タニムラボレターNo.017 関東水域の放射能汚染を読み取る

『原子力資料情報室通信』第474号(2013/12/1)より

 

 

 

 

 

 この夏、江戸川のウナギから規制値をこえる放射性セシウムが検出され話題になりましたが、関東平野の汚染に関して、放射性物質が河川を通じて東京湾に蓄積し事故から数年後に汚染のピークになるという予測がありました。
 環境省は、河川の水質や底質(川底の土)、周辺環境(河川敷等)、沿岸の底質(海の土)などの放射性物質濃度を調査し、定期的に結果を公表しています*1。地図上の点が調査地点に対応します。このような広範囲の水域調査は2011年10月から始まりました。
 調査開始が原発事故から半年以上経過した後ですから、河川水からは放射性セシウムは検出されていません*2。河川の底質からは高濃度のセシウムが検出されており、51カ所中18カ所で1,000 Bq/kgをこえる値が検出され、最大値は大堀川上沼橋の7,600 Bq/kgでした。一方、東京湾底質では、7カ所中3カ所が検出限界(10 Bq/kg)以下で、最大値は旧江戸川河口沖1キロメートル地点の580 Bq/kgでした。現在のところ、東京湾底質の放射性セシウム濃度は、河川底質ほど高くありません。
 河川周辺環境からも比較的高濃度の放射性物質が検出されています。51カ所中18カ所で1,000 Bq/kgをこえる値が検出され、最大値は旧江戸川浦安橋で3,300 Bq/kgでした(11月公表、セシウム-137+134合計値)。浦安橋の測定値は日によって大きく上下していますが、江戸川の上流部の値は安定しています(下図)。調査地点は水が流れこむ場所なのか、整地された公園のような場所なのか詳細は不明ですが、環境によっては放射性セシウムの時空間的局在化が進んでいることがわかります*3。身の回りの環境の細やかな放射能測定が必要だと考えさせられます。(谷村暢子)

*1 環境省ウェブサイトwww.env.go.jp/jishin/monitoring/results_r-pw.html
*2 セシウムは水に溶けた状態でなく、土壌に固着した状態で河川を移動するといわれている
*3 江戸川区発表の江戸川河川敷の空間放射線量の値においては、水が流れ込まない車両道路河川敷側境界が高い値を示している。
   www.city.edogawa.tokyo.jp/edg/arakawa_sokutei/index.html