新品の浜岡5号でタービン破壊事故(UPDATE)

浜岡5号炉タービン大破壊-志賀2号炉でも亀裂、ABWRの設計上の問題か

■低圧タービンの動翼が折損し原子炉停止

 浜岡原発5号炉(ABWR、138万キロワット)で運転中に、発電用タービンの動翼(回転翼)が根元から折れて車軸から飛び出すという、とんでもない事故が起きた。過去に海外では、破損したタービン翼がカバー(ケーシング)突き抜けて、タービンミサイルとなって発電機の冷却用水素の漏えいをひきおこし、大火災を招いた例もある。

 浜岡5号炉は、2005年1月18日に営業運転を開始したばかりである。

 これまでにわかっている事実関係をまとめておく。

 6月15日午前8時39分に「タービン振動過大」の警報が鳴りタービンが停止し、続いて原子炉が緊急自動停止した。浜岡5号炉の発電用タービンは、高圧タービン1つと低圧タービン3つからできている。警報は、低圧タービンBの両側の軸に取り付けられた第5軸振動検出器と第6軸振動検出器で検知された異常に大きな振動によって発信された。

 中部電力は、6月19日からタービンのカバーを外して内部の点検を行なったところ、低圧タービンBの第12段(外側から3段目)のタービン動翼1本がとれて落下しているのが見つかったと、6月23日に公表した。車軸への取り付け部(フォークと呼ばれている)が折れていたという。

 この動翼は、長さ53センチ、幅12センチ、厚さ3センチ、重さ9キロのクロム鋼製のものだ。脱落した動翼1本は低圧タービンBの下部のすきまに挟まっているところを回収されたが、ぐにゃぐにゃに曲がって原形をとどめていなかった。タービン内部の構造物にも多数の傷跡が残されていた。車軸にも亀裂ができていた。

■第12段タービン動翼の8割に折損・亀裂

 当初、折損した動翼が見つかったタービンBの第12段の目視点検を行なった段階(6月30日)で、140本の動翼のうち、29本に折損、18本に亀裂が見つかったと、中部電力は発表していた。その後、磁粉探傷などを用いて点検をすすめ、タービンAおよびCの第12段まで調査を行なったところ、840本中、実に663本の動翼の取り付け部に異常が起きていることが明らかになった(7月11日公表)。また、タービンBについては脱落が起きた両側にあたる発電機に近い側の第13段の160本、第14段の122本の点検も行なったが、そこでは異常は見つからなかった。車軸には15箇所に亀裂が見つかっている。

 破損原因については、まだ未解明だが、報道で電力会社やメーカーが示唆しているように設計ミスである可能性が高い。浜岡5号炉の発電用タービンは「日立」製で、おもな仕様をあげると、型式は「くし型6流排気復水式(再熱式)」、電気出力138万キロワット、蒸気圧力68.2kg/cm2、蒸気温度は摂氏284度、回転数は毎分1800回転である。

www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0615_1.html
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0615_2.html
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0623_1.html
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0630_2.html
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0706_1.html
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0711_1.html

■志賀2号炉でも亀裂発見

 原子力安全・保安院は6月30日、浜岡5号炉と同じ型の蒸気タービンの北陸電力・志賀原発2号炉(ABWR、135.8万キロワット)に対して、低圧タービンの第12段の動翼の点検をすることを求める指示文書を出した。

 志賀2号炉は蒸気タービンの点検のため7月5日に原子炉を手動で停止された。今年3月15日に営業運転開始後、3月24日の金沢地方裁判所の「運転してはならない」という判決が出たあとにも、のうのうと動かしつづけていた原発である。

 北陸電力が7月18日に明らかにしたところによると、低圧タービンBの動翼15本の点検を終えたところ、2本の取り付け部にひび割れが起きていたという。続いて7月25日の時点では調査された560枚のうち146枚に亀裂が発見された。今後の調査でさらに事態が大きくなる可能性がある。

www.rikuden.co.jp/press/attach/06070401.pdf
www.rikuden.co.jp/press/attach/06070502.pdf
www.rikuden.co.jp/press/attach/06071801.pdf
www.rikuden.co.jp/press/attach/06072501.pdf

 両原発とも運転開始間もない段階での事故であり、設計上の問題が潜んでいる可能性は十分あり、場合によっては他の原発の蒸気タービンでも破損が起こる危険はある。(上澤千尋)

参考:
『日立評論』2006年2月号「北陸電力株式会社志賀原子力発電所2号機の完成」
www.hitachihyoron.com/2006/02/02a01.html
www.hitachihyoron.com/2006/02/pdf/02a01.pdf


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新品の浜岡5号でタービン破壊事故

※続報:浜岡5号の当該タービンで他の羽根にも多数の亀裂を発見。志賀2号(ABWR・135.8万kW)に同型タービン使用。大型化が裏目に出たか?ABWRの設計が問われる。浜岡5では羽根はピンによってタービン軸に固定されているが、はずれた羽根(低圧タービンB)の取付け部とピンがともに破壊していた。また他の羽根も取付け部に折損(28本)ないし亀裂(18本)があった。低圧タービンAでも折損・亀裂があった。志賀2号(運転中)も止めて点検すべき。
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0630_2.html

6月15日、中部電力浜岡原発5号のタービンが振動のため停止し原子炉も自動停止した。振動を検出したのは低圧タービンの振動検出器。
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0615_1.html
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0615_2.html
www.meti.go.jp/press/20060615006/20060615006.html

浜岡5号はABWR・135万KWで2005年1月18日運転開始。第1回定期検査を終えて3月から再起動したばかりだった。タービンの異常は原子炉の運転状態に影響する。沸騰水型炉では原子炉で熱せられた冷却水が直接、蒸気としてタービンを回して発電し、原子炉に戻っていく。中部電力が調査したところ、低圧タービンの羽根(クロム鋼、9kg、53cm)140本のうち1本が折れて下部に落下していた。
www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2006/0623_1.html

破片はすべて回収されたのか。復水とともに原子炉の方向へ流れていないか。タービンが破損すると断片が高速で飛散して原発自体や労働者に被害をもたらす可能性も否定できない。当該タービンの回転数は1800回/分。運転開始後1年で破壊したのはなぜか、破壊の機構と原因はもとより、飛散せず下部に落ちたことが偶然なのかも問題となる。

中部電力は「その周囲の羽根や機材の一部にも、擦り傷やへこみがあることを確認した」としており、最初に破壊した羽根が他の部分も連鎖的に破壊してしまう可能性もあったのではないか。運転開始前や運転中、第一回定検に際して予兆に相当する情報はなかったのか。製造段階、組立て段階、運転開始前、第一回定検などの各段階において当該タービンに関してどのような記録が残されているか。精査すべきである。

浜岡1~5号のタービンはすべて日立製で、他には女川3号、福島第二2・4号、柏崎刈羽4・5号、志賀1・2号、島根1・2号のタービンが日立製。今回の事故は浜岡原発全体はもちろんのこと、他の原発についても不安を投げかけており、徹底的な調査点検が必要だ。


2002年、四国電力伊方原発1号のタービン架台について告発があり、原子力資料情報室はタービン一般の問題を含めてドキュメントを作成した。下に掲載する。

伊方原子力発電所1号炉におけるタービン架台(コンクリート構造物)のひび割れの告発について【PDF】


原子力百科事典ATOMICA「海外原子力発電所におけるタービン火災事故」
mext-atm.jst.go.jp/atomica/02070418_1.html

【タービンなどの関連事故の例】

[泊]1991年4月27日……1号炉でタービン静翼に亀裂発見。
[泊]1991年8月1日……2号炉でもタービン静翼に亀裂発見。
[女川]1990年11月19日……調整運転中の1号炉がタービン軸受けの温度上昇で原子炉自動停止。
[福島第一]1990年7月26日……定検中の3号炉で給水流量制御弁のトラブルでタービンが自動停止。原子炉手動停止。
[福島第一]1990年10月17日……1号炉でタービン軸の振動が大きくなったため、原子炉を手動停止。
([福島第一]1992年1月28日……調整運転中の2号炉の給水ポンプタービン軸が異常振動。31日に原子炉手動停止。)
[福島第二]1981年10月28日……試運転中の1号炉が、蒸気タービン軸振動増加のため自動停止。ECCS作動。
[柏崎刈羽]1997年5月21日……試運転中の7号炉で、タービンの蒸気入口近くにある蒸気圧力検出用配管が破断したため、原子炉手動停止。
[柏崎刈羽]2004年11月4日……中越地震の余震によるタービン振動で、7号炉が緊急停止。
[東海]1981年3月25日……東海第二がタービン系誤信号により自動停止。
[東海]1993年4月16日……東海第一の低圧タービンに19箇所の亀裂を発見。
[敦賀]1994年4月13日……1号炉で、タービンからの蒸気漏れが見つかり、原子炉手動停止。
[敦賀]2005年11月11日……1号炉で、低圧タービン駆動蒸気パッキンの継ぎ目から水漏れ。
[美浜]1981年11月2日……1号炉で、タービン回転翼のひび割れによる異常振動、4日原子炉手動停止。
[美浜]1993年8月18日……調整運転中の1号炉で、タービンの油圧系に異常発生、原子炉手動停止。
[大飯]2000年2月19日……2号炉で、人為ミスによるタービン停止。原子炉手動停止。
[島根]1988年7月11日……試運転中の2号炉で、保護リレーの誤動作によりタービン発電機自動停止、原子炉手動停止。
[島根]1988年11月13日……調整運転中の1号炉で、復水器真空度の異常によりタービン軸が振動、原子炉手動停止。
[伊方]1984年2月17日……1号炉で、タービン翼に損傷発見。
[伊方]1987年2月3日……2号炉で、燃料集合体の異常、タービン翼溶接部に異常発見。
[玄海]1993年9月24日……試運転中の3号炉のタービンで異常振動、原子炉を手動停止。
[川内]1999年8月25日……1号炉でタービンと原子炉が自動停止。
[ふげん]1995年4月24日……調整運転中のふげんで、回転数の異常の誤信号でタービンが自動停止。

原子力市民年鑑をもとに編集