『原子力資料情報室通信』388号短信

『原子力資料情報室通信』388号短信(2006.10.1)

※情報は執筆時点のものです

■浜岡5号炉タービン動翼破損
流体振動防止設計の欠落による高サイクル疲労

 9月12日に中部電力は、6月15日に起きた浜岡5号炉(沸騰水型炉、138万キロワット)の低圧タービン動翼破損の原因調査について、蒸気の乱流や逆流によって振動が発生したことが原因とする調査内容を公表した。
 3基の低圧タービンのうち、AおよびCについては8段目から12段目までを、最初に異常がみつかったBについては8段目から14段目の動翼を目視と磁粉をつかって点検した。その結果、これまで異常が見つかっていた12段目以外には異常はみられず、12段目に折損・ひび割れが集中して起きていることがあらためてわかった(840本のうち663本に損傷あり)。
 中部電力によると、折損した動翼の破面を観察したところ高サイクル疲労のあとがあるという。高サイクル疲労を引き起こした原因については、タービン内を通過する蒸気の乱流による振動(ランダム振動)および給水加熱器からの急激な逆流による振動(フラッシュバック現象による振動)が原因であると推定している。ランダム振動は、タービンが回転していても発電をしていないかもしくは低い出力でしか発電していない状態で発生し、また、フラッシュバック現象は発電を急にやめた時に発生することが知られている。
 浜岡5号炉の発電用タービンを設計・製作した日立製作所が、浜岡4号炉(沸騰水型炉、113.7万キロワット)用の発電用タービンからの大型化および高効率化をはかった際に、これらの振動による応力を十分考慮していなかったことがあきらかになっている。たとえば、5号炉ではタービンの大型化にともなって翼の長さを長くしており、ランダム振動の影響を受ける範囲が従来のものより広く12段目までおよぶことが今回の調査でわかったが、共振発生の回避や強度の増強など、これらについての対策は施されていなかった。

■対印原子力貿易規制撤廃に反対の要望書提出

 9月6日、原子力供給国グループ(NSG)の対印原子力貿易規制撤廃に反対する要望書を48団体の連名で総理大臣に提出した。米印原子力協力協定はインドの核開発を進め、ひいてはアジアの核拡散を促す結果になるだろう。日本がNSGでインドへの輸出規制を撤廃することに反対すれば、この事態を避けることができる。
 同日開いた記者会見には原子力資料情報室、日本原水爆被害者団体協議会、グリーンピース・ジャパン、原水爆禁止日本協議会、原水爆禁止日本国民会議、日本キリスト教協議会平和・核問題委員会、ふぇみん婦人民主クラブ、ストップ・ザ・もんじゅ東京が参加し、反核・反原発運動が一体となって強いメッセージを伝えた。被爆国日本の核不拡散・核廃絶の姿勢を問い、この問題の重大さを証言した。
 要望書をNSGのメンバー国の在日大使と核軍縮・議員ネットワーク(PNND)の日本人のメンバーにも送った。

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