志賀原発の敷地内活断層の評価をめぐって

『原子力資料情報室通信』第586号(2023/4/1)より

 原子力規制委員会は、規制基準適合性審査中の志賀原発の敷地内にある断層が13万~12万年前以降には活動していないため、規制基準に定める「将来活動する可能性のある断層等」(「活断層等」)にはあたらないとする北陸電力の説明を了承した。
 「志賀原子力発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合」は、敷地の陸域にある断層のうち、S-1、S-2・S-6(当初S-2とS-6の2本の断層とされていたが現在は1本の断層とされている)の2本の断層について、13万~12万年前以降の活動が否定できないことから、規制基準に定める「活断層等」であると、2016年4月に結論を出している。
 S-1は1号炉の原子炉建屋をかすめてタービン建屋の真下を通り、S-2・S-6は1号炉と2号炉のタービン建屋の真下を通る位置にある(図1)。これらが「活断層等」であると認定されたままだと、原子炉建屋およびタービン建屋という安全上重要な施設が直上に存在することになり、志賀原発は1号炉・2号炉とも即廃炉となる。
 これに対して北陸電力は、S-1、S-2・S-6をふくむ志賀原発の敷地内にある断層について、断層を横切る鉱物脈の顕微鏡写真や物性を表す資料などの活動性を否定するためのデータを大量に取得した。これによって、敷地内の断層は13万~12万年前以降には活動しておらず、「活断層等」ではなく、「震源として考慮する断層ではない」と北陸電力は説明してきた。
 3月3日の審査会合で、志賀原発の地震・地盤問題を担当する審査チームは、有識者会議の結論を覆し、北陸電力の説明を妥当なものとした。さらに、3月15日の規制委員会の会合では、有識者会議と異なる評価をくだすにあたって、あらためて有識者会議の意見を聞く必要はない、と審査チームの方針を了承した。
 しかし、そもそも敷地内のこれらの断層は地震を起こす主断層(起震断層)とは考えられず、より大きな活断層が動いたときに副次的にうごくような性質のものである。S-1やS-2・S-6などのそれぞれの断層トレース全体が地震のたびに動くとは限らない。したがって、北陸電力が示した局所的に断層の活動性を否定するやり方では十分とはいえない。また、トレンチのスケッチに記されている活動した事実は消し去ることはできず、将来の地震で敷地内の断層がうごきだす可能性はある。図2に示すように、志賀原発は、2007年能登半島沖地震の資源となった活断層をはじめ、周辺をたくさんの活断層に囲まれている。とくに、渡辺満久さんらによる富来川南岸断層が海域で南北方向に向きを変えて、志賀原発の前面海域までのびているという指摘は重要である。 

図1志賀原発の建屋配置と敷地内の主な断層

 

 

図2 志賀原発周辺の活断層

 

 

(上澤千尋

原子力資料情報室通信とNuke Info Tokyo 原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。
毎年の総会で議決に加わっていただく正会員の方々や、活動の支援をしてくださる賛助会員の方々の会費などに支えられて私たちは活動しています。
どちらの方にも、原子力資料情報室通信(月刊)とパンフレットを発行のつどお届けしています。