、根本的に変えるべきとする立場、中間的な立場、それぞれ3分の1ずつとし、委員をあらためて公募するか、もしくは今後設置する小委員会ではきちんとバランスを取ることを保証しなければ、原子力委員会は、初めから国民の信頼を失うことを覚悟すべきであると考えます。

なお、策定委員の公募は前回長期計画策定会議の設置前に事務局に提出しましたが、人事権は譲れないと取り上げられませんでした。また、この3月の市民参加懇談会の席上で京都のアイリーン・美緒子・スミス氏(グリーン・アクション代表)が提案しましたが、取り上げられませんでした。今回の策定会議で、是非とも検討課題とするべきです。

2)「新たな計画策定において考えられる検討の視点」への提案

 6月15日に原子力委員会で決定された「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画の策定について」の中で、「新たな計画策定において考えられる検討の視点」としていくつかの論点が挙げられていますが、いくつかの点で致命的な論点が欠けていると思われます。とくに「合理的な核燃料サイクルシステムの在り方」などが記載されるなど、あたかも核燃料サイクル推進を前提にしたかのような記述となっていることは重大な問題ではないでしょうか。

これは、私だけの視点ではなく、佐藤栄佐久福島県知事も、6月18日の県議会本会議で次のように答弁しておられます。

「先月14日、委員長に直接会い、核燃料サイクルについて一旦立ち止まり、適切な政策評価を行い、国民的議論の俎上に載せた上で、今後のあり方を決めるよう改めて強く要請した。しかし、去る15日新たな原子力長期計画策定の方針等を見てみますと、私の要請の趣旨が十分伝わっていないようにも見受けられる。従って、引き続き、様々な機会をとらえ、本県の主張を述べるなど国民的議論の一層の喚起に努めていく。」

また、広く国民世論から見ても、2000年長計の策定時に意見募集が行われた結果の一部を下の表に示すとおり、核燃料サイクルはおろか、原子力発電すら、国民の承認が取れているとはいえないと思われます。このことは、決められた計画を押し付ける「理解活動」ではなく、策定する計画が一般市民の意見を反映したものとなってこそ、「国民的合意」(96年、三県知事提言)が得られると考えています。

2000年11月

意見項目 意見数 反対 やや反対 やや推進 推進
原子力発電の位置付け 374 226(60%) 86(23%) 9(2%) 40(11%) 13(4%)
再処理 94 46(49%) 24(26%) 4(4%) 18(19%) 2(2%)
プルサーマル利用 64 45(70%) 11(17%) 3(5%) 2(3%) 3(5%)
高速増殖炉サイクル 64 26(41%) 11(17%) 2(3%) 13(20%) 12(19%)
もんじゅ 107 85(79%) 3(3%) 2(2%) 16(15%) 1(1%)

(原子力資料情報室作成)

そのために、特に議論することとして以下の諸点をあげます。具体的には;

2-1)六ヶ所再処理工場の「見切り発車」は原子力委員会の責務放棄である

六ヶ所再処理工場の稼動をめぐってもその是非の議論が活発に行われています。建設が進めばそれだけ引き返すことは困難となります。核燃料サイクル推進を定めた昨年のエネルギー基本計画の後からでも、六ヶ所再処理工場に対して、次々に異論が噴出しています。

・ 本年1月から開催されてきたご意見を聞く会でも、核燃料サイクルはもとより、六ヶ所再処理工場に対する異論が続出していたこと
・ とりわけ先日6月1日に行われたスティーブ・フェッター米メリーランド大教授による明快な再処理不経済論に対して、原子力委員会はいっさい有効な反論ができなかったこと
・ 自民党や民主党などの国会議員、佐藤栄佐久福島県知事、経産省や財務省などの官僚の一部など、原子力を推進している側からも六ヶ所再処理工場への異論が出ていること
・ 本年4月23日に行われた日本原子力産業会議年次大会で、佐竹誠東京電力副本部長から、第2再処理工場は建設せず中間貯蔵で対応するとの表明が行われており、このことは、従来、政府や電力会社が喧伝してきた再処理・核燃料サイクル推進の理由がすでに失われていることを意味すること
・ 六ヶ所再処理工場の運転開始を急ぐ唯一の理由である発電所の使用済み燃料対策についても、福井県美浜町のように、中間貯蔵を受け入れる可能性を表明した原子力立地市町村が登場してきていること
・ 6月18日に提出された電気事業分科会「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(案)の中でも、前提を2000年11月の原子力長計であるとした上で「今後、原子力委員会などの場で核燃料サイクル政策の在り方について議論がなされる」など、核燃料サイクルの議論が新たに行われることを前提としていること

以上の事実は、明らかにエネルギー基本計画の時点からの事情変更であり、このまま六ヶ所再処理工場でウラン試験に突入することは、明らかに「見切り発車」であるといわざるを得ません。「核燃料サイクルの見直し」はいうまでもなく、六ヶ所再処理工場のウラン試験突入を凍結した上で、核燃料サイクルのあり方を議論することは原子力委員会の最低限の責務であると考えます。

2-2)核燃料サイクルとワンススルーとの総合的な評価の提案

上記に述べた理由により、明らかにエネルギー基本計画の時点からの事情変更が生じているのであるから、六ヶ所再処理工場のウラン試験突入を凍結した上で、核燃料サイクルのあり方を議論することを最優先すべきであると考えます。核燃料サイクルか、直接処分かは、原子力政策における直面する最も重要な課題であるにも関わらず、公式には、その比較評価が存在しないことは重大な問題です。

したがって、まずは中立的かつ客観的な立場から核燃料サイクルとワンススルー・直接処分との総合的な評価を実施した上で、核燃料サイクル推進の是非を検討すべきであると考えます。総合的評価の中には、両ケースのa)発電コストの定量的な比較評価、b)安全性評価、c)核拡散防止上の観点からの評価などが必要不可欠なものと考えます。具体的には、

・ 先のコスト等検討小委員会の構図では、回収ウランと中間貯蔵にまわされた使用済み燃料、特にMOX使用済み燃料は貯蔵されるのみで、将来的な扱いが抜け落ちている。これらの扱いを明確にした上で定量的に比較検討する
・ 原子力先進国の多くが直接処分を採用していることから、各国が直接処分を選択している事情と日本の事情との客観的な対比を行う
・ 安全性評価については安全を主張する専門家、危険を指摘する専門家、両サイドの専門家の意見を聞きながら(場合によっては評価レポート作成を委託して)議論を進める
・ 核拡散防止上の観点に関しても同様に両サイドの専門家の意見を聞きながら議論を進める

1994年3月4日の原子力長計への「ご意見を聞く会」で原子力資料情報室の前代表高木仁三郎が日本のプルトニウム利用計画の5年間のモラトリアムを提案しました。その時点で六ヶ所再処理工場の建設を中断していれば、21,400億円に達する投資は避けられていました。同じ誤りをまたおかすべきではありません。施設が放射性物質で汚染される前に、総合的な観点から十二分な議論を尽くすべきです。

2-3)脱原発へと進む道を十分に議論し、計画の一つの選択枝とすることの提案

原発を継続すれば放射性廃棄物が発生し、将来にわたって大きな環境負荷を与え続けることになります。したがって、脱原発は早急に実現されるべきだと考えています。

2003年10月に行なわれました市民参加懇談会の席上、木元教子原子力委員によれば政府内部で脱原発オプションの検討を行なったことがあるとのことでした。その検討内容を明らかにして、議論を進めるべきです。また、当室は 『市民のエネルギーシナリオ2050』を発表しました。省エネ技術の積極的推進と再生可能性エネルギーの積極的導入で、現行の技術水準でも脱原発が可能であることを示したものです。さらに、他の市民グループも原発に依存しない「持続可能なエネルギー社会を目指してーエネルギー・環境・経済問題への未来シナリオー」(市民エネルギー調査会 www.isep.or.jp/shimin-enecho/)を発表しています。これらは議論の参考として利用できると思いますが、特に後者はこの6月に発表されたもので、策定会議に招いて説明を受けて議論するとよいと考えます。