脱原発基本法案 衆議院に提出さる

 2012年9月7日9時15分、脱原発基本法案が衆議院に提出された。脱原発法制定全国ネットワークが国会議員の方々に呼びかけ、36名の議員によって提出された議員立法である。さらに法案の賛同議員は67名に達している。憲政史上初の歴史的な瞬間だった。提出と同時に廃案となる可能性もあったが、議員の頑張りで継続審議となった。
1990年前後の脱原発法制定運動では350万人分の署名を集めて国会請願を行ったが、法案提出には至らなかった。隔世の感がある。提出にまでこぎつけるのに、ネットワーク事務局の面々は議員のあいだを飛び回って調整するというたいへんな作業が続いたが、その甲斐があった。
 この法案が審議されるとすれば、総選挙後のことになるだろう。準備期間の少ない中で法案提出を急いだ理由はまさに総選挙前にどうしても提出すべきと考えたからだ。原発からの撤退を求める私たちの声を総選挙に反映させたいからだった。おそらくどの党も原発からの撤退もしくは脱原発依存を口にするだろう。その中身は50年かけての撤退かもしれない。その間に新増設を含む撤退かもしれない。これでは脱原発とは言えない。そのために、明瞭で形になっているもの、すなわち法案が欲しかった。
 巷の声は即時廃止が大きい。また原発再稼働反対の声が強い。ネットワークのメンバーの誰もが即時廃止を願っている。だが、法案を提出にこぎつけるには妥協が必要であった。どの党も即時廃止を掲げてはいなかった。実際に諸準備や関連法案の制定など議論し、法的に確実な撤退を整備していく時間が必要だ。ドイツでも1998年の歴史的な瞬間は電気事業者と原発からの撤退に合意したときだった。いま再稼働を止め続けているのは市民の声に押されて自治体の長が再稼働を認めていないからだ。この状態を続けながら、脱原発法を成立させることができれば、法案に書き込まれている「最新の知見に基づく」規制の強化によって再稼働を法的に止めることが可能となる。
 法案に賛同した議員にたいしては、すでに電力会社から選挙で応援しないとの圧力がかかっている。報道によれば連合も賛同議員を応援しないという。これまで国会内で脱原発を頑張った議員はこの仕打ちに煮え湯を飲まされてきた。電力のこうした圧力を跳ね返していくために、法案賛同議員をこそ国会へ送り込んでいくという具体的な行動が必要だ。
法案は提出までの大変さもあったが、実はスタートを切ったばかりである。ようやく政治の荒波の中へ漕ぎ出した小さな船と言えよう。この法案を成立へと着実に漕ぎ進めていけるのは市民の力しかない。                      

(伴英幸)

●法案:
脱原発基本法案 2012年9月7日提出

●関連リンク:
脱原発法制定全国ネットワーク