総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会(平成25年度第2回)へ提出した意見書
当室共同代表の伴が委員として参加する「総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会」の第2回に提出した意見をご紹介します。
放射性廃棄物小委員会第2回意見書
2013.6.20
伴英幸
論点整理(案)は、処分地選定が進まない中で、既存の処分事業計画を円滑に進めていく方策をまとめようとしているようだが、今求められているのは、国が従来の姿勢や枠を超えて議論を尽くすことだと考える。
既に発生した廃棄物は現世代で処分の道筋をつけたいというが、このトリッキーな表現に多くの人が疑問を抱いていると考えられる。なぜなら、原発利用が政策上はエンドレスとなっているのだから、処分対象物は「既に発生した量」を超えて将来発生する量を含んでいる。計画に見る処分量、ガラス固化体 4 万本は費用対効果上の最低の数量であり、しかも福島事故前の計画では2020年ごろまでに発生した量である。一旦、処分地として了解すれば「既に発生した量」を大きく超えて処分されることになるのは必至だ。高レベル放射性廃棄物が既に発生していることは事実としても、この表現は政府や電力会社の“騙しのテクニック”と多くの人には映るのではないか。したがって発生量の上限を決めることが処分事業の受け入れ可能性を高めると考える。
論点A:当小委員会と総合エネルギー調査会総合部会との双方向のやり取りを行うべき国論が二分されているというが、しかし「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」(国民的議論に関する検証会合の検討結果2012年9月)。脱原発の時期では意見が分かれているが、なお、7 割が脱原発を支持している(2013 年2 月17 日朝日新聞調査結果)。この動向に耳を傾けて政府が政策を作っていけば、廃棄物の総量が確定して、廃棄物政策に関する議論が進んでいくと考える。
原子力政策は議論されている総合部会に任せて、当小委員会は原子力利用の結果としての廃棄物処分について議論する、という姿勢ではこれまでと変わらず、これでは解決策を見いだせないだろう。また、放射性廃棄物の発生を無視した原子力政策はあり得ないのだから、総合部会と当小委員会の双方向のやり取りを行うべきだ。審議の途中段階で、そのような機会を作るべきだ。
論点B-2:可逆性と回収可能性を担保する制度を導入する
①には可逆性・回収可能性を維持する考え方を制度上明確化すると提案されている。しかし、適切な時期に地元住民に問う制度として明確化するべきだ。さらに、事業の透明性の確保が非常に重要な鍵となる。
論点C:処分推進活動を5 年間凍結(モラトリアム)する
現状を原子力政策にたいして「国民的合意がない」(1996 年 3 県知事提言)状態の中で福島原発事故が起きた。これによって原子力政策への信頼は完全に失墜していると認識するべき。
処分推進事業が処分地選定調査に着手できない状態が結果として続いていくのと、モラトリアムを決めて議論を進めることとは本質的に異なる。そして、モラトリアム期間に日本学術会議「回答」にうたう 6 項目の提言を誠実に実行する。信頼の観点からは、とりわけ、提言 2 の「専門的で独立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討議の場の確保」、並びに提言5にいう多段階合意形成のための討論の場の設置を行う。資源エネルギー庁がさまざまなステークホルダーを加えた事務局を設置して、その事務局で運営を行っていくのがよいと考えている。
論点D:処分地の選定に際して、住民投票制度をシステムとして導入する
議会制民主主義ではあるが、すべての事案に対して、議会による決定が必ずしも民意を反映するとは限らない。そのような場合に、シングルイッシューに対して住民に直接問うて判断する仕組みが必要だ。特に、処分地選定問題では、当該地域を2分するような事態に陥ることが想定されるので、住民投票による判断をシステムとして組み入れるべきだ。
論点E:①審議過程の公開ならびに常時の意見募集と応募内容の公開
総合部会は会議の様子を動画で公開し、かつ常時の意見募集と応募内容の公開を実施している。当小委員会も同様の対応を取るべき。これは論点E②の「国民理解に向けた議論」を進める上でも必要な対応だと考える。
論点E:②原発の是非と廃棄物まで含めた討論の場を設定する
縦割り行政の弊害を排し、原発から廃棄物までを議論する場、例えば、討論型世論調査を実施する。効果の薄かった高レベル放射性廃棄物の広報に毎年数十億円かけていることを考えれば、こうした試みに費用をかける価値も意義もある。資源エネルギー庁による実施あるいは、C で提案した事務局による実施が考えられる。