『原子力資料情報室通信』385号短信

『原子力資料情報室通信』385号短信(2006.7.1)

※情報は執筆時点のものです

■松江市、中電に調査と耐震安全性確認の申し入れ
中電、島根原発周辺を地質調査

 島根原発から約10キロ地点で広島工業大学などの研究グループが新たな活断層を確認したことを受け、松江市は、6月27日、中国電力に詳細な調査や同原発の耐震安全性を確認することを申し入れた。

 申し入れは、広島工業大学の中田高教授らの研究グループの「島根原発の耐震安全性に疑義がある」との指摘に、これまでの中電側の主張を揺るがすものであるとし、国が耐震設計審査指針の見直しを進めていることにも触れて「市民は原発の安全性に不安を感じ、プルサーマルの住民説明会でも不安解消を求める声が上がっている」と述べ、①早急に詳細な調査をする、②調査結果と新たな耐震設計審査指針に基づき、国の指導の下、原発の耐震安全性を確認する③調査結果などを市に速やかに報告する―ことなどを要請した。

 中電は同日、島根原発周辺の地質調査をすると発表した。

 中電は2004年、島根3号炉増設を国に申請後、原発の南約2.5キロを東西に走る活断層を調べ、それまでより2キロ長い約10キロと評価した。しかし、今月、中田氏による「断層の長さ18キロ、マグニチュード7クラスの地震が想定できる一括活動型断層」などの発表を受け、18~20キロにわたってより詳細に調査することになった。

■NRC、被曝記録とトータル線量の定義など大幅な規制緩和策を提案

 アメリカ原子力規制委員会(NRC)は、原子力施設で働く作業者の被曝線量に関連するいくつかの規制の修正を提案している。

 その内容は、①現在、すべての作業者の被曝線量記録を義務付けられているが、前年度の被曝がトータル線量で1ミリシーベルト以下、あるいは個々の器官、組織の被曝線量が1ミリシーベルト以下の者については記録を作成する必要をなくす、②内部被曝も外部被曝もともに考慮するという意味での「トータル実効線量当量」の定義を修正する、③指定されたエリア内における放射性物質を含有するコンテナのラベリングの仕方に関する変更で、被曝を最小限に抑えるために訓練を受けた作業者によって扱われるなら、詳細な情報提供は省略して放射線の危険度に従いコンテナにマークすることができるようになる、④モニタリングを必要とするすべての作業者についての生涯線量記録を把握しなくてもよい。唯一必要となるのは「計画特別被曝」を設定するときのみとする、というものだ。

 この修正提案規則に関するコメントは、官報に掲載後75日間受け付ける予定という。これら大幅な規制緩和策に大きな懸念を感じる。

※386号は短信休載

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