原子力長計策定会議委員月誌(12)

伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(12)

『原子力資料情報室通信』373号(2005.7.1)掲載

パブコメは意見の質か、数の論理か

 第27回会合には意見書を出すことができなかった。台湾から帰った直後で、残念ながら時間と体力がついていかなかった。これで2回目だ。さて、この日の「原子力と国民・社会の共生」での議論で、掛け声はよいが実が伴っていないことの事例として、福島県へ寄せられた内部告発の件と核燃機構がウラン残土の後始末を怠っていることを指摘した。勝俣委員は発言しなかったが、殿塚委員は最高裁の判決によって撤去まで1日あたり75万円の罰金を払うことになったと丁寧に説明しながら努力していると弁解をしていた。

 ところが、どうやら努力内容はその一部をアメリカで処分することであることが6月12日の報道で明らかになった。最高裁で撤去命令が出ていた3000立方メートルの内の放射線レベルの高い290立方メートルをアメリカの企業が引き取る交渉の見通しが立ったと言うのである。地元の人々は1日も早く撤去して欲しいに決まっている。しかし、こんな無責任なことが許されるのだろうか?

 海外処分の途ができてしまえば、残りの残土のみならず、たとえば、使用済み燃料の中間貯蔵あるいは処分(ロシアから提案を受けている)あるいは高レベルガラス固化体の処分など、面倒なものは海外へとなりかねない。
 さて策定会議は28回まで「中間取りまとめ」あるいは「論点整理」という形で意見をまとめてきたが、「新計画の構成(案)」として意見募集されることとなった。本誌がお手元に届くころには、すでに締め切った後になってしまうが、途中段階で意見募集を行なうことは原子力委員会初のことである。

 2000年長計が意見募集を行なったのは、原案ができた段階で、ほとんど意見の採用はなかった。それゆえ、意見募集は複数回行なうことを求めてきた。それは実現したのだが、新計画の「構成」がよいか悪いか、「構成」に欠けている点はないかといった意見だけが求められているとすれば、これはなかなか出しにくいものである。それに拘ることもない。もっと自由に意見を寄せてよいと思う。

 応募意見の取り扱いをめぐって、神田委員と佐々木委員から興味深い意見が出た。神田委員は前回の長計の応募意見は厚さ10センチくらいあって、全部読んだが、誰かがテキストを書いて、これでみんな出しましょうということで出したものだ。それを分類して何%が反対していると伴は言うが、これは信頼できない(他のことはなかなかいい事を言っているそうだ)。案をちゃんと読んで書いて欲しいとの牽制球。他方、佐々木委員は意見募集の趣旨は、見過ごしているかもしれない貴重な意見を求めるためで、多数の人が賛成・反対しても全然関係ないというものだった。近藤委員長が議論を回避しようとしてか、行政手続法とかパブコメに関していろんな議論があり、貴重な意見を吸い上げることが唯一の回答ではなく、ある程度数の論理という説もあるとひきとった。それはともかく、多忙に違いないが、多くの意見を諸氏にお願いしたいと思う。(6月21日)

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