【連載】水道水のセシウム濃度調査 第5回 汚染は上流と下流でどうちがう?

【連載】水道水のセシウム濃度調査 第5回 汚染は上流と下流でどうちがう?

前号で、河川水に含まれる放射性セシウムの測定結果を公表したところ、「森林にフォールアウトした放射性物質は除染できずにそのままあるので、上流の河川水の方が下流より汚染がひどいはずでは?」という声が寄せられました。
私たちの調査は東京の限られた範囲のみを対象としています。広域的にどうなっているかを考えるために、環境省による「公共用水域放射性物質モニタリング調査結果」(1)を見てみました。この調査は、河川だけでも約400か所もの膨大な地点の結果が公表されています。そのうち利根川主流(地図1~5)および、そこから分岐している江戸川(地図6.7)のデータを拾い上げ、各地点の河川底質(川底の土)のセシウム濃度(年間の平均値)をグラフ化して比較しました。河川水のセシウム濃度は検出限界値以下ばかりで比較できませんでした。
グラフからは、利根川主流において上流と下流のどちらかがより汚染が高いというような傾向は見られませんでした。放射性物質が上流から下流に移動するとすれば、上流側ほど濃度の減衰が大きい可能性もあるのではと考えましたが、そのような傾向もみられませんでした。セシウム濃度が前年より高いケースもあるので、採取地点によるバラツキの寄与分も大きいのかもしれません。
利根川は地図上の地点3付近で、利根川主流と江戸川にわかれますが、利根川(4.5)より江戸川(6.7)のセシウム137濃度が高いことは明らかです。地点6と7の濃度を比較すると、すべての年で下流側7の方が放射性セシウム濃度が高く、より多くのセシウムが集まっていることが分かります。航空機モニタリングマップ(2)を見れば、東京と千葉の境界地域に比較的多くの放射性物質がフォールアウトしたことが分かります。都市部は露出土壌が少ないですから、土壌に浸み込まないで川に流出する放射性物質の割合が森林部より大きく、多くのセシウムが江戸川に移動したのかもしれません。この点に着目して、本調査の中で江戸川河川水の測定点を増やすことも考えていきたいと思います。  (谷村暢子)

 

(1)www.env.go.jp/jishin/monitoring/results_r-pw.html
(2)https://ramap.jmc.or.jp/map/