美浜事故調・保安院への要請書(PWR・BWR)

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美浜3号機事故調査委員会並びに原子力安全・保安院へ
沸騰水型原発(BWR)現地及び消費地の市民団体からの要請書

BWR現地及び消費地の十六団体
2004年9月23日

 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会美浜発電所3号機2次系配管破損事故調査委員会委員のみなさま並びに事務方の原子力安全・保安院のみなさまへ
 美浜原発3号機の事故に際しては、PWRのみならず、BWRにおいても配管の減肉管理のあり方が改めて問い直されています。
 東北電力への市民団体の質問により、女川原発2号機において1996年と98年に対策材における激しい減肉が見つかっていたことがはじめて公になったのは9月7日でした。減肉事例は、減肉の程度からいっても、「対策材」において発生したという事実からいっても、現在の減肉についての管理指針の妥当性に、正面から疑問を投げかけるものとなっています。またこの驚くべき事例が、1996年の当時はおろか、美浜原発3号機の事故後においても、貴院によって把握されることがなかったという点も問題ではないでしょうか。この点は、管理指針の分析にあたり、必要不可欠であるはずの減肉の実態の把握が全く不十分であることを端的に示すものとなっています。さらに、BWR各社の減肉についての管理指針の分析を課題に含めて検討しておられる貴委員会が、この減肉事例について全く議論しないままに、「中間とりまとめ」を行おうとしていることも、わたしたちには奇異に思えてなりません。
BWRの現地及び消費地より、BWR各社の減肉についての管理指針の分析にあたっては、減肉の実態をきちんと把握し、女川原発2号機の事例を含め、以下に挙げる点を十分に考慮されるよう要請します。貴院は中間とりまとめ案の提示に際して、「BWRについては…現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える」との文言を削除しましたが、今後とも、このような安易な結論を下すことの決してないよう、また、「…概ね適切である。しかしながら…」といった表現でお茶を濁すようなことのないよう、重ねてお願い致します。

要 請 事 項
1.東北電力女川原発2号機において、1996年と98年に発見されていた対策材における激しい減肉事例について、以下の点を含め徹底した調査、検討を行って下さい。

 ① 対策材において激しい減肉が発生した詳細な状況と原因
 ② 減肉の程度に照らして管理指針の妥当性
 ③ 対策材において発生したという事実に照らして管理指針の妥当性
 ④ 東北電力が第1回定期検査時に配管を交換せずに運転を継続した理由と妥当性
 ⑤ 1996年の当時に当該減肉事例が貴院や他電力に伝えられなかった理由
 ⑥ 美浜3号機の事故後にも貴院が当該減肉事例を把握することができなかった理由
 ⑦ 東北電力が保安院の報告徴収に対し上記事例を採用しなかった理由
 ⑧ 他電力も含め他号機の類似部位の状況
 ⑨ 他に激しい減肉事例や減肉による穴あき事例はないのか

2.上記減肉事例について、貴院が東北電力等から得た情報を速やかに開示して下さい。

3.減肉の実態の把握をきちんと行ってください。BWR各社の管理指針の分析に当たっては、減肉について各電力が任意に提出したデータではなく、減肉率の最も高い事例を各電力から徴収したデータを用いてください。

4.少なくとも上記の検討が終わらないうちは、BWR各社の管理指針の分析について安易に結論を下さないで下さい。BWRにおける減肉問題をPWRの付属的な位置付けにせず、独立した問題として正面から取り組んで下さい。

要 請 理 由
■1.について
女川原発2号機の減肉事例は、「原子力発電を考える石巻市民の会」と「みやぎ脱原発風の会」が今年8月18日に東北電力に提出したによる公開質問書に対する9月7日の回答及びその後の記者の取材によりはじめて明らかになった。
東北電力及び女川保安検査官事務所の話によると、1995年7月に運転を開始した女川原発2号機において、第1回定期検査時(96年8~12月)に、給水加熱器ベントオリフィス管のオリフィス下流部の計4箇所で減肉が見つかった。配管は低合金鋼であった。中には1年余りの間に3.4㎜も減肉した箇所があった。減肉の進行の異常な速さにも関らず、東北電力はそのまま運転を続け、第2回定期検査時(98年1~3月)にようやくステンレス鋼に交換した。この時の測定値を第1回定期検査と比較した場合も、減肉率は最大で年1㎜を超えていた。詳細は以下の通りである。

女川原発2号機で見つかっていた4箇所の減肉
配管 高圧第1給水加熱器ベント系配管 高圧第2給水加熱器ベント系配管
減肉箇所 A B A B
公称肉厚 6.6㎜ 6.6㎜ 7.1㎜ 7.1㎜
必要最小肉厚 0.34㎜ 0.34㎜ 0.79㎜ 0.79㎜
第1回定期検査時肉厚 4.6㎜ 3.2㎜ 6.2㎜ 5.2㎜
減肉率 2.1×10^-4㎜/h 3.6×10^-4㎜/h 0.9×10^-4㎜/h 2.0×10^-4㎜/h
余寿命 2.3年 0.9年 6.5年 2.5年
第2回定期検査時肉厚 4.5㎜ 3.0㎜ 5.9㎜ 4.2㎜
減肉率 0.1×10^-4㎜/h 0.2×10^-4㎜/h 0.3×10^-4㎜/h 1.0×10^-4㎜/h
余寿命 47年 15年 19年 3.9年
※ 減肉率の計算に用いた累積時間は東北電力の管理方法に基づき、営業運転開始後の日暦と時間稼動率から求めた。
■1.①について
 BWR各社はPWR管理指針に準じた管理方針を各社が独自に決めている。東北電力が保安院に提出した調査結果によると、東北電力においては低合金鋼も管理の対象に含めている。それでも「減肉が起こりにくい」という扱いで、サンプリングした上で最大10定検毎に測定すればよいことになっている。
東北電力はなぜ第1回定検にこの箇所を調べることができたのか?原子力発電情報公開ライブラリーの事故・故障データベースに、女川原発1号機における以下のような減肉事例がある。

女川発電所1号機 1989年5月22日
事象発生時の状況 第5回定期検査中、高圧第1給水加熱器Aのベントオリフィス管オリフィス下流部(公称肉厚6.0㎜)に減肉箇所(測定肉厚最小3.5㎜)が認められた。そのため,同一設計条件となっている高圧第1給水加熱器Bのベントオリフィス管オリフィス下流部の肉厚測定を追加実施したところ,同様に減肉箇所(測定肉厚最小3.5㎜)が認められた。
原因調査の概要 減肉の認められたベントオリフィス管を外して半割にし、外観調査を実施したところエロージョン・コロージョンによると見られる減肉が認められた。
事象の原因 高圧第1給水加熱器内の湿り蒸気が不凝縮性ガスとともにベントオリフィス管に至り、オリフィス前後の圧力差で高速の流体となりオリフィス下流部の管壁に衝突しエロージョン・コロージョンが発生し減肉したものと推定される。
再発防止対策 ・今定期検査における対策…高圧第1給水加熱器A、Bのベントオリフィス管を同一材質の新管に取替えた。・恒久対策…次回定期検査時に高圧第1給水加熱器A、Bのベントオリフィス管を耐食性のある低合金鋼の新管に取替る。

 高圧給水加熱器ベントオリフィス管オリフィス下流部といえば、女川原発2号機の事例と全く同じ箇所である。そのため東北電力に確認したところ、東北電力は、上記の女川原発1号機の事例があったために、女川原発2号機でも同一箇所を測定したと回答した。上記事例がなければ、2号機の当該箇所は、点検することなく運転を継続していたかもしれない。
 上記の類似事例は、女川原発2号機の事例の原因もエロージョン・コロージョンであることを示唆している。ところが市民が同席した議員レクの場で保安院は、2号機の事例がエロージョン・コロージョンではない可能性を示唆した。その根拠は何か?そこに女川の事例を美浜の件と切り離そうと言う意図はないのか?いずれにしろ原因の解明が必要である。

■1.②について
 減肉事例は、特に公称肉厚と第1回定期検査時の測定値から算出した減肉率が大きく、軒並み管理指針の初期設定の最大値を超えている。第2回定期検査時の測定値と第1回定期検査時の測定値から算出した減肉率についても、最大で1.0×10^-4㎜/hとなっており、管理指針の初期設定値の最大値に迫るものとなっている。

■1.③について
 これらの減肉が発生した箇所が「炭素鋼」ではなく、減肉が起こりにくい材料とされていた「低合金鋼」の配管である点も問題である。炭素鋼を低合金鋼にすることは、「恒久対策」とされていたもので、今でもそのような扱いになっている。管理指針は炭素鋼だけを対象にし、対策材である低合金鋼は指針の適用外になっている。この点からも、事例は管理指針の限界を示すものとなっている。

■1.④について
 女川原発2号機で見つかっていた4箇所の減肉のうち、第1回定期検査にもっとも減肉率が高いものについて、必要最小肉厚の0.34ミリに至る余寿命を計算すると0.9年となる。よって第1回定期検査の時点で、この配管は一年ともたず、次の定期検査までに必要肉厚を切ってしまう可能性が高いと判断されることになる。
ところが東北電力はこの配管を交換せずに運転を続け、第2回の定期検査でようやくステンレス鋼に交換している。すぐに同じ配管と交換した1号機の事例と同じ対応すらしていない。必要最小肉厚を切る可能性を承知のうえで次回まで交換をしなかったのであれば、その判断の妥当性が問題となる。

■1.⑤について
 「対策材における激しい減肉」という驚くべき事例にも関らず、当時保安院にも他電力にも知らされた形跡はない。保安院は「9月8日の報道ではじめて知った」と答えているし、東電も「知らなかった」と述べている。この点は、原子力発電情報公開ライブラリーに掲載され、電力間で情報が共有されている女川原発1号機の減肉事例とも大きく異なる。
 東北電力とメーカーは、「対策材」における減肉という、起こってはならない現象に頭をかかえ、国にも知らせず、秘密裏に、危険を承知の運転をした後に、ステンレス鋼への交換という「対策の対策」を進めていたのではないか。もしそうであれば、危険を承知でひび割れを放置しての運転を続け「予防保全」という名目でシュラウドや配管を交換していた東電不正事件と同じ構図ではないか。

■1.⑥について
美浜原発3号機の事故後1ヶ月近く経ち、事故調査委員会で議論が継続し、電力各社に対する調査が行われていながら、保安院がこの事例を把握することができず、市民団体の質問に対する回答が報道されてはじめて目にするというのは異常なことではないか。昨年10月の改正電気事業法の施行によっても、情報が共有化されない実態は一向に変わっていないのではないか。

■1.⑦について
保安院が美浜3号機事故後の8月11日に各電力に発した報告徴収に対し、各電力は減肉事例を添付した調査報告を提出したが、東北電力が女川原発2号機の減肉事例として添付したものは、問題となっている激しい減肉事例ではなかった。東北電力はなぜこの事例を採用しなかったのか。問題の事例を故意に避け、無難な事例を選択したのではないか。他電力も同様に無難な事例を選択していたことを示すものではないか。保安院の報告徴収のやり方に問題があったとしか考えられない。

■1.⑧について
同様な減肉による破損を防ぐためにも、直ちに類似部位の調査をすべてのBWRにおいて行うべきである。

■1.⑨について
女川原発では、2000年9月に、運転中の1号機の復水系の配管に減肉のために小さな穴が開き、冷却水が漏れる事態が発生している。減肉が激しく進んだ事例や穴が開くに至った事例は他にないのか。上記の穴あき事例は点検の対象外の部位であったが、BWRでは多くの箇所で行われている代表部位のみの点検というやり方で本当に安全管理ができるのか。実態を把握した上で検討すべきである。

■2.について
東北電力は、今月9日、定期検査中の女川原発3号機を、配管肉厚の追加測定は一切行なわないまま起動させた。2号機の異常な減肉が明るみに出る中、それについて地元市町や宮城県当局に報道内容を追認する程度の口頭説明しか行なわずに、である。
東北電力は保安院に提出する資料を作成中とのことだが、保安院は中間とりまとめ前に同電力に資料を提出させ、速やかにそれを開示すべきである。

■3.について
保安院は第3回事故調資料3-1-3において、「BWR配管に係る減肉」について、「BWR各プラント測定データの分析」を行い、「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものはないと考える。」と結論している。BWRについて保安院が分析して得た数値は、減肉率が0.01~0.40×10^-4㎜/hの範囲にあり、減肉率平均値を0.13×10^-4㎜/hとしている。この数値は管理指針の初期設定値を下回り、PWRについて保安院が算出した減肉率平均値0.26×10^-4㎜/hも下回っている。
 ところが、女川原発2号機の事例について算出される減肉率は、先に示したように保安院の分析とは全く異なる。それだけでなく、先の女川原発1号機の事例や原子力発電情報公開ライブラリーにある別の東電の減肉事例についても、減肉率を算出してみると保安院の分析した値とは異なる値となる。例えば、1987年に福島第一原発1号機で見つかった原子炉給水ポンプ流量計下流部減肉について、減肉率を計算すると0.58×10^-4㎜/hと値となる。保安院が分析に使ったデータは現実を反映しているとはいえない。
 なぜ保安院の分析が現実を反映していないのか?問題は保安院のデータの集め方にある。保安院が用いたデータは、美浜3号機を除き、8月11日付けで保安院が出した報告徴収に対し各電力が提出した調査報告に、各号機につき1例ずつ添付されていたものである。この報告徴収は、点検リスト漏れの有無を報告することが目的であり、減肉の実態を把握するものではなかった。市民が同席した議員レクの場で保安院は、点検例の添付の指示は口頭で行ったもので、「このときは、そのデータを使って減肉率の評価をしようなどというつもりはまったくなかった」、「たまたま出てきたデータが管理指針の範囲内におさまっていただけ」と説明している。
 どの事例にするのかは電力会社に任されていた。東電は「東電の自主的な判断で、手近にある最近の測定事例から選んだ。」と言っている。高い減肉率の例がないとの保証はなく、むしろ電力会社が、高い減肉率の例を避けて無難な例を出したとみるべきであろう。この点は、東北電力が女川原発2号機の問題の減肉事例を避けて、無難なデータを出したという一点により明白である。このようなやり方で集めたデータが、管理指針の範囲内に収まっているのははじめから決まっているようなものであり、出来レースと言われても仕方がない。
管理指針の分析にあたり必要不可欠な減肉の実態は全く不十分である。保安院及び事故調査委員会は、BWR各電力に対し、改めて最も高い減肉率の例を出させる報告徴収をかけた上で、集まったデータを女川原発2号機の減肉事例を含めた検討を行うべきである。そうでないと管理指針の妥当性など確認できない。

■4.について
 第3回事故調資料3-1-3の「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える。」との文言については、第4回の「中間とりまとめに記載する事項について」では、ほぼそのままであったが、9月17日の第5回で提示された中間とりまとめ案では、「…調査した結果、BWRの減肉率はPWRを下回っている。」と保安院の分析結果を述べるにとどまり、「現在の管理手法で問題となるものではない」との文言が削除された。この文言は削除されてしかるべきであるが、削除されたのは、女川原発2号機の事実によるものとしか考えられない。
 一方で、中間とりまとめ案はおろか、事故調査委員会のどの資料をめくっても女川2号機の減肉事例は出てこない。事故調査委員会で女川の事例が議論されることはなかった。
 事故調査委員会が、BWR各社の減肉についての管理指針の妥当性を検討課題に含めている以上は、女川原発2号機の事例について詳細に検討するのは当然であり、これの検討もない状況では、中間とりまとめを行う意味はないと考える。
 今後も、「現在の管理手法で問題となるものではない」といった安易な結論を下すべきではないし、「同指針は概ね管理手法として適切であると考えられる。しかしながら…」といった表現でお茶を濁すようなことも許されない。減肉の実態をきちんと把握した上で、これと正面から向き合うべきである。
 また、女川原発2号機の事例に鑑み、BWRにおける減肉問題をPWRの付属的な位置付けにするのではなく、独立の問題として扱うべきである。
以上
宮城県 原子力発電を考える石巻市民の会
みやぎ脱原発風の会
福島県 脱原発福島ネットワーク
新潟県 柏崎原発反対地元三団体
みどりと反プルサーマル新潟県連絡会
プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク
静岡県 浜岡原発を考える静岡ネットワーク
茨城県 脱原発とうかい塾
島根県 島根原発増設反対運動
石川県 能登原発差止訴訟原告団
愛知県 核のゴミ・キャンペーン・中部
首都圏 原子力資料情報室
ストップ・ザ・もんじゅ東京
東京電力と共に脱原発をめざす会
核燃とめておいしいごはん
福島老朽原発を考える会
<連絡先>       〒164-0003 東京都中野区東中野1-58-15-3F
TEL03-5330-9520 FAX03-5330-9530
原子力資料情報室/伴 英幸

〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀嶺会館405号AIR気付
TEL03-5225-7213 FAX03-5225-7214
福島老朽原発を考える会/阪上 武

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2次系配管「管理指針」の評価に関しては、
配管の減肉率が最大となるデータを用いて評価し直すことを求める
要    請    書

美浜発電所3号機二次系配管破損事故調査委員会 御中
経済産業省 原子力安全・保安院 御中 

2004年9月23日

 第5回美浜発電所3号機二次系配管破損事故調査委員会に原子力安全・保安院から提出された美浜3号機事故に関する「中間とりまとめ(案)」(資料5-1-5)においては、「PWR管理指針」の評価が行われています。そこでは、「実績減肉率は、『PWR管理指針』に規定されている初期設定減肉率を一部を除き下回っており、同指針に規定された初期設定減肉率は概ね妥当なものと評価される」と記述されています(9頁)。これが、「中間とりまとめ(案)」のPWR管理指針に関する基本的な評価であると伺えます。
その判断の根拠となっている実績減肉率のデータとは、保安院が8月11日付け報告徴収によって電気事業者から集めたPWRについては21箇所及び美浜3号機の38箇所の減肉率データとなっています(9頁脚注10)。
 これらの減肉率が管理指針の初期設定減肉率の範囲内にほぼ収まっているというだけで、どうして「初期設定減肉率は概ね妥当なものと評価される」という一般的な結論が出せるのでしょうか。電気事業者が提出した減肉率のデータは、1号機1部位というだけでなく、どの部位を選ぶかは電気事業者の裁量に完全に委ねられたのです。このことについて、9月13日に福島みずほ議員と市民が行った保安院交渉の場で、保安院・検査課の荒川統括安全審査官は、各号機につき1例のデータを出すよう口頭で要請し、「このときは、そのデータを使って減肉率の評価をしようなどというつもりはまったくなかった」と何の躊躇もなく述べられました。
提出されたデータの減肉率がその号機で最大の減肉率になっているという保証は何もありません。むしろ、例えば女川2号の例が示すように、電気事業者としては、極端なデータを出すのを避けたと考えるのが自然です。そうすると、提出された減肉率が管理指針の初期設定減肉率の範囲内に収まるのはきわめて当然のことだと言えるわけです。
 また、「一部を除き下回っており」という表現からして、本来安全余裕をもってすべてを包絡するはずの管理指針の範囲をすでに超えている例があることを保安院自身が認めています。すなわち、これまでの予想を上回るスピードで減肉が進んだ例がすでに存在しているということです。それにも係わらず、「概ね妥当」との一般的な結論がどうして出せるのでしょうか。
今後、「中立的な機関により、透明性のあるプロセスで検討し、公開される新しい民間指針をとりまとめる」方向が示されていますが、この方向は「同指針は概ね管理手法として適切である」との判断を前提としています(11頁)。今後さらに検討をするとしても、保安院の報告収集で収集されたデータは前述のものしかないわけです。
真に、現在の管理指針が妥当かどうかを判断するためには、減肉率が各号機で最大となっている部位のデータを集める必要があるのは明らかなことです。そのために、ぜひもう一度保安院から報告徴収をだしていただくよう要請します。
 
要   請   事   項

各号機ごとに2次系配管の減肉率が最大となっている部位のデータを電気事業者から収集し、それを用いて「PWR管理指針」を見直してください。

2004年9月23日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
 京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
 大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581