佐賀県知事・玄海町長への要望書 玄海3号プルサーマルの了解をしないでください
佐賀県知事・玄海町長への要望書
玄海3号プルサーマルの了解をしないでください
佐賀県知事 古川 康 様
玄海町長 寺田 司 様
2005年8月29日
玄海3号プルサーマルを案じる全国の市民(152団体116個人)
玄海原発3号でMOX燃料を使用すること(プルサーマル)に関し、九州電力は昨年5月28日に経済産業大臣に許可申請を行い、同日貴職に対しても安全協定に基づく「了解」を求めました。許可申請の審査は今年2月10日付で、経産大臣から原子力安全委員会に諮問され、安全委員会の答申及び経産大臣の許可がまもなく出ると予想されるため、貴職の「了解」がまさに焦点になろうとしています。
プルサーマルはウラン燃料用に設計された原発において、設計に反してプルトニウム混合燃料(MOX燃料)を使用することです。とりわけ玄海3号の場合、出力の高さとプルトニウムの混合度(プルトニウム富化度=プルトニウム含有率)で、世界に類を見ない格段に高レベルの、それゆえ危険度が著しく高いプルサーマルとなります。いわば高度な実験が世界に先駆けて実施されることになるのです。なぜそのような危険に、町民・県民、近隣県民やさらに多くの人々をさらさねばならないのでしょう。その点で納得のいく説明が一度でもなされているでしょうか。
1999年に市民が関西電力高浜4号用MOX燃料のデータ不正を暴いて以来、福島第一3号プルサーマルに対する訴訟、新潟県刈羽村の住民投票による柏崎刈羽3号プルサーマルの拒否を経て、危険なプルサーマルに反対する全国的な大きな流れが形成されています。福島県、新潟県はプルサーマル了解を白紙に戻し、福井県知事も当面の実施を拒否しています。佐賀県や玄海町が全国のトップを切ってわざわざ危険に近づく必要はまったくありません。
下記で詳述する理由から、玄海3号プルサーマルについて安全協定に基づく「了解」を与えないよう、貴職に強く要望いたします。
1.原子力安全委員会は玄海3号プルサーマルの専門的審査及び意見募集を拒否しました
今年2月10日付けで玄海3号プルサーマルの諮問を受けた原子力安全委員会は、専門部会による審査をせず、一般市民からの意見募集もしないという方針を立てました。それまでの高浜3・4号、福島第一3号、柏崎刈羽3号のプルサーマルに関してはいずれも安全専門審査会に指示して専門部会を設け、一般からの意見募集もしてきたのに非常に奇妙なことです。そのため、私たち全国の60団体・28個人は、4月28日に安全委員会に要望書を出しましたが、拒否されました。安全委員3名が審査に当たるとのことでしたが、さまざまな課題を審議すべき安全委員に、玄海プルサーマルの専門的検討をする余地などないことは明らかです。
安全委員会は佐賀県への回答において、専門家4名の参加も得ていると言いながら、基本的には専門的検討は不必要だとの判断に立っており、その理由を「主要な特徴であるMOX燃料装荷規模、Pu(プルトニウム)含有率、燃料棒配列が同一であるため安全審査上の重要な相違点が見当たらず、高浜3/4号機等の審査経験に基づく審査が可能と判断されたこと」にあるとしています。すなわち玄海3号では、すでに審査が終了している高浜3・4号と同じMOX燃料集合体を使うから専門的審査は不要だというのです。ところが、やはり高浜3・4号と同じMOX燃料集合体を用いる伊方3号の場合には、安全委員会は7月28日に安全専門審査会に検討の指示を出し、一般からの意見募集も行っているのです。この事実によって、玄海3号の専門的審査をしない理由は崩れたというべきです。
このように、貴職の前に提示されようとしている玄海3号プルサーマルは、安全委員会による独立した審査を事実上受けていない、それゆえに安全性が保証されていない代物であるということができます。
2.長崎原爆の材料であるプルトニウムを使う危険
プルサーマルとは、ウラン燃料を使うように設計された原発で、ウランとは特性の異なるプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を使うことです。プルトニウムは長崎原爆の材料になった物質です。プルトニウムはウランよりはるかに爆発力が強くて臨界量が小さく、プルトニウムを用いればウランよりはるかに小型で高性能の核兵器が作れるほどです。
MOX燃料では、そのようなプルトニウムがウランと均一に混ざることなく、塊状(プルトニウム・スポット)で存在します。そこで激しく燃え、ガスを発生し、燃料を内部から破壊しようとする圧力が働きます。政府や電力会社は、プルトニウムは普通の原発でも燃えていると言いますが、ウラン燃料内で生成されるプルトニウムは基本的に均一に分布しています。プルトニウム・スポットのような特性はけっしてウラン燃料にはないものです。
悪魔の元素と言われる因果なプルトニウム、長崎原爆で多大の犠牲者を出したプルトニウムを、なぜよりにもよってその隣県で使わなければならないのでしょう。長崎原爆の約220発分ものプルトニウムが玄海プルサーマルでは使われるのです。チェルノブイリ事故が如実に示したような、ただでさえ危険な原発を、なぜさらに危険な状態にしなければならないのでしょうか。
3.玄海3号プルサーマルは世界に例を見ないほどに危険
玄海3号では、1998年に審査の終了した高浜3・4号と同じMOX燃料集合体を使うから安全だと安全委員会は説明します。しかし、高浜3・4号は出力が87万kWなのに対し、玄海3号は118万kWと1ランク上で、高浜の3ループに対し4ループになっています。それに応じて、MOX燃料集合体の配置や炉内で燃える程度(燃焼度)が異なります。フランスでは20機のプルサーマルのすべてが90万kW級に制限されており、玄海3号のような高出力のプルサーマルは許可されていません。
それはフランスの話で日本とは関係ないと安全委員会はいうかもしれませんが、日本でプルサーマルを実施する重要な根拠に「海外の実績」があったのではなかったでしょうか。それならと安全委員会は、今度はドイツの例を持ち出します。確かにドイツでは高出力の原発でプルサーマルが実施されています。しかし、実際にはまともにプルトニウムが装荷されているのはごく一部で、しかもプルトニウムの混合度(MOX燃料集合体の平均プルトニウム富化度)が3.1?4.6%と玄海3号の6.1%よりはるかに低いのです。日本でフランスやドイツの約2倍にも富化度を高くするのは、輸送費などのコストを節約したいという動機によるものと推測されます。
このプルトニウム富化度こそが、ウラン燃料と異なるMOX燃料の特性を表す最も重要な指標というべきですが、それはフランスでも3.0?3.7%しかありません。それゆえに、玄海3号プルサーマルが世界に例を見ない危険な「実験」となることは明らかです。
4.使用済みMOX燃料には行き場がない
いま青森県六ヶ所村で、再処理の試験(ウラン試験)が行われています。さらに今年12月か来年には本格的試験に入り、使用済み核燃料を再処理する方向へと進もうとしています。再処理では、燃料棒中のすべての放射能をいったんは解き放ち、大量の放射能を大気と海洋へ撒き散らします。また再処理には莫大な費用がかかります。
それでもなぜ再処理を行うのでしょうか。実質的な理由は再処理を止めれば各原発から発生する使用済み核燃料の行き場がなくなり、原発を止めざるを得なくなるからということでした。再処理を選択した本質的な理由が結局はこの問題にあることが、昨年来の原子力長期計画の議論の中ではっきりと浮き彫りになりました。
プルサーマルを実施すれば、この問題は解決するでしょうか。使用済みMOX燃料は六ヶ所再処理工場では処理できないため、当面サイト内に居座ることになっているはずです。しかも、ウランの使用済み核燃料と比べ、放射能の寿命が格段に長く、約2倍の熱を発生します(冷却に約10倍の時間を要す)。結局、プルサーマルとは、高レベル放射性廃棄物であるウランの使用済み核燃料を、より放射能が強くて危険な、より始末の悪い使用済み核燃料に変えることに他なりません。それほどにやっかいな高レベル放射性廃棄物を地元に半永久的に置き去りにする方策なのです。貴職は、もし「了解」すれば、このような方策を受け入れることになるのです。
5.プルサーマル拒否は全国的な大きな流れです
1999年12月16日に、関西電力は高浜3・4号用MOX燃料にデータ不正があったことを認め、すでにイギリスBNFL社で製造されていたMOX燃料のすべてを廃棄にしました。その翌日17日に福井県議会が終了し、知事が高浜4号へのMOX燃料装荷を最終的に承認するという、それと同日に判決も出るという、まさにその前日のことでした。私たち市民はこのMOX燃料には不正があると裁判で指摘し続けていましたが、関電ばかりか当時の通産省も安全委員会もが頭から不正はないとの立場に立ち、人々をだましてきたのです。その後、2001年12月にも関電は、フランス・コジェマ社で製造したMOX燃料を、違約金を払ってまで廃棄にしました。さらに三度目に、昨年夏にコジェマ社との製造契約に入ろうとした矢先、長崎原爆忌の8月9日に関電が美浜3号機事故を起こしたので、福井県知事は、プルサーマルの実施計画を持ち出すこと自体を拒否しています。
MOX燃料に関してデータ不正が起こる基盤として、MOX燃料の製造や検査にはウラン燃料にはない大きな困難があることが確認され、その認識が続く運動の中でも再確認されていきました。
2000年8月9日、長崎原爆忌を期して、東京電力福島第一原発3号機のプルサーマル実施に対する差し止め訴訟を約2000人の市民が起こしました。敗れたものの、判決では東京電力がデータを公開しなかったことを強く批判しています。またこの過程で市民と福島県との対話が進みました。その後、東電の不正事件を受けて福島県知事と県議会はプルサーマルを拒否し、了解を白紙に戻したのです。
2001年5月に、新潟県刈羽村の住民は、住民投票で柏崎刈羽3号機のプルサーマルを拒否することを決定しました。原発城下町であり、経済生活の多くが原発に依拠しているにもかかわらず、普段から不安の思いを抱きながら見ている原発が、プルサーマルによってこれ以上危険になることはごめんだと拒否したのです。その後やはり東電の不正事件を受けて、新潟県知事はプルサーマル了解を白紙に戻しました。
このように、プルサーマル実施計画はことごとく挫折しています。まさにプルサーマルは呪われているのです。プルサーマル拒否は全国的な大きな流れです。本来なら90万kW級で先に始めるはずだったプルサーマルが、120万kW級の玄海3号で真っ先に始めることになったいきさつも、この流れによって皮肉にも生じたものです。
そしていままさに、この流れは事実として九州の人たちに引き継がれています。旧鎮西町、旧肥前町などの議会で反対決議が上がっており、5月10日には、「子どもに残せ安全な海」などと書かれた横断幕や大漁旗をかかげた漁船約200隻400人によるプルサーマル反対の海上デモが行われ、九電に抗議文が手渡されています。
また、高浜原発と福島第一原発へのMOX燃料輸送が問題になった1999年には、韓国内で輸送に反対する激しい運動が起こり、海上デモの演習まで行われています。このときは高浜港への輸送は北回りで行われたため実際の海上デモは行われませんでした。しかし、玄海原発へのMOX燃料輸送となると対馬海峡を避けて通ることはできないため、国際的に問題になる可能性が十分あることは考慮しておく必要があるでしょう。
6.玄海3号プルサーマルの了解はけっしてしないでください
私たちは、今年5月13日に60団体9個人で貴職に対し、安全委員会での専門的審査を貴職からも要請してほしいという申し入れをしています。それに対して貴職は8月3日付回答において、7月25日付の安全委員会からの説明を受け入れる考えを示されました。しかし、安全性の明確な保証が必要だという、この要望書で示す私たちの趣旨について、再度よくご検討いただきたいと思います。
高浜3・4号プルサーマル審査から6年半以上の歳月が流れ、その間にプルサーマルに対する不安感がいっそう高まり、拒否する全国的な大きな流れがありました。その流れは、政府規制当局の不義に対する不信と密接なかかわりがあります。福井、福島、新潟各県知事が公言・進言されているとおりです。それにもかかわらず、そのような動向を何も斟酌することもなく、ただ形式的に安全委員会を通すだけの審査姿勢がとられています。この事実からだけでも、プルサーマルを推進する人たちに安全を守るという誠意を感じることはできません。
国の意向とは一線を画し、玄海原発の地元自治体首長として、町民・県民、近隣の長崎県民や福岡県民、さらに多くの人々の安全を守るという立場に立たれ、玄海3号でのMOX燃料使用に対する了解要請を拒否していただくよう心から要望いたします。
玄海3号プルサーマルを案じる全国の市民(152団体116個人)
呼びかけ団体(23団体)
脱原発ネットワーク・九州/佐賀県平和運動センター/からつ環境ネットワーク/グリーンコープ生協さが/美浜・大飯・高浜に反対する大阪の会/みどりと反プルサーマル新潟県連絡会/脱原発福島ネットワーク/ストップ・ザ・もんじゅ東京/福島老朽原発を考える会/グリーンピース・ジャパン/原子力資料情報室/原水爆禁止日本国民会議/プルサーマル公開討論会を実現する会/東京電力と共に脱原発をめざす会/生活協同組合連合会グリーンコープ連合/グリーンコープ生協ひろしま/グリーンコープやまぐち生協/グリーンコープ生協ふくおか/グリーンコープ生協(長崎)/グリーンコープ生協おおいた/グリーンコープ生協みやざき/グリーンコープ生協くまもと/グリーンコープかごしま生協
賛同団体(129団体)
玄海原発設置反対佐賀県民会議/原水爆禁止佐賀県協議会/R-DANネットワークさがんもん/原発はもういらない九州連絡会議/九電消費者株主の会/チェルノブイリ支援運動・九州/風下の会(福岡)/原発なしで暮らしたい・水俣/原発なしで暮らしたい・長崎/反戦・反核・反原発を考える会(北九州)/北九州から脱原発社会を考える会/ワールド・エコロジー・ネットワーク/ワーカーズコープエコテック/姶良伊佐ブロック平和運動センター/姶良ユニオン/反原発・かごしまネット/川内原発3号機増設を止める会/川内つゆくさ会/徳山ダム建設中止を求める会/川内原発建設反対連絡協議会/脱原発くまもとネットワーク/くまもと市民センター/NPO法人 九州・自然エネルギー推進ネットワーク/脱原発大分ネットワーク/原発いらん・みやざき/たんぽぽとりで/株式会社ウインドファーム/チェルノブイリ友の会/九州産直クラブ/オーガニックハウス夢広場/自然生活館空の詩/ネットワーク・コスモポリタン/ルシーラ/伊方原発反対八西連絡協議会有志/原発さよなら四国ネットワーク/原発さよならえひめネットワーク/原発なしで暮らしたい松山の会/愛媛環境ネットワーク/放射能を憂慮する市民の会/愛媛の活断層と防災を学ぶ会/阿倍悦子と市民の広場/八幡浜・原発から子供を守る女の会/智山反原発有志の会/新社会党愛媛県本部/島根原発増設反対運動/鳥取県西部原発反対の会/原発はごめんだヒロシマ市民の会/プルトニウム・アクション・ヒロシマ/原子力発電に反対する福井県民会議/福井県平和・環境・人権センター/高速増殖炉など建設に反対する敦賀市民の会/I女性会議福井/原発設置反対小浜市民の会/プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク/刈羽村生命を守る女性の会/柏崎刈羽原発反対地元三団体/柏崎市議会社会クラブ/脱原発をめざす新潟市民フォーラム/原発のない住みよい巻町をつくる会/長岡非核・護憲市民の会/ピースサイクル新潟/ながおか「地球村」/平和と緑の会/Webサイト反戦・平和アクション編集委員会/福島原発30キロ圏ひとの会/双葉地方原発反対同盟/再処理工場について勉強する農業者の会/牛小舎/花とハーブの里/核燃から海と大地を守る隣接農漁業者の会/PEACE LAND/核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会/核燃止めよう浪岡会/核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団/核の再処理はイラナイ・八戸の会/原発いらん!山口ネットワーク/ふぇみん婦人民主クラブ小郡支部/浜岡原発を考える静岡ネットワーク/みやぎ脱原発・風の会/原子力発電を考える石巻市民の会/生活クラブ生協北海道/岩内原発問題研究会/健康をつくる会/ワーカーズコレクティえこふりぃ/原発に反対する小樽市民の輪/大きな株の会/市民ネット北海道/下北から大間を考える会/幌延問題を考える旭川市民の会/反核・反原発全道住民会議/幌延高レベル核廃棄物問題を考える旭川市民の会/とまとの会/ウラン残土訴訟を支える会/核のごみキャンペーン・中部/平和・人権・環境を守る岐阜県市民の声/みみずの会/ストップ・ザ・もんじゅ/ぺんぎんぺり館/阪南中央病院・原発見張り番/大阪大学付属病院看護師労働組合/脱原発へ!関電株主行動の会/くらしを見つめるひととき/核のごみキャンペーン関西/原子力災害を案じる阪神間住民の会/さよならウラン連絡会/日本消費者連盟関西グル-プ/脱原発わかやま/やめよら原発・No核・熊野の会/つゆくさと大地の会/原発がこわい女たちの会/核燃やめておいしいごはん/とめよう原発せたがやネットワーク/柏崎巻原発に反対する在京者の会/たんぽぽ舎/いろりばた会議/都労連交流会/医療法人社団ひらの亀戸ひまわり診療所/足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ/福島原発市民事故調査委員会/原発・核燃とめようかい/ふぇみん婦人民主クラブ横浜支部/住基ネットに「不参加」を!横浜市民の会/戦争反対・平和の白いリボン神奈川/「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会/下北半島と神奈川を結ぶプロジェクト/核のゴミキャンペーン/ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン/ふぇみん婦人民主クラブ/日本消費者連盟
賛同個人(116名)
連絡先:
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