原子力小委員会参加記⑮福島は忘れて、原発積極活用に向けた課題検討

『原子力資料情報室通信』第614号(2025/8/1)より

 6月25日、45回原子力小委員会が開催された。テーマは「第7次エネルギー基本計画を踏まえた原子力政策の具体化に向けて」だった。

 事務局から論点案として、図が示された。目玉は核燃料サイクルで、六ヶ所再処理工場及びMOX燃料工場の竣工に向けた取組と安全・安定的な長期利用に向けて取り組むべき事項を検討する新たなワーキンググループの設置が報告された。また投資環境やファイナンスは、他電源と合わせて「次世代電力・ガス事業構築小委」で議論するとも報告があった。

 私は以下の通り発言した。

 先行的に具体化を進めるべき領域として東京電力福島第一原発事故の処理について含まれていないことは極めて不満だ。福島第一原発の廃炉はスケジュール上、2051年までに完了するとし、政府は何度も地元に約束している一方、783万トンと推計される低レベル放射性廃棄物は何ら手当されていない。大型原発1基の廃炉で発生する低レベル放射性廃棄物発生量は1万トン程度、国内の商用原発は60基しかないので、多くても60万トンも発生しないと考えていた低レベル放射性廃棄物が783万トンも発生するということだ。標準の処分費用で考えるとこの23兆円と推計できる。現在、8兆円とされる福島第一原発の廃炉費用はデブリ取り出しまでで設備の解体費も廃棄物処分費も含んでいない。福島第一原発事故の処理は、原子力政策の重要課題であるはずだ。

 六ヶ所再処理工場は1993年着工後、1997年に竣工する予定が、30年を経てなお運転開始に至ることができない、明らかな失敗プロジェクトだ。核燃料サイクルの実効性向上に向けたWGを設置する意味が見えない。かつて似たような議論は何度も繰り返されてきた。同じようなアジェンダを示して、類似の専門性を持つ専門家が議論しても、科学的な知見は変わらず、同じような結論しか出てこないことは始める前からわかる。本気で実効性を向上したいというのであれば、エネルギー基本計画にとらわれることなく、多様な観点から、議論するべきだ。

 投資環境・ファイナンスについては別の委員会で実施すると伺った。だが原子力は、これまで多くの国費を投じて支援してきたという点で、他の電源とは異なる。もし投資環境を整えるというのであれば、まずは前提を共通にする必要がある。たとえば原発に大きく傾斜配分されている電源三法交付金などの抜本的な見直しが必要。また、他の委員会で議論することで、政策の見通しが悪くなることも懸念される。原子力小委でもファイナンス問題は議論するべきだ。

 欠席した委員の意見書はその場で読み上げず、議事録とともに公開という運用になったと説明いただいた。事前に時間をかけて委員は意見書を作成しているのだから、読み上げは必須だ。

 事務局からは、1は別委員会で議論している(やっていないから発言している)、2について、長期安定稼働関連は初めて議論、4は黒崎委員長と相談して決めたことだ、との回答だった。なお、2については事務局から、個人的には説得力があるとも思えない、かなり長い返答があった。

・不断の安全性追求
・立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション
・バックエンドプロセスの加速化
 -核燃料サイクル
 -円滑かつ着実な廃炉
 -高レベル放射性廃棄物の最終処分(→特定放射性廃棄物小委)
・既設炉の最大限活用
・次世代革新炉の開発・設置
・事業環境整備、サプライチェーン・人材の維持・強化
 -投資環境・ファイナンス(→次世代電力・ガス事業基盤構築小委)
 -サプライチェーン
・人材
・国際的な共通課題
 →具体化に向けた検討を進め、その結果を踏まえて「今後の原子力政策の方向性と行動指針」(23年4月28日原子力関係閣僚会議決定)の改定と施策の実行に繋げる。

(松久保 肇)

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