『原子力資料情報室通信』389号短信
『原子力資料情報室通信』389号短信(2006.11.1)
※情報は執筆時点のものです
■志賀2号炉・蒸気止め弁の研磨用金属粒が高圧タービンに流入
志賀2号炉(ABWR、135.8万キロワット)の高圧タービンの車室内で9月28日に発見された多数の小さな金属球(直径2?3ミリ、約900個)は、主蒸気止め弁の製造時に内部の研磨作業(ショットブラスト)に用いたものである、と北陸電力が10月12日に発表した。これは製造時の記録、および主蒸気止め弁を分解点検した際に、弁内部の旋回防止板と弁箱とのすき間で金属粒が見つかったことから、北陸電力が原因と推定しているものだ。志賀2号炉は日立製作所による低圧タービンの動翼の設計ミスが発覚し停止している。
主蒸気止め弁から高圧タービンへと蒸気の流れにのって入り込み、高圧タービンの動翼に微小だが多数のキズをのこしている。
金属粒が高圧タービンの車室内まででとどまっているという保証はない。金属粒が他の機器へと入り込むには大きくわけて、湿分分離加熱器→低圧タービン→復水器という主蒸気の流れ、または、高圧タービン→第1、第5、第6給水加熱器の胴側という加熱用蒸気の流れの2つがある。それぞれの機器内部の配管を損傷した可能性もある。第5、第6給水加熱器へ入り込んだものが多量なら、伝熱管に大きなキズをつけ、そこから入り込んだものが、めぐりめぐって原子炉へと到達する可能性もゼロとはいえない。
北陸電力は湿分分離器、復水器、給水加熱器など、金属粒が流入した可能性がある機器の点検を続けるとしている。
■島根1号炉・復水貯蔵タンク
水位計配管で腐食減肉
定期検査中の中国電力・島根1号炉(BWR、46万キロワット)で10月13日、復水貯蔵タンクの水位計配管取り付け部で、技術基準の必要厚さを下回っている場所のあることがわかった。
復水貯蔵タンクは圧力抑制プールとともに、緊急炉心冷却装置の1つである高圧注水系の水源として使われる施設である。
減肉がすすんでいたのは水位計の下側配管の取り付け部周辺で、技術基準で最低限必要な厚さが9.9ミリであるのに対し、もっとも薄いところでは8ミリしかなかった。腐食による減肉がすすんでいたためと推定されている。
■横須賀港・米軍原子力潜水艦の排水からコバルト検出
横須賀港を9月14日に出港した米海軍の原子力潜水艦ホノルルの排水から放射性物質のコバルトが検出された、と文部科学省が9月27日に発表した( www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/09/06092899.htm )。
原潜を追尾しながら採取した海水から、コバルト58(半減期70.88日)を2.1±0.4 mBq/リットル、コバルト60(半減期5.25年)を1.2±0.3 mBq/リットルを検出した、という。いずれも強いガンマ線を出す放射性物質である。
原潜に何らかの異常があったのか、通常の操作の範囲での排水によるものかは不明で、米軍は一切あきらかにしていない。(P16へ続く)
量の大小にかかわらず、海水(排水)から放射能が検出されたことは重大な問題だ。過去に佐世保で放射能が検出されたこともあり、これまでに横須賀でも放射能を放出していた可能性も否定できないことから、広く海底の砂・泥などを採取して調査を行なうべきである。