『原子力資料情報室通信』390号短信
『原子力資料情報室通信』390号短信(2006.12.1)
※情報は執筆時点のものです
■福島第一4号炉・気体廃棄物処理系に燃料棒からの放射能漏れ
5月21日に福島第一4号炉(沸騰水型炉、78.4万キロワット)の気体廃棄物処理系で、燃料棒から放射能が漏れ出していることを示すキセノン133などの漏えいが検知される問題が起きた。キセノン133の検出値は通常1立方メートルあたり2.4ベクレルのところ15ベクレルになっており、原子炉水1グラム中のヨウ素の濃度も通常の2.21×10?2ベクレルのところ4.6×10?2ベクレルと高くなっていた。
その後もキセノン133の放出が検出されていたため、東京電力は出力を降下させた上で運転を続けていた。5月27日、漏えい燃料集合体のある範囲を特定し、その近くの制御棒のみ挿入しての運転に切り替えた。
9月29日になって、原子炉を停止して燃料を停止して漏えい燃料を交換する、と発表した。燃料集合体の型や使用履歴などは明らかになっていない。約1か月の停止期間中に、漏えいが見つかった燃料集合体1体を交換して、11月1日までに原子炉を起動した。
■玄海4号炉・加圧器逃し弁の温度上昇
九州電力の玄海4号炉(加圧水型炉、118万キロワット)で、定期検査中(調整運転中)に加圧器逃し弁Aの出口温度が高くなっているのがわかった。
この弁を分解調査したところ、弁のシート面にキズがついているのが見つかった。定期検査での分解点検の際に、異物が混入したものとみられる。シート面にキズがつきすきまができたことで、シート部からの漏れが起きていたものだろう。
玄海原発では、1号炉(加圧水型炉、55.9万キロワット)で、1979年12月と1983年9月に加圧器逃し弁のシート部に損傷が起きている。九州電力は、この弁の弁体と弁棒を新品に取り替えると説明している。
■米・ビーバーバレイ2号炉と
サマー原発・原子炉上ぶた部に損傷
10月17日、原子炉容器の上ぶたの裏側を検査していた米ペンシルバニア州にあるビーバーバレイ2号炉(加圧水型炉、89.1万キロワット)で、制御棒駆動装置の案内管の上ぶたとの接合部に亀裂が入っているのがわかった。
64体ある制御棒用の案内管はインコネル600材でできており、そのうち16番、56番、61番の3本の管に亀裂が見つかった。超音波による探傷検査によると、3本の管のJ型溶接から管の母材にまで達しているという。水漏れはいまのところおきていない。追加的に実施された渦電流探傷や液体浸透探傷によって、すくなくとも56番、61番の管の亀裂は、許容基準を超えるものであることが明らかになっている。これらの管については修理して再使用することが計画されている。
また、同日、米南カロライナ州にあるV.C.サマー原発(加圧水型炉、95.0万キロワット)でも、燃料交換停止中に原子炉容器上ぶたの検査をしていたところ、原子炉水位計の管の溶接部に小さな水漏れが生じているのが見つかった。水位計の管は直径約2センチのステンレス製で、溶接部には少量ながらホウ酸が堆積していた。
また、10月26日にサマー原発では燃料集合体にバッフルジェット流による大きな損傷が見つかっている。
■スウェーデン・リングハルス原発
3号炉が変圧器の火災で自動停止
11月4日、スウェーデンのリングハルス3号炉(加圧水型炉、92万キロワット)で、発電機から発電所内の2本の母線につながっている変圧器で火災が発生した。まもなく発電用タービンが緊急停止し、それによって原子炉が自動停止した。
火災は発電所内の消防隊と地域の消防隊によって消し止められた。非常用ディーゼル発電機は起動に成功したが、予備の海水循環ポンプ1台が起動に失敗している。結果的には制御棒は全挿入されていたが、制御棒位置表示システムへの電気の供給が一時的に止まった状態に陥っていたことが判明した。