福島原発事故から10年 始まった韓日インターネット共同行動-汚染水を海に流さないで!原発もうやめよう
福島第一原発事故から10年が経過する。韓国から呼びかけがあり、この時期に韓国と日本で共同して現状の認識共有と脱原発へ向けた韓日インターネット共同行動を行おうということになった。韓国側はエネルギー正義行動、韓国環境運動連合など46団体が呼びかけている。日本側は、佐藤大介さん(ノーニュークス・アジア・フォーラム)、満田夏花さん(FoEジャパン)、武藤類子さん、川井康郎さん(原子力市民委員会)そして原子力資料情報室からは伴が呼びかけ人となった。
第1回目のイベントを1月20日に開催し、以降50日間にわたってさまざまな取り組みを進めていくことになった。武藤類子さんが福島の終息しない現実と人間なき復興の実態を報告した。そして、「福島原発事故10年、汚染水を海に流さないで! 原発もうやめよう!」を訴える国際署名を実施することにした。国際署名は10カ国語に翻訳され、change.orgで進めている。現在69カ国41,365名の賛同が得られている。最後に「両国で福島第一原発の汚染水の海洋放出に反対し、脱原発の社会を少しでも早く実現するための共同行動を共に広げていきたい」とする共同声明を採択して終えた。
2月9日に開催された第2回目の共同行動では、両国から脱原発運動の現状と抱えている喫緊の課題を報告しあった。裁判闘争を含む再稼働状況や核燃料サイクルをめぐる日本の現状は伴が報告した。満田夏花さんから海洋放出問題を、後藤政志さんから終息していない福島原発事故の状況を報告した。後藤さんのプレゼンの中には韓国のハンビッ4号機の格納容器壁の空洞問題にも触れた(手抜き工事から1.6m近い大きな空洞ができていた)。韓国では大きな問題となっている。
韓国からはイ・ヨンギョンさん(エネルギー正義行動)が同国の原発政策と脱核運動をテーマにこれまでの運動を総括的に振り返った(日本でいう脱原発運動は、韓国では脱核運動と表現)。韓国では脱核運動の大きな高揚の波が幾つかあり、それらの運動形成を戦略として捉えている点が筆者には興味深かった。直接話題には上っていなかったが、政府の委員会へのNGOの招聘は、人数の制限があるが、人選はNGO側に任されている点も日本とは大きく異なる。独裁時代があったからか、市民運動の重要性を政府が認めているようだ。イ・サンホンさん(慶州環境運動連合)はウォルソン原発のトリチウム問題を報告した。同原発は4基あり、1号機が文政権によって早期閉鎖に言及し、19年12月に原子力安全委員会が早期閉鎖を決定した。ところが、その根拠になった経済性の評価で過小評価があったと20年10月から再調査が始まっている。この原発はカナダ型の原発で、トリチウム放出量が非常に多い。この点では福島のトリチウムを主とした汚染水海洋放出への反対と同じ問題として、原子炉の閉鎖を主張している。
韓国側の3人目の報告はホン・ドクファさん(忠北大学社会学科教授)から、脱原発を早めるための法制度改善に関するものだった。カーボンニュートラル政策が進められる中、市民運動としてはこれに脱原発を組み込む必要があることや、脱原発運動強化のために、市民・住民の意思決定権限を強化する必要性を指摘した。例えば、「市民社会運動は、これまで少数の専門家・活動家が国家委員会や国家基本計画策定に参加し、市民社会と地域社会の意見を代弁する方式を活用してきた。一定の成果があったことを否定することはできないが、地域・市民社会の能力と権限を拡大することにつながったかは疑問である」との指摘は耳が痛かった。
(伴英幸)