総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会(平成25年度第1回)へ提出した意見書

当室共同代表の伴が委員として参加する「総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会」の第1回に提出した意見をご紹介します。


 

放射性廃棄物小委員会第1 回意見書

2013.5.28
伴英幸

1. 高レベル放射性廃棄物をこれ以上作り出すべきでない

理由:
① 原子力発電の恩恵を受けない後世代の人たちが被ばくのリスクだけを受けることになることは倫理的に許されないことだ。
② 地層処分懇談会の報告書には「後世代に負担を残さないことが我々の責務」としているが、負担を残さないもっとも効果的な対応は、これ以上作り出さないことだ。
③ 民主党政権下で行われた選択肢をめぐるパブコメ、討論型世論調査などで示された世論は脱原発を支持している。2013 年 2 月 17 日に朝日新聞が実施した世論調査でも 7 割の人々が脱原発を支持していた。
④ 双方向シンポジウムでも、放射性廃棄物処理・処分の厄介さを考えるとまずこれ以上作り出さないという姿勢が重要との意見が出た。
⑤ 日本学術会議の回答「高レベル放射性廃棄物の処分について」では、「これまでの高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し」ならびに「暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築」が提言されている。総量管理には2つの概念(総量の上限の確定と総量の増分の抑制)が含まれているが、抜本的見直しという回答の主旨からは総量の上限の確定に関する国民的な討論を進めるべきだ。

2. 電力会社の顔が見えない!!

2002年から始まった公募に対して応募がない状況から、国が積極的に前に出るべきとか、原子力は国策で進めているのだから国が責任を持つべきといった声が聞かれるが、しかし、公募期間中に電力会社がどこまで積極的だったのか極めて疑問だ。面倒なことは国任せになっているのではないか。国が前面に出る前に、原点に立ち返って、電力会社が発生者責任を自覚して「本気度」を示すべきではないか。
(電力会社は2030 年代に原子力をゼロとする国策に強固に反対したのだから、もはや国策といって言い逃れはできまい。)

3. 地層処分をエンドポイントとせずに国民的討論を進めるべき

理由:「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性」(通称2000年レポート)報告書はこの「まえがき」にあるように、地層処分の技術的信頼性を示すためにまとめられたものである。地層処分は前提で、かつ、あらかじめ出すべき結論が決まっていたと言いても過言ではない。国民的な討論の場では地層処分は一つの選択肢と位置付けて議論を進めるべきだ。

地層処分では埋め戻す前は回収可能とか、地元自治体の了解を得て埋め戻すとか言われている。しかし、実際問題として、可逆性が確保されるのだろうか?

4. 地層処分の安全性を高める研究を進める

日本ではまだ安全目標が定められていない。処分場の選定の後に諸条件をすり合わせて安全目標を定める。これは場所の選定に柔軟性を持たせるかもしれないが、合意形成の議論は進まないだろう。将来世代の被ばく線量を限りなくゼロにすることを目指して予め安全目標を定めるべきだ。
その上で、その安全目標をクリアするため、地層処分の安全性をいっそう高める技術を広く柔軟に選択していくべきではないか。

アメリカでは最近ボアホール技術に再び焦点が当てられつつあるという。掘削技術の向上が背景にあると考えられる。また、原子力環境整備機構と原子力環境整備・資金管理センターとの共催で本年2月5日に開催されたドイツの廃棄物対策に関する講演会でも、DBETEC では840m地下坑道からさらにボアホールを掘り処分研究を進めていた。新しい技術にも目を向けて安全性を高める努力をするべきだ。

5. 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に規定されている 300 メートル以深に処分するとの文言を堆積岩で500 メートル以深、花崗岩で1000 メートル以深と修正するべき。

理由:法律に規定されていれば、深さ 300m程度のところに処分場が建設されることになってしまうだろう。少なくとも法律違反にはならない。他方、2000 年レポートは500m、1000mの条件で安全評価を行っている。そして 300 メートル程度の場所での処分の安全評価は行われていない。にもかかわらず 300 メートル以深で安全だとの宣伝が行われている。地消処分の安全性に大きな誤解を与えているのではないか。

6. 直接処分の研究開発を継続的にすすめるべき

2005年の原子力政策大綱では「政策選択に関する柔軟な検討を可能にするために使用済燃料の直接処分技術等に関する調査研究を、適宜に進めることが期待される」としていたが、調査研究が進められていなかったことが2011年に明らかになった(核燃料サイクル技術等検討小委員会)。今般予算化されたようだが、継続的な研究開発を進めるべきだ。

7. 参考資料8-9ページの記述は、再処理すれば放射能が少なくなるかの誤解を生む恐れがあり、掲載するべきでない。仮に掲載するなら、回収ウランやいっそう厄介なMOX使用済み燃料についてもきちんと記述するべきだ。

再処理やFBRサイクルを導入した場合とあたかも実用化できるような書き方になっている。これは“ならばFBRサイクル導入まで使用済み燃料を貯蔵しておけば高レベル廃棄物を大きく減らせる”との誤解を生む。これが誤解なのは、FBRの実用化はありそうもないからだ(100%自然エネルギーの方が、はるかに現実性がある)。このような幻想を振りまくことはやめるべきだ。