ふげん使用済み燃料再処理は中止すべき

『原子力資料情報室通信』第560号(2021/2/1)より

日本原子力研究開発機構(JAEA)の事業内容を議論した2020年11月14日の行政事業レビューで、新型転換炉ふげん(廃止措置中)の使用済み燃料のフランスでの再処理計画について、有識者らが見直しを求める一幕があった。河野太郎行革担当大臣は、再処理で取り出されるプルトニウムの使い道を説明するよう要求し、説明できないなら予算はつけられないと指摘した。その後、12月1日の記者会見で河野大臣は「納得いく説明をもらったので了承としたい」として認める姿勢を示した。萩生田光一文科相は地元との約束があると言い、自民党の文科部会も予定通り搬出を求める決議を出していた。
この計画は2018年に持ち上がったもので、JAEAは、すでに仏オラノ・サイクル社とフランスへの輸送用の輸送容器6基の製造(TNインターナショナル社、仏オラノ・サイクルの子会社)と受け入れ施設の改造のための契約(133億円)を締結している。輸送容器は2022年度には製造が完了し、その後、2023年度から2026年度にかけて使用済み燃料を搬出することになっている。フランスには海外の放射性廃棄物を受け入れないという法律があるため、この搬出は再処理を前提とする。
ふげんの使用済み燃料は、現在、福井県敦賀市にあるふげんの使用済み燃料プールに466体、茨城県東海村の東海再処理施設に265体保管されている。このうち、ふげんに保管されている分については福井県と、2026年度までに燃料を県外搬出すると約束している。2018年当時、当室が宮川伸衆議院議員(立憲民主党)経由で文部科学省から入手した資料には、計731体の使用済み燃料には1,329kgのプルトニウムが含まれていることが示されていた。
2018年、原子力委員会は「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を発表、その中で、プルトニウム保有量の減少を明記した。だが日本は国内外に約46トンのプルトニウムを保有している。さらに建設中の六ヶ所再処理工場は最大800トンの使用済み燃料を再処理でき、約7トンのプルトニウムが分離される。かつて、電気事業連合会は、2010年時点で16~18基の原発でプルトニウムを混ぜた燃料の使用(いわゆるプルサーマル)を実施する目標を立てたが、2021年現在、プルサーマルを実施する原発は4基だ。プルサーマルでのプルトニウム消費量は1基0.3トン程度なので、年間消費量は1.2トン程度に過ぎない。電気事業連合会は、六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場の新規制基準審査書が認可されたのをうけて、12月17日、2030年度までに12基以上にすると、方針を下方修正した。だがこの計画も多くの難題を抱える。なお、日本原燃は再処理については2023年度から、MOX燃料については2025年度から実際の処理を可能にするとした。
2018年当時、フランスと日本は高速炉ASTRID開発で協力関係にあった。再処理で出るプルトニウムはこのASTRIDの燃料として使うことが期待できたかもしれない。しかし2019年にASTRIDの開発は中止になった。1.3トンのプルトニウムをどのように消費するのかは、全くあてはない。
2015年、台湾は使用済み燃料再処理の海外委託のための国際競争入札を実施した。1,200体の使用済み燃料の輸送・再処理、廃棄物管理、返還含めて入札上限を3.56億ドル(約3,100万円/体)と設定した。この計画は国内事情やプルトニウムの行き先がないなどの課題から中止になったが、今回のJAEAの計画では輸送前の段階で約1,800万円/体を使ったことになる。ふげん使用済み燃料を再処理しても、プルトニウムの使い道はなく、コストもたかい。中止にして、貯蔵の道を探るべきだ。

(松久保肇)

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