六ヶ所再処理工場の無期限延期を求める

六ヶ所再処理工場の無期限延期を求める

原子力資料情報室
2005年5月25日

 核不拡散防止条約(NPT)再検討会議が開催されているニューヨークの国連ビルにおいて、2005年5月24日(現地時間15時)、重要な発表が行われた。

 日本のみならず、世界の知識人、著名人や核兵器廃絶運動団体ら150余名が、六ヶ所再処理工場の運転について、無期限延期を呼びかけたのである。(※)

 これは、5月5日(現地時間)に「憂慮する科学者連盟」(UCS)が発表した、27名の米国の著名な科学者(ノーベル物理学賞受賞者4名や元国防長官を含む)や元政策立案者による六ヶ所再処理工場操業の無期限延期の声明に続くものである。

当室は以前から、国際的な核不拡散体制の観点から、六ヶ所の再処理工場の廃止を訴えてきた。経済性も低い再処理で、多くの余剰を抱えながらも、さらに今後の使用計画も定まらないのに年間8トンものプルトニウムを作り続けることに、合理性はない。そればかりか、要請文に示されるうに他国を再処理へと促すことになり、ひいては核不拡散体制の維持が困難になるだろう。

国内の原子力推進派の主張は、非核兵器国で日本のみはプルトニウム分離が認められており、六ヶ所再処理工場の操業を断念することは原子力政策の維持すら難しくするという自らの既得権と利益を述べるのみで、その国際的な悪影響を分析することはない。
しかし今回のように、世界の多くの著名人や団体代表者たちから懸念が示されたことは、私たちの主張が杞憂ではないことを示すものである。

日本が、率先して「六ヶ所再処理工場の無期限延期」を示すことは、明らかになってきた世界の核拡散状況を止める有力な方策である。

被爆国として訴えてきた日本の核軍縮・核不拡散政策をさらに強く進めるためにも、六ヶ所再処理工場の稼動は無期限に延期されるべきである。

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(※)

2005年5月24日

核不拡散体制強化のための日本のリーダーシップを求める要請
──六ヶ所再処理工場運転の無期限延期の呼びかけ──

2005年NPT再検討会議の閉幕が近づいている。各国は、世界が直面している核の脅威を減らすために会議を成功裡に終わらせるべく最大の努力をしなければならない。核兵器国が不可逆的な核軍縮に向けた具体的措置を講じることが肝要であるが、核兵器の材料となる物質–高濃縮ウラン及びプルトニウム–の生産をやめることも、その努力の極めて重要な要素である。

コフィー・アナン国連事務総長は、NPT再検討会議の開幕に際して、核の脅威を強調し、次のように警告している。

ウラン濃縮と再処理という「燃料サイクルのもっとも機微な部分を何十もの国が開発し、短期間で核兵器を作るテクノロジーを持ってしまえば、核不拡散体制は維持することができなくなる。」一つの国がそのような道を進めば、「他の国も、自分たちも同じことをしなければと考えてしまう。そうなればあらゆるリスク──核事故、核の違法取り引き、テロリストによる使用、そして、国家自体による使用のリスク──が高まることになる。」つまり、核兵器物質及び技術の拡散を防ぐ努力は、核廃絶に向けた進展を確かなものにするためにも重要なのである。

ここに添付したステートメントは、再検討会議の開催に当たって米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」が発表したものである。ノーベル賞受賞者ら米国の27人の専門家が署名したこのステートメントが述べているとおり、「核不拡散体制がその最大の試練を迎えている時に、日本は、六ヶ所再処理工場の運転を開始する現在の計画を進めるべきではない。」

運転が始まれば、六ヶ所再処理工場は、核兵器を持っていない国における初めての商業規模の再処理工場となる。

使用済み核燃料を使ったアクティブ試験を今年12月に始め、2007年に商業運転に入る計画の六ヶ所再処理工場は、年間8トンのプルトニウムを分離する能力を持つことになる。原爆1000発を作るのに十分な量である。この生産がまったく必要のないものであることは、日本が、すでに、国内とヨーロッパに置かれたものを合わせて40トン以上のプルトニウムを持っていることが如実に示している。原爆5000発を作るのに十分な量である。

これ以上の核兵器利用可能物質を日本が生産し蓄積すれば、それは、北東アジアにおける核拡散問題をさらに複雑なものにすることになる。工場の運転が開始されれば、それは、核兵器(及び核兵器用物質)の取得を追求している国々に「日本の例」という口実を与えることになる。つまり、六ヶ所再処理工場の運転開始と、分離したプルトニウムを商業用原子炉の燃料として使うという非経済的な計画の実施とは、NPT加盟国が決して無視することのできない世界的核拡散リスクを招来するのである。

われわれは、再検討会議の閉幕を控え、核兵器の使用がもたらす悲惨さについて熟知している日本政府に対し、核廃絶と核拡散防止への道を世界に示して見せるよう要請する。日本が六ヶ所再処理工場の運転を無期限に延期するという勇気ある決定をすることこそが、この目標に至る極めて重要な一歩となるだろう。

川崎哲  ピースボート共同代表
Akira Kawasaki, Executive Committee, Peace Boat

梅林宏道 ピースデポ代表
Hiromichi UMEBAYASHI, President, Peace Depot

ケビン・マーティン ピースアクション
Kevin Martin, Executive Director, Peace Action,

マーティン・ブチャー  社会的責任を考える医師の会
Martin Butcher, Director, Security Programs, Physicians for Social Responsibility

ダリル・キンボール 軍備管理協会
Daryl Kimball, Executive Director, Arms Control Association

署名リスト
(略)