JCO臨界事故総合評価会議『青い光の警告 原子力は変わったか』(再入荷)

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青い光の警告 原子力は変わったか
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青い光の警告?原子力は変わったか
JCO臨界事故総合評価会議・著
七つ森書館発行・2800円+税(会員価格あり)

2005 年9 月発行・12 月二刷

※現在原子力資料情報室では品切れのためご注文になれません

関連情報
JCO臨界事故6周年全国集会
cnic.jp/219

 この本は、『JCO臨界事故と日本の原子力行政-安全政策への提言』(七つ森書館、2000年 9月)に続く評価会議の2冊目の出版物です。

 この事故は忘れてはいけません。ふつうの人は事故を忘れるか、忘れようとしてきたようです。しかし、事故から6年が経っても事故を忘れない人もいます。この本は、そのような人が集まって自分の問題意識に従って、調査し、考えたことをまとめたものです。

 最近の話題の「建物の耐震強度偽装」をめぐるさまざまな動きは、私の事故当時の気持を思い出させる結果になりました。「原子力」の方が深刻な情況にあると思っていますが。

 増刷ができました。これを機に、多くの方々に見ていただけたらと思っています。(代表・古川路明)

第1章 はじめに(古川路明)
第2章 JCOの操業実態および国の責任(伊東良徳)
第3章 プルトニウム政策と事故原因の形成(藤野聡)
第4章 転換試験棟・問題の多い加工施設(古川路明)
第5章 臨界事故による放射性物質の放出とその危険性(古川路明)
第6章 JCO事故における中性子線被曝について(古川路明)
第7章 JCO臨界事故によって周辺環境に漏洩した中性子の挙動計算(今中哲二)
第8章 東海村住民・那珂町住民の身体的影響・ 原子力問題への高い関心-JCO臨界事故・
第2次住民生活影響調査の分析(長谷川公一)
第9章 “安全”の希求と残る不安-第2次住民生活影響調査・自由回答欄への記入から(平林祐子)
第10章 オフサイトセンターにみる原子力防災の問題点(末田一秀・山本定明)
第11章 「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を検証する(末田一秀)
第12章 原子力地域防災ネットワークへの試み(根本がん)
第13章 臨界事故は原子力政策を変えたか(西尾漠)
第14章 おわりに(古川路明)

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第1章 はじめに

第2章 JCOの操業実態および国の責任
 主として裁判資料の綿密な検討に基づいて、旧科技庁による安全審査の問題点、JCOの過去の違法操業、規制当局の巡視の実態、臨界事故に至る経緯、溶液の沈殿槽投入の動機などについて詳しく述べている。

第3章 プルトニウム政策と事故原因の形成
 裁判資料や他の資料を用い、歴史的事実の追跡と大局的な構造の理解とを組み合わせて、旧動燃・旧科技庁によって担われてきた日本のプルトニウム政策と事故原因との関係を検討している。

第4章 転換試験棟-問題の多い加工施設
 前著でも指摘した転換試験棟の核燃料加工施設としての不適当さが裁判資料の検討によってさらに明らかになったことを述べている。

第5章 臨界事故による放射性物質の放出とその危険性
 事故による放射性物質の放出が、実際は非常に重要ではなかったことを述べている。「風評被害」は根拠のないものであった。事故直後に、この事実が広く知られなかったことは残念である。

第6章 JCO事故における中性子線被曝について
 事故の被曝問題では、中性子の発生が重要であったことを述べている。中性子の生体影響の基礎についても触れている。

第7章 JCO臨界事故によって周辺環境に漏洩した中性子の挙動計算
 専門的な観点から、中性子による被曝について詳細な計算をおこなっている。得られた被曝線量は、国が公表しているものと大きくは異ならないが、このような値が決して確定したものでないことも指摘している。

第8章 東海村住民・那珂町住民の身体的影響・原子力問題への高い関心-JCO臨界事故・第2次住民生活影響調査の分析
 生活影響調査の結果を分析して、地元住民への影響が深刻であり、しかも長く続いていることを述べている。他の調査方法では、くみ上げられない知見が多く含まれている。

第9章 “安全”の希求と残る不安-第2次住民生活影響調査・自由回答欄への記入から
 生活影響調査の中の自由解答欄から、いくつかを選び、分析を試みている。自由回答でなければ得られない内容が含まれていて、興味深い。

第10章 オフサイトセンターにみる原子力防災の問題点
 事故後に設置されたオフサイトセンターは、国による原子力防災対策の目玉である。しかし、これが防災にどの程度役立つかは疑わしい。起こる可能性がある原発事故では、役立つのだろうか。

第11章 「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を検証する
 マニュアルがどのようなものであるかを記し、その問題点を論じている。前章の内容とあわせると、国の防災対策の問題点が浮かびあがってくる。

第12章 原子力地域防災ネットワークへの試み
 地元における住民の意識とその時間経過にともなう変化、さまざまな活動状況について、住民の側から具体的に述べている。また、原子力施設を抱える地域における一般に知られていない問題についても説明している。

第13章 臨界事故は原子力政策を変えたか
 事故後に、国は法令を変え、組織を改変し、政策にも変更を加えたことになっている。しかし何が変わったのだろうか。大きな疑問が残る。原子力基本法にさかのぼり、すべてを見直さねばならないことを述べている。

第14章 おわりに
 事故について論じきれなかった点をまとめ、提言の形のものも載せている。従来の提言と異なり、多くの人々と関係があることも取り上げている。原子力については、すべての日本人が問題意識をもたねばならない。