福島第一原発4号機の核燃料取り出し作業始まる―きびしい廃炉作業に向けての第1歩

『原子力資料情報室通信』第474号(2013/12/1)より

 東京電力は、福島第一原発4号機の使用済み核燃料プールにある燃料集合体の取り出し作業を11月18日から開始した。取り出し作業では、クレーンを手動操作して核燃料を輸送容器に入れた後、プールからつり上げ、約100メートル離れた保管用共用プールヘ運ぶ。
 通常は自動制御でクレーンを操作するが、爆発の影響で燃料が定位置にあるとは限らない。今回は作業員が目で燃料の位置を確認しながらの作業となる。保管されている核燃料1,533体(使用済み1,331体、未使用202体)の取り出し完了は来年末の予定とされている。作業は6人ずつ6班体制で最長2時間ごとに交代で行い、作業員の1日の被曝線量は0.8ミリシーベルトと試算されている。
 放射線量の高い現場なので、作業員は全面マスクと防護服を着装してクレーンを手動操作しなければならないという困難がある。
 4号機のプール内には、水素爆発した際、大量のがれきが落下した。大型のがれきは撤去されているが、燃料とラックのすきまには小さいがれきがまだ残っている。今回の取り出し作業で、核燃料をクレーンで引き出すときに引っかかって核燃料が破損すると、外部に放射性物質を放出させる危険性がある。
 これまで東京電力は明確にしてこなかったが、3.11の事故以前から福島第一原発の各号機の使用済み燃料プールには過去の作業で変形や破損が確認された燃料が80体も存在することを明らかにした。
 4号機の燃料体取り出しの直前の11月15日に公表した「福島第一原子力発電所4号機からの燃料取り出しにかかる安全対策等」という資料の「漏えい等を確認した燃料の取扱い」という項目の備考欄に、1号機に70体、2号機に3体、3号機に4体、4号機に3体の破損燃料が保管されていることを記した。
 しかも、これらの破損燃料をどのように取り出し、運ぶかはこれから調査しようというのだ。原子力安全基盤機構は同15日、「平成25年度 破損燃料輸送に係る技術調査」の入札を公告している。破損した燃料は破損箇所から放射性物質が漏れるため、他の燃料と同様の扱いはできない。破損の状態をていねいに確認し、適切な対策をたてなくてはならず、専用のキャスクが必要になる可能性もある。
 今回の4号機は未使用の新燃料の取り出しからスタートしているが、今後困難が予想される。
 4号機の後は1~3号機の核燃料プールからの燃料取り出し、さらに溶融燃料の取り出しと進む。しかし、1~3号機の建屋は4号機よりはるかに放射線量が高く、建屋の中のプールからの燃料取り出しの方法すら決まっていない。溶融燃料の取り出しに至っては史上初めての経験である。

被曝線量限界
熟練技術者・作業員の不足の現場

 困難な作業が続く中、被曝線量がいっぱいになり、現場に出られなくなった熟練技術者、作業員が増え、労働者不足が深刻化している。熟練者不在の現場では、作業時間が長引き、被曝線量が上がり、作業員は疲労困憊に陥っている。
 この間、タンクからの汚染水漏れや汚染水処理装置のずさんな配管工事による作業員の被曝事故が発生した。台風や集中豪雨の影響もあり、汚染水処理対策の作業環境は劣悪化し、汚染水による被曝は避けられない状況であった。
 東京電力の汚染水・タンク対策本部は11月8日、廃炉作業や汚染水・タンク問題対策の加速化・信頼性向上を目的として、緊急安全対策を発表した。作業員確保のため、労働環境の改善策などを示した。
 2011年12月の「収束宣言」以来、コスト削減で競争入札を拡大してきたため、現場に詳しい企業が受注できない状態になっていた。また、多重下請け構造の中で、作業員の日当が下がり続けてきた。
 東京電力は、下請け作業員の設計上の労務費割増分を12月から1日1万円から2万円に増額すると、初めて金額を開示した。手当ての中抜きを防ぐねらいであろうが、民間企業同士の請負契約では管理に限界がある。「中抜きが増えるだけではないか」との声が噴出している。増額分が確実に作業員の手元に渡らなくてはならない。そのためには、国が前面に立つ必要があるだろう。
 また、長期の工事量が見通せない状況の中で、各企業の雇用確保が困難になってきている。そのため、工事の発注方法を現行の競争入札制を見直し、11月からは作業に習熟した企業に継続的に発注することにしているという。廃炉が本格化すると、プラントを熟知した技術者、作業員が必要となる。労働者を使い捨てにするのではなく、作業がない期間つなぎになる仕事を保証したり、作業員の被曝線量が高くなった場合どうするかなどの問題についての取り組みが必要だ。
 原子力資料情報室は、全国労働安全衛生センター連絡会議やヒバク反対キャンペーンなど多くの団体とともに、福島事故における被曝労働に関して関係省庁と交渉を重ねている。12月5日には第11回目の交渉となる。
 福島第一原発などにおける労働相談の充実に向けて/事故収束作業の災害防止、被曝防護対策のための安全衛生活動の徹底と原子力事業者の安全衛生責任の強化/従事する労働者の被曝線量管理をはじめとする労務管理の一元化/緊急作業に向けた法整備/緊急作業従事者等の長期的健康管理/被曝線量管理制度の改正と健康管理手帳/放射線障害の労災認定/メンタルヘルス対策/内部被曝評価など多岐にわたるテーマについて率直な意見交換と問題解決のためのより良い制度、施策を実現するため、関係省庁の担当者と話し合いを行う。ご参加ください*。  (渡辺美紀子)

*詳細は開催案内をご覧ください。